総合「インターンシップ」の現状と課題 【前編】 “質”の高いインターンシップとは何か?“採用”とどう連動するのか?
新卒採用が激化していく中、政府や経団連からの要望などもあり、「インターンシップ」を取り巻く環境が熱気を帯びている。現実問題として、各企業がインターンシップに期待する効果はさまざまだが、ただ漫然と実施しても効果は上がらず、肝心の学生の集客さえおぼつかなくなる。採用母集団形成、自社PR、学生の職業意識向上、人材育成など、重視する目的によりコンテンツの内容や実施方法を工夫することと同時に、いかに参加学生のニーズを見極め、魅力付けを図るかがインターンシップの成否を左右することになる。
今回は、インターンシップの現状と課題と整理すると共に、質の高いインターンシップ、特に近年話題となっている採用連動型のインターンシップをどのように実現するかを考えてみたい。
インターンシップの現状
◆インターンシップとは?
そもそもインターンシップは、いつ頃始まったのだろうか? 一般的には、1906年にアメリカのシンシナティ大学が実施した「Cooperative Education」に起源があると言われている。その後、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学などの名門校で同様のインターンシップが行われるようになっていった。本格的に広がったのは第二次世界大戦後であり、現在では世界40ヵ国以上でインターンシップが実施されている。
一方、日本ではどうだろうか? 1990年代前半、バブル経済が崩壊し経済が停滞していく中、企業の新卒大量一括採用時代は終わりを告げ、厳選採用を行う企業が否応なく増えていった。また、グローバル化・IT化の幕開けとともに、求められる人材も変化した。このような新卒採用のあり方の変化に応じる形で1997年、当時の文部省・通産省・労働省の三省が「インターンシップの推進に当たっての基本的な考え方」を発表したことにより、日本企業の中でインターンシップが徐々に普及していくことになった。
日本ではインターンシップを「学生が一定期間、企業の中で研修生として働き、自分の将来に関連のある就業体験を行える制度」として理解されている。アメリカで使用される「Internship:企業が主催し、学生を募集し、採用につなげるもの」と、「Co-op program:大学と企業が提携し、大学教育の一環として行うもの」の両方の意味で用いられ、二つの意味が混在して使用されることが、インターンシップのあり方を複雑化している。
◆インターンシップの導入状況、実施理由
近年のインターンシップの導入状況を見ると(「新卒採用担当者調査」レジェンダ・コーポレーション)、2014年では導入している企業が43.8%だったが、2015年には52.8%と半数を超えている。その他のインターンシップ関連の調査を見ても、概ね半数前後の企業が現在、インターンシップを導入しているようだ。 また、2016年卒に関しては、採用活動の後ろ倒しの影響もあって、2月と8月の二つの「山」があることが特徴となっている。
また、前述の調査から、インターンシップを実施する理由を見てみると、上位には「自社や業界に対する理解の促進」33.6%、「早期母集団の形成」31.8%といった事項が挙げられており、以下、「大学との関係強化」17.3%、「社会貢献・地域貢献」13.6%、「社内の活性化」2.7%、「学生の発想の吸収」1.8%となっている。なお、上位の2項目については、2001人以上の大企業では65.0%、60.0%と非常に高い割合となっている。
「就活」が社会問題化されて久しい。学生に過剰な情報提供が行われる一方で、短期に集中する選考スケジュールによって、学生の企業研究の機会を奪うことになり、会社理解が不十分のまま入社への意思決定を迫ることになった。その結果、多くの辞退者や早期離職者を生んだ。インターンシップはこうした問題を解消するものとして期待されているわけで、第1番目の理由「自社や業界に対する理解の促進」は、まさにそのことを言い表している。
また、過熱化する近年の企業の採用戦線では、早期からの接触学生ほど高い評価、高い内定承諾率になるという傾向が強くなっている。欲しい学生を採用するには、インターンシップをはじめとする早期のアプローチが有効というわけだ。これが2番目の理由「早期母集団の形成」の背景である。
さらに、インターンシップの募集・受け入れを通じて、これまで接点のなかった大学や教授陣、就職担当者との関係を構築することができ、その後も続く「関係性」の継続が期待できる。大学側も学生確保の観点から産学提携への機運が高まっており、インターンシップは両者の関係構築には絶好の機会となる。これが3番目の理由「大学との関係強化」である。
もちろん、インターンシップに参加した全ての学生が自社に興味・関心を持つわけではない。しかし、自社の採用をより良くする貴重な“情報源”であると考えれば、インターンシップの実施の意味がより深くなっていくのではないか。学生の実際の行動や能力を見て、自社の選考基準や採用戦略を作り直したり、志望度の上がった要素をヒアリングしてアピール材料を工夫したりするなど、採用活動の改善に役立つことは間違いない。
| 2014年 | 2015年 | |
| 導入している | 43.8 | 52.8 |
| 導入していない | 56.2 | 47.2 |
| 全体 | 2001人以上 | 501~2000人 | 500人以下 | |
