「女性活用とか一度も言ったことはない」 サイボウズ 野水氏が語る「女性活躍」

女性雇用「女性活用とか一度も言ったことはない」 サイボウズ 野水氏が語る「女性活躍」

「女性の働き方」を論ずるとき、2つの言葉が使われる。1つは「女性活躍」。もう1つが「女性活用」。「活用」という言葉には「活用する」男性、「活用される」女性が隠れた前提とされているようにも見える。こうなると、「女性の働き方」は女性が解決する課題なのか、男性が管理する問題なのか、誰の課題で、誰が動く必要があるのか判然としない。そもそも、労働に関し「女性」「男性」という線引きは適切なのだろうか。サイボウズ 社長室 フェロー 野水 克也氏は、「男女を区別してはいけない」「男性の働き方を変えなければいけない」と語る。

photo「女性活用とか一度も言ったことはない」というサイボウズ

「女性活躍」は男性の課題

photoサイボウズ
社長室 フェロー
野水 克也氏

14日に行われたHR EXPOに登壇したダイバーシティー推進で知られるサイボウズ 社長室 フェロー 野水 克也氏は、「女性の働き方」に関し、「女性・男性と区別することはそもそも差別」とし、サイボウズ流の「チームワーク」「働き方」そして「女性活躍」を下記のように語った。

「日本人は『チームワーク』というと、高校野球のような一致団結して前に進むような『チームワーク』を刷り込まれ、連想しがちですが、サイボウズは違います。『100人いれば100通りの働き方がある』という考え方です。100人の100通りの個性、100通りの働き方、100通りの目指すスキルセットがあります。同じ働き方をしたいと思う人は1人としていないでしょう。そんな1人1人の違い全てを認め、総合的に力を発揮できる環境を整えるには、どういうツールがいいのか。それを考えて、クラウドツール、グループウェアを作っています」(野水氏)

野水氏は、「ワークスタイル、女性活躍の問題を解決するには、男性の労働時間を減らすことが早道」だという。「女性活躍」という話だけしていると、女性の労働時間が伸びていくが、その裏側には「男性の労働時間を変えない」という矛盾した前提条件があるという。

「ワークライフバランスを考えるとき、『女性が何をする』という話になりがちですが、本当に必要なのは『男性が何をする』という議論なのです」(野水氏)

photo

(クリックで拡大)

OECD加盟国中34カ国中22位の日本の生産性

日本の労働生産性は非常に低い。OECD加盟国中34カ国中22位だ。この労働生産性を引き下げているのが「残業時間」だ。日本の残業時間は突出して高い。

photo

(クリックで拡大)

長い残業時間、高い自殺率、目立つ50代男性の自殺

しかし、それで幸せになれているのかというとそうでもないという。日本は先進国の中でロシアに次ぐ男性の自殺率を記録している。野水氏は、日本の自殺の特徴として、50歳前後の自殺者が目立つ点を挙げた。

「こうして見ると、男性も苦しい訳です。女性も男性も苦しんでいます。では、なぜ苦しいのか。高度経済成長期の働き方を引きずっているからです」(野水氏)

野水氏によると、高度経済成長期の働き方は下記の通り。
1. 同じスキルセットの若者を大量に集める
2. 同じ教育を施す
3. 同じゴールを見せて競わせる
4. 終身雇用、年功序列で企業が社員を保護する

photo

(クリックで拡大)

1975年の人口ピラミッド(左)と2025年の人口ピラミッド(右)

しかし、終身雇用、年功序列、長時間労働はもう通用しない。なぜか。野水氏曰く、人口ピラミッドが変化したからだ。高度経済成長期は、年齢が上がればその年齢の人口が少なくなったので、終身雇用と年功序列で社内の人材を配置して問題がなかった。しかし、現在の人口ピラミッドでは、世代が上がっても人数が減る訳ではない。つまり、終身雇用と年功序列が通用しなくなったのだ。

「今から9年後の2025年には、50代の人間の人数に対し、20代の人間の人数はその半分。そこで出世へのモチベーションは上がるのか。上がりません。そうなってくると、企業は『報酬』『働く意味』を考え、社員との関係性を見直さないといけないのです」(野水氏)

