過去1年の求人掲載件数ランキングから見える、企業の動き

総合過去1年の求人掲載件数ランキングから見える、企業の動き

今回の記事は、公認会計士 眞山 徳人氏により寄稿いただきました。
眞山氏は公認会計士として各種コンサルティング業務を行う傍ら、書籍やコラム等を通じ、会計やビジネスの世界を分かりやすく紐解いて解説することを信条とした活動をされています。 眞山氏の著書、「江戸商人・勘助と学ぶ 一番やさしい儲けと会計の基本」では、難解な会計の世界を分かりやすく解説しています。

世の中の企業は、例外なく「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を組み合わせて、マーケットとかかわっています。

企業の外からはそれらを詳しく把握することはなかなかできません(実は企業の内側にいても案外難しい・・・)が、それでも、企業が発表する決算やニュースリリースなどを見ると、その企業が「ヒト・モノ・カネ・情報」をどのように扱っているか、垣間見える瞬間はあるものです。

今回は「ヒト」という切り口で、ゴーリストの3Chartを利用して、企業ごとの求人掲載件数を比較してみました。

2016年上半期の求人掲載件数ベスト50はこちら

まずは単純に、直近の求人掲載件数の多い企業をランキングにしてみました。

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今回皆さんと考えてみたいのは、「求人掲載件数が多い会社」にどのような特徴があるのか?ということです。
いったい求人掲載件数が多い会社には、どんな共通項があるのでしょうか?

「スポット」なのか「トレンド」なのか

「例えば、これがJ-POPのヒットチャートだとした場合、ベスト50には、

  • サザン、ミスチルなど、以前から不動の地位を築いている人たちの歌
  • セカオワ、きゃりーぱみゅぱみゅなど、トレンドを反映した人たちの歌
  • AKB48など、音楽性よりもアイドル性で売れている人たちの歌

といった面々の中に、 (名前は挙げませんが)今だけちょっと売れている一発屋の歌が混ざってくることと思います。

企業の求人動向を見極めるときも、似たような嗅覚を働かせることが必要です。つまり、先ほど挙げた直近の求人数ランキングにも、常に求人数の多い大御所的な会社の中に、最近になってキャンペーン的に求人が増加している会社も含まれているということになります。

一般的に、企業がたくさん人を採ろうとするのは、以下のようなときです。

  • 業容拡大のため、人員を増やしたい
  • 人が減ってしまうため、それを補いたい

前者の場合は、常時求人がたくさん出ているわけではなく、新しい工場や支社を立ち上げたり、新規事業が始まったりしたタイミングでスポット的に求人が増加することが多いです。

いっぽう、後者の場合は、ある程度コンスタントに求人が出され続け、常にランキング上位に入るようなトレンドを見せることが多いです。

今回は、求人数が多い会社の特徴を見極めることがテーマとなっているため、スポットで求人が増加している企業ではなく、「トレンド(ある程度長期的な傾向)」として、求人数が多い会社をピックアップしてみたいと思います。

トップ10常連組に共通する特徴は?

先ほど挙げた50社から「トップ10常連組」をピックアップしてみました。具体的には、過去12か月の求人数ランキングのうち、8回以上10位以内に入った会社を「トップ10常連組」とみなしています。

先ほどのヒットチャートの例えをそのまま引き継げば、まさに人気歌手たちのオンパレード、というところでしょうか。

条件に該当するのは、以下の会社です。

  • トップ10入り12回・・・三菱電機、住友不動産、アクセンチュア
  • トップ10入り11回・・・テクノプロ、矢崎総業
  • トップ10入り9回・・・ソニー、マツダ
  • トップ10入り8回・・・大東建託

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これらの企業に特徴しているのは、①に加えて②のどれかにあてはまります。

特徴①:事業規模が非常に大きい

これは、ある意味当たり前のことかもしれません。ある程度の規模の企業でなければ、そもそも100名規模の求人を常時出し続けることは不可能です。

参考までに、三菱電機の売上高は4.4兆円、ソニーは8.1兆円、住友不動産は8,500億円、大東建託は1.4兆円(いずれも連結ベース、平成27年度)、外資系のアクセンチュアはドル建てになってしまいますが310億USドル・・・いずれも文句なしの超大企業です。

しかし、事業規模が大きいからと言って、求人が多いとは限りません。例えばトヨタ自動車は売上高28兆円を誇りますが、求人数トップ50にも入っていません。

実は求人数が多い会社には、別の特徴があるのです。事業規模の大きさのほか、トップ10常連組には、大きく分けて3種類の特徴のいずれかを有していると考えられます。

特徴②-1:事業そのものが「ヒト」を扱っている

テクノプロは、技術系のスペシャリストを派遣する人材サービス業です。優秀な人を常に抱え込んでおくために、常に求人数が一定以上存在している、というわけです。

トップ10常連組以外にも、人材関連業界の企業の名前が、求人数ランキングにちらほらと現れています。

特徴②-2:成長事業を持っている

事業規模の大きさに加えて、成長事業を抱えている企業は、求人数が長期間にわたって多くなる傾向にあります。

例えば、三菱電機では「電力システム」「交通システム」といった事業に成長性を見出していて、求人も比較的これらの分野に特化したものが多い印象があります。

また、マツダはデザイン性の高い車両が人気で少しずつ国内シェアを高めている一方、海外にも未開拓エリアが多く、2012年から2016年の間に売上が1.5倍超に拡大しています。

業績全体が上り調子である企業は、そのビジネスの担い手として、たくさんの優秀な人材を得るために求人に力を入れるのが自然な流れです。

トップ10にはほかにもソニーなどの有名なメーカーが名を連ねていますし、上述のベスト50にも製造業が非常に多くランクインしています。新しい事業を展開していくにあたり、様々なスキルや強みを持った人材を精力的に求めていることがうかがえます。

特徴②-3:離職率が比較的高い

求人数が多い会社の中には、離職率が高い会社があります。その最たる例が不動産業界の「大東建託」と、コンサルティング業界の「アクセンチュア」です。

不動産業界は業界全体として離職率が高い傾向にありますが、その中でも大東建託は、成果主義を大胆に取り入れた人事制度を有しており、人材の流動性が非常に高いことで知られています。また、アクセンチュアに代表されるコンサルティング業界も、離職率は非常に高いです。

不動産の営業マンやコンサルタントはキャリアパス構築の一環として積極的に転職をする傾向があります。これらの業種は退職して次のステップに進む人が多い分だけ、それを補うために常に求人を出し続ける必要がある業種、と言えます。