| 自社や業界に対する理解の促進 | 33.6 | 65.0 | 32.5 | 22.0 |
| 早期母集団の形成 | 31.8 | 60.0 | 27.5 | 24.0 |
| 大学との関係強化 | 17.3 | 30.0 | 20.0 | 10.0 |
| 社会貢献、地域貢献 | 13.6 | 35.0 | 12.5 | 6.0 |
| 社内の活性化 | 2.7 | 10.0 | ー | 2.0 |
| 学生の発想の吸収 | 1.8 | ー | 2.5 | 2.0 |
◆インターンシップの「種類」
インターンシップといっても、その形態は多種・多様である。「期間」も1日のものから数週間~数ヵ月に及ぶものがあり、「目的」も採用を意識したものから、あくまで教育を中心に置いたものまである。当然、「開催形式」や「プログラム内容」は目的によって変わってくるわけで、近年では「有給」というケースも増えている。
そうした中でも、主流となるのは「模擬体験タイプ」である。これは実際の職場で業務を体験するのではなく、模擬的に体験・理解できるようなプログラム内容だ。業務に関する簡単なレクチャーを行った後、業務に関わるテーマを提示し、グループや個人で取り組ませる。これらを実施することで、認知度拡大、早期の母集団形成を図っていく。期間は1日~1週間程度というケースが多い。
一方、採用を意識し、業務を実際の職場で体験する機会を提供する「現場受け入れタイプ」を導入する企業もある。インターンシップでの成果や目標は人事主導で設定するが、具体的な日常の担当業務は現場で指導する実務担当者に委ねられる。期間は1週間~1ヵ月に及ぶが、終了後の学生の満足度は総じて高い。自社理解、業務理解が進み、動機付けも強くなっていくことで、入社後もその担当業務に継続して取り組みたいという学生も少なくないようだ。ただし、相応の拘束期間が必要になるため、学生と現場の双方のスケジュール確保と調整が大変である。
| 期間 | 短期 | 長期 |
|---|---|---|
| 目的 | 認知度拡大、母集団形成 | 魅力発信、自社理解(選考) |
| 開催形式・プログラム内容 | 説明会・セミナー、模擬体験 | 現場での就労体験 |
| 報酬 | 無給(*交通費は支給) | 有給 |
◆大学がインターンシップに期待する「役割」
今回のレポートをまとめるために、いくつかの大学関係者の話を聞いてみたが、大学がインターンシップに期待する「役割」として、次のような点が挙げられた。企業側は、こうした大学の期待に対して、実施する際には明確に自社の行うインターンシップの趣旨と、目的を伝えることが必要である。
| (1)「企業説明会」としての場 | 2016年度3月卒の採用活動の後ろ倒しを受け、短期間のインターンシップが増えており、現実問題として、職業体験は実施されないケースが多くなっている。そこで企業は少しでも早く学生との接点を設けるため、「企業説明会」として「1日インターンシップ」を導入し始めている。結果的に短期のインターンシップは、職場体験型のインターンシップとは別に、若年層の教育において重要な気づきを与え、多くのものを学べる場(機会)として期待している。 |
|---|---|
| (2)実際の職場を体験し、「キャリア教育」につなげる | 実際の職場で体験を積み、働いている人とさまざまな話をすることによって、社会に出て自立していくことに必要な事項を理解することができる。このような機会を得ることにより大学時代に学ぶべきことを考え、目標や目的意識をもって主体的に大学生活を過ごすことができる。「キャリア教育」の一環として、できれば2年次など大学時代に初期に行われることが望ましい。 |
| (3)企業や業界を理解し、「ギャップ」をなくす | 就職先についての意識が高まっている中での就業体験である。実際に仕事を体験し、興味のなかった分野にも目を向け、選択の幅を広げることができる。また、実体験を通じて企業研究・業界研究を行うことができるため、文献やセミナーでは得られない深い理解が可能となる。さらに、社会人として求められていることについても体験を通じて具体的に理解することができるので、自分が思い描いていた仕事内容と実際との「ギャップ」が理解できる。これらの結果、就職後のミスマッチ、早期離職の予防につながっていく。 |
| (4)「採用」と結び付ける | 3年次には、学生も就職先を意識してインターンシップに取り組んでいる。また、企業も相応の時間とコストがかかる中で実施しており、良い学生に来てもらいたいと考えることは当然のことである。その意味からも、インターンシップ参加学生に対しては、採用の際に「優先権」を与えてみてはどうだろうか。 |
◆インターンシップに対する「思惑」の違い
インターンシップを実施することによって、学生は企業を知り、働くことの意味や職業観を深く理解することができる。一方、企業は採用を意識したインターンシップであれば、学生の能力や考えを理解した上で選考に臨めるため、採用のミスマッチは減っていくと考えられる。しかし、現状のインターンシップを見ると、受け入れ側の企業と学生側の「思惑」には違いが少なくない。
学生が就職活動で重要な活動として挙げるのは「インターンシップ経験」や「アルバイト経験」「OB・OG訪問」など、社会人と接することで「自己理解」を得る場である。何より、学生は社会人との接点を多く持つことで、早く企業社会を理解し、就職活動を有利に進めていきたいと考えているのである。