一斉に同じことをやらない

photo

(クリックで拡大)

男性雇用者と無業の妻いから成る世帯(赤)
雇用者の共働き世帯(青)

野水氏は、日本で「共働き家庭」が「共働きではない家庭」の倍以上に上ることを挙げ、「日本ではもう共働きがあたりまえの前提条件になっている」と指摘した。そして、「共働き」を前提とした企業の制度設計がなければ、企業も社員も苦しい思いをすることになる、という。

今、日本では、みんながみんな同じような時間に起きて、子供の世話をして、同じような時間に仕事をして、同じような時間に帰るような生活をしているという。そして、これこが非効率の原因だという。

「一斉に同じことをやるのがいけないのです。昔はITもなく、マネジメントも難しかったです。その条件下では、同じ時間に集まって、一緒に働くことでしかチームワークは構築できませんでした。また、昔のそういった働き方は、女性は家庭、男性は仕事という役割分担があった上で機能していました。でも今は違います。男性も女性も働きます。男性も女性も同じ時間に出勤して働いて、子供の送り迎えをして……無理でしょうし、いろんなひずみが各所に出ます」(野水氏)

「女性活躍」は「同化政策」?

野水氏は、ワークスタイルをめぐる言葉の使い方にも言及した。

「『女性活用』って言葉、ひどい言い方ですよね。男性の方はふつうにこの言葉を使っています。でも、たとえば『中年活用』って言われたらどう思います? 嫌な感じがしますよね」(野水氏)

また、同氏は「女性活躍」という概念自体にも疑問を呈した。

「今の状態で男性の働き方を変えないで、女性に『もっと働いてください』と言うことは、ワークライフバランスなんて関係なく、ただの『同化政策』なんです」(野水氏)

野水氏によると、こういった男性の働き方を変えないままでの「女性活躍」は、今までバリバリ働いて家事もこなして道を切り拓いて来た「スーパーウーマン」の量産でしかない。

「要するに、男女を区別してはいけない。男性の働き方を変えなければいけないということです。そうしないと幸せになれません」(野水氏)

出産・育児は「障害」ですか?

サイボウズの育児休暇制度では、子供1人につき6年まで休暇を申請できる。しかし、社員はほとんど1年で復帰するという。そうしないと、子供を保育園に入れられないからだ。

今の日本では、女性が出産や結婚を機に離職すると、二度と離職前の給与水準に戻れないという。一度離職すると、パートタイムやアルバイトという形で職に就くことになり、現実的には、離職前と同等の給与が望めないのだ。

ここで、野水氏は「復活できる社会」をつくることの重要性も強調した。

「職場を離れたらその人のスキルが落ちるのか? そんなことはありません。いろんな経験をしてスキル上がっている可能性もあります。でもそれに見合った給料がもらえていないのです。男性も同じです。1つの会社働いているうちに、会社が変わっていき、会社と自分のスキルセットが合わなくなることがあります。しかし、長時間労働のために勉強する時間がなくなり、勉強が足りないから子会社などに送られて給料が減ってしまいます。そして先ほど挙げた自殺率の話につながることもあるわけです。だから、『復活できる社会』のほうが絶対に良いわけです」(野水氏)

また、野水氏は、多くの企業経営者に会い、「人材がいない」と嘆くのを目の当たりにする一方で、女性活躍関連のカンファレンスでは、「職がない」と困っている求職者を数多く見てきた。野水氏は、「日本はどれだけもったいないことをしているんですか」と言いながら、一度離職した人たちを男女関わりなく活かしていくことの有用性を訴えた。

では、そういった考え方の下、サイボウズでは社員のキャリアパスをどう想定しているのか。同氏は、「出産そのものを除けば、育児も家事も仕事も男性女性どっちがやってもいい」としたうえで、「育児、出産、育児、再学習、介護は『今までの働き方』ではキャリア上の『障害』ととらえられてきました。しかし、これらの人生での『経験』は仕事に活かせる『経験』ととらえることもできます。これからの『日本のいい会社』は、こういった経験から復活してさらにキャリアを伸ばせる会社ではないかと思います」と語った。