エンジニアになる若者が増えている–そのワケとは

総合エンジニアになる若者が増えている–そのワケとは

3K(キツイ・厳しい・帰れない)とも言われるエンジニアに対するイメージが、昨今、若者の中で大きく変わってきているという。背景には一体何があるのか。

レバテックキャリアでエンジニアの転職支援を行っているコンサルタントの山田諒氏と、それぞれ異なる経緯でエンジニアとなった3人の若者に話を聞きながら、今エンジニアになる若者が増えている理由を探った。

エンジニアは「次の時代を作る人」–コンサルタント山田諒氏


レバテックキャリアのコンサルタントとして
年間300人のエンジニアと接する山田諒氏

私は主に25歳~30代後半の転職希望者の方を支援しています。ここ2~3年で、20代のエンジニアが増えていることを実感しています。

昔は“手に職がある”というメリットを感じてエンジニアになる人が多かったですが、今の若者は新しいサービスや文化を自分の手で作れるというスケールの大きさや将来性に魅力を感じている人が多いです。服装も、清潔感があってオシャレな人が多くなりましたね。

プログラミングの機会や学習環境が充実

今は小学生のころからパソコンを触るのが当たり前の時代です。授業でプログラミングをした経験のある人がいたり、各地でプログラミングの無料勉強会も開かれていたりなど、プログラミングがとても身近になったのだと思います。

新卒エンジニアの半分くらいは、学生の頃から何かしらのプログラミングを経験しているのではないでしょうか。スマートフォンの普及も、エンジニアという仕事が身近になった一因としてあげられるでしょうね。

20代の若手エンジニアの方たちはみなさん非常に勉強熱心で、意識が高いですよ。海外を見据えている人もいるし、新しい技術を習得したいという学習意欲も、とても強い。同世代に刺激的な人がたくさんいるので、切磋琢磨できる環境が整っている点が大きいです。

企業側からの、熱意ある若手エンジニアへの注目度高まる

一方、企業からの若手エンジニアに対するニーズも、非常に高いです。上流工程や保守運用しかやっていないのではなく、実装フェーズに携わってきたかというところを重要視されますね。

ただ未経験でも、思いと行動が伴っていれば受け入れてくれる企業はありますよ。例えば、行きたい企業の求人情報を見て、どんな言語を使っているのかを調べるのも1つの手です。そこから実際に、その言語を使って独学でも何かを作ってみるとか、関連する技術カンファレンスや外部イベントに積極的に参加してみるとか。

エンジニアになりたいと思ったときに、自分でできることは色々とありますから。その一歩を踏み出せているかどうかで、本気度を見られていると思います。

エンジニアは“次の時代を作る人”。ITが時代を変えてきたように、これからも、より世界を豊かで快適なものにするサービスを作っていくのは、エンジニアの方々です。

今の20代は、子供の頃からITに囲まれており、あえて意識するまでもなく、気がつけばプログラミングがすぐそこにある環境が整っていた。山田氏は「20代のエンジニアは、自分が作ったサービスで世界を変えたいという夢を抱いている」とも語り、エンジニアという仕事が憧れの職業になりつつあることを示唆した。

では、実際に20代でエンジニア職に就いた人たちの話を聞いてみよう。

学生時代にプログラミング経験あり–新卒エンジニア D・I(エンジニア1年目)さんの場合


小さいころからPCが好きで、エンジニアは天職だと語るD・Iさん

新卒で入社する前は、慶應義塾大学の理工学研究科で総合デザイン工学を専攻していました。子供の頃から、父が仕事で使っていた古いパソコンをもらって遊んではいましたが、実際にプログラミングを始めたのは、大学4年生の頃です。もともとパソコンの中身やウェブの仕組みに興味があって、本やインターネットで調べながら、自分でサーバを立ててみたところが始まりです。

とにかく“エンジニアリングが好き”という気持ちが、すべての土台になっていて。在学中からエンジニアになろうと決めていました。シリコンバレーへの憧れもあったので、IT業界に対して、かっこいいというイメージを持っていたんです。

院生の頃には、インターンでエンジニアとして働く経験をして、エンジニアという仕事が自分に合っていると感じました。就活セミナーでエンジニアに対する高いニーズも実感できていたので、自分が好きなことで社会に求められるという点から、エンジニアの道を進むことに、迷いはありませんでした。

ただ、あえてエンジニアが主役になるモノづくりの会社は、選びませんでした。将来、もし独立して何か自分でサービスを作りたいと思うようになったときのために、ビジネス的なスキルも身につけておきたかったんです。

エンジニアリングは人間の考える力を形にするもの

エンジニアの仕事は、“人間の知性を最も具現化できるもの”だと思っています。自分が考えたことを表現して、世界中に影響を与えられる仕事ですからね。

私が学部生の頃には、エンジニアとして就職する人はほとんどいませんでしたが、ここ1~2年で増えたなという印象があります。情報化社会になって、あらゆる場面でITが欠かせなくなっているので、今後エンジニアを志望する人は、さらに増えてくるのではないでしょうか。

