新卒就活生、ブラック企業見抜く目養う NPO・弁護士が助言
長時間労働を強いるなど労働環境が劣悪な「ブラック企業」による被害が社会問題化する中、行政や弁護士、NPO法人が企業選びのサポートに乗り出している。学生のブラック企業に対する警戒感は強まっているが、十分な情報や知識を持たないまま就職活動を始める場合も多い。専門家らは「きちんと見分ける目を持って」と呼び掛けている。
「内定を断り就活をやり直すことにしました」。4月上旬、都内の私立大を前月に卒業したばかりの男性(22)は就活生で混み合う「東京新卒応援ハローワーク」(東京・新宿)の窓口を訪れ、相談員に打ち明けた。
男性は衣料品小売りの中小企業への就職が決まっていたが、契約書にサインする際、賞与や昇給など雇用契約上の条件が内定時に聞いていた数字より低いことに気がついた。「従来の資料はミスプリントだった」という会社の説明に不信感が募り入社をやめた。「ブラック企業は嫌。自分の身は自分で守らないと」
サービス残業を強いられたり、上司から執拗に罵られたり――。新入社員が過重労働やパワハラを苦にして退職する例は少なくない。ハローワークの担当者は「ブラック企業という言葉が浸透した結果、ここ数年で就活生の警戒感が過剰なほどに高まっている」と話す。
就活生をサポートしようと、昨年7月に結成された「ブラック企業被害対策弁護団」には200超の弁護士が参加。インターネットなどで評判が広がり、電話相談件数は都内だけで約300に上る。「企業の募集要項の見方など具体的なアドバイスもしている」(事務局長の戸舘圭之弁護士)
NPO関係者らが昨秋に立ち上げた「ブラック企業対策プロジェクト」は「ブラック企業の見分け方」と題した資料をホームページで公開。「初任給の高さに釣られない」などと就職活動の注意点を解説している。
厚生労働省は今春、ハローワークで閲覧できる求人票に過去3年分の離職者数や採用者数を記入する欄を設けたほか、秋までに夜間・休日の電話相談窓口を設置する。
ネット上では「ブラック企業」として多くの企業が名を連ね、情報が氾濫する。根拠のない情報も多いが、都内の私立大4年の女子学生(23)のように「面接を受けるかどうかは、企業名と『ブラック』の組み合わせでキーワード検索してから決めている」という学生もいる。
法政大キャリアデザイン学部の上西充子教授は「多くの就活生はブラック企業に敏感な割に対策が不十分。ネット情報に惑わされず、社員の離職率や勤続年数など客観的なデータから企業を冷静に見分ける目を持ってほしい」と話している。