ところが、企業はインターンシップには実際の採用選考と連動させないことが前提となっている(日本経済団体連合会の傘下企業)。また、採用ブランディングの高い(採用力のある)大企業では、会社全体の説明や現場での仕事理解を深めるプログラムを組んだとしても、忙しい部署ほどインターンシップにはおよび腰であり、現場の優秀なスタッフの時間を学生に割きたくない、という声も少なくない。
他方、日本経済団体連合会に所属していない外資系企業やベンチャー企業、コンサルティング企業などでは、採用と連動したインターンシップを以前から実施している。しかも、相当額の報酬を支払って実施している企業もあり、日本の大企業が採用活動を始める前に、優秀な学生を青田刈りしている現実があるのは周知の通りである。また、起業家精神の高い優秀な学生などは、企業社会の現実をより知るチャンスがあるため、積極的にインターンシップに参加するケースが多いという話をよく聞く。
つまり、日本は企業の社会的責任としての観点や教育的な視点からインターンシップを導入する大企業を中心としたグループがある一方で、採用を意識したインターンシップを行う外資系、ベンチャーなどの企業があるという、二重構造となっているのだ。
日本経済団体連合会では採用・就職活動を加熱させないためにインターンシップの指針として採用につながるものは実施してはいけないと定めているが、実際にインターンシップを経験した学生が、その企業に理念や事業、社員の人たちに共感・共鳴すれば、就職したいと思うのは当然のことである。また、企業としても自社の理念・社風に合う優秀な学生であれば、採用したいと思うのは当然だろう。自由経済の下、こうした人間の意思を制御するのは、難しいように思う。
◆インターンシップを実施する際の「留意点」「配慮」
インターンシップは早期の募集活動となるため、大手企業や有名企業に希望が集中する傾向がある。そのためにも、実施する企業ではそれを覆すような魅力的なプログラムを用意し、差別化する必要がある。実際の募集では、大学への求人票の形で告知したり、インターンシップ専用のメディアやイベントを使って行うことが主流であるが、これだけでは不十分である。ダイレクトメールを配信したり、内定者や若手社員の口コミ、学生サークルなどとの連携を通じた告知も必要となるだろう。学生とダイレクトにコミュニケーションが取れるチャンスは限られている。わずかなコミュニケーションで学生に自社のインターンシップへの参加を決めてもらうためには、募集業務を想定しながら、自社の独自性を明確にし、参加対象となる学生の満足度が高まる要素を加える必要がある。
また、実際にインターンシップを運営していくに際しては、以下のような配慮が求められる。
| (1)客観的な選考 | インターンシップは一定期間を自社で過ごすため、仕事だけでなく、会社の風土や人間関係への理解が深まる。そのことで、参加者にアドバンテージを付与するケースもある。しかし、短期間のインターンシップだけで将来の職業適応度まで明確に分かるわけではない。インターンシップ参加者と仲が良くなった結果、マッチング度が高くなるのではなく、選考ではより客観的な評価を意識することが大切である。 |
|---|---|
| (2)開催時期への対応 | 2016年卒の採用活動時期の変更に伴い、現在、インターンシップ開催時期の中心となる夏季休暇に、採用活動が重なることになった。インターンシップの対応に手が回らず、一時的に受け入れの人数が減ることが懸念される。そのためにも、全社を巻き込んだ形の協力体制を要請しておく必要がある。また、選考との“つなぎ”期間の短さから、冬期のインターンシップ(3年生の冬季休暇中に実施)への注目が集まっている。今後、この時期の競争の激化も予想されるので、早めの準備が求められる。 |
| (3)労働関係法規の適用 | インターンシップの名目で、学生の労動力を安価な報酬で利用するケースがあると聞く。安易な報酬決定は、自社の信用・ブランドを傷つけることにつながる。また、インターンシップの実態から判断して、労働者とみなされる場合は、賃金や労働条件に関して労働基準法、最低賃金法などが適用されるとともに、実施中の事故に関しても労災保険法の適用があることに留意する必要がある。 |
個人的な意見ではあるが、学生は「就職サイト」で数限りないエントリーをさせられることよりも、質の高いインターンシップを経験し、企業の本質を知った上での就職活動が望んでいるように思う。
現実問題として、企業の社会的責任としての観点からインターンシップを行う企業と、採用を意識したインターンシップを行う企業があるという二重構造が存在する以上、インターンシップを実施する企業はその目的を明確に謳うことが求められてくるのではないか。そうすれば、参加する学生の思惑と企業の思惑が合致することになり、それぞれの目的が達せられることになる。この点を曖昧にし、現状を無視した一方的な「あるべき論」によるインターンシップでは、実となるものは少ないように思う。
インターンシップは実施する側、受講する側でいろいろな目的がある点を含め、若年層の教育において重要な位置を占めているのは間違いない。その意味でも、大学、企業、そして社会全体が連携し、インターンシップを有効に活用していく必要がある。
以上、『前編』はインターンシップの現状と課題について見てきた。次回の『後編』では、「採用連動型のインターンシップ」を中心に、実施目的を明確にしたインターンシップの具体的な事例を紹介していく。