学生時代にプログラミング経験なし–新卒エンジニア M・Yさん(エンジニア8年目)の場合


業界を知るごとにエンジニアへのイメージが変わっていったというM・Yさん

大学では理学部で物理学を専攻していました。エンジニアになろうとは、一切考えていませんでしたね。当時はエンジニアに対して、オタクの人が黙々と作業しているというネガティブなイメージを持っていましたから。周りにもエンジニアは、一人もいませんでした。

しかし就活で色々な業界を見ていく中で、“最初から最後まで関わることができて、結果が見えるところ”や、“古い慣習に縛られずに挑戦できるところ”に魅力を感じ、IT業界でエンジニアになる選択をしました。

プログラミング未経験で新卒として入社したので、最初の3カ月はずっと研修を受けていました。研修センターは北京にあり、そこで授業を受けながら、現地のIT企業で中国人と一緒に勉強したり、モノづくりをしたりしていました。そのときの経験から、海外志向が高くなりました。日本にとどまる理由は、何もないなと感じたんです。北京から日本に戻って3~4年働いたあと、ベトナムの海外支社の立ち上げメンバーとして、赴任しました。

エンジニアは魔法使いになろうとしている人

やっぱり技術の面では、子供の頃からプログラミングをやっている人には、どうしてもかないません。Androidが日本で発売されたときに、開発コミュニティに入ったのですが、圧倒的なレベルの差を感じました。

そこから僕は、企画や別のところで勝負しようという考えに変わったんです。僕にとってプログラミングは、あくまでもツールの1つに過ぎない。モノづくりにコミットしていきたいので、いずれは独立するのも面白いかなと思っています。

エンジニアの仕事には、世界で一番のモノを作れる可能性が、常にあります。自分の手を通じて、何十万人という多くの人にリーチできるところに、やりがいを感じています。エンジニアは、“出来損ないの魔法使い”っていうのかな。魔法使いになろうとがんばっている人じゃないでしょうか。

学生時代にプログラミング経験なし–中途エンジニア T・Hさん(エンジニア7年目)の場合


理系科目が苦手で、エンジニアになる前は営業職に従事してたというT・Hさん

大学では民俗学を専攻していて、プログラミングとは無縁の世界にいました。それどころか、数学と理系が大嫌いな、典型的な文系だったんです。父がシステムインテグレーターでエンジニアをやっていましたが、特に仕事の話を聞いたこともなく。とりあえず忙しそうな仕事だなというイメージしかありませんでした。

最初に就職したときには、新聞の求人広告の営業をやっていたのですが、どうしても耐えられない部分があり、1年3カ月くらいで辞めることにしました。とはいえ、営業以外に何をやりたいのか思いつかなくて…。そのとき初めて、父の仕事であるプログラミングをやってみようと思い立ち、Javaの本を1冊買ってきたんです。それをやってみて、できそうかどうか判断しようと。

いざ、プログラミングをやってみたら、これならできるかなと手応えを感じて。エンジニア職で転職先を探して、システムインテグレーターに就職しました。スタートが遅かったので、遅れを取り戻せるのか不安はありましたが、SI系のシステム会社やソフトウェアハウスのなかには、中途や第二新卒の未経験者でも、1カ月くらい研修してくれるところがたくさんあったので、ありがたかったですね。

文系エンジニアなので技術ではなく“判断力” で勝負

それからシステムインテグレーターで5年ほどエンジニアとして働きました。しかし、仕様書の作成や要件定義にかなりの時間をかけるので、実際に手を動かして開発する時間が極端に短いことが気になってきました。新しい技術を使えばもっと効率的にユーザビリティの高いモノづくりができるのにというジレンマもあり、ウェブ業界に移ることを決め、ウェブメディアの企業に入社しました。

歳を重ねてもとがったエンジニアとしてスペシャリストになれる人は、全体の2割くらいじゃないですかね。僕は完全にゼネラリストタイプなので、今はマネジメントがメインになっています。やはり後発組の文系エンジニアが、経験のある理系エンジニアに、技術力で勝つのは難しい。その分、幅広い知識から今求められている最適解を導き出せる“判断力”が武器になると思っています。

自分の頭で考えて決断していくのも、プロジェクトに与える影響が大きくて楽しいですよ。20代後半くらいが、どちらの道に進むか決められる最後のタイミングじゃないかなと思います。

まとめ

「自分の作ったモノを、世界中の人に使ってもらえるかもしれない」。それが手の届かない夢物語ではなく、少し手を伸ばせば届くかもしれない“リアルな夢”となった今、エンジニアになる若者が増えているのは、必然なのだろう。

文字を読み書きするのと同じレベルで、プログラミングが当たり前のスキルになる時代も、そう遠くはないのかもしれない。