中小企業、将来託す人材確保できている? 経営者に聞く

総合中小企業、将来託す人材確保できている? 経営者に聞く

人手不足の時代、と言われます。会社の経営は、働き手の数だけではなく、成長に資する人材の有無にかかっています。日本の会社の大多数を占める中小企業は、将来を託す人材を確保できているのでしょうか。各地で活躍している、先月と同じ経営者50人に聞きました。

ご協力いただいた50社(順不同) 【北海道】ナオエ石油、ダテハキ【東北】高田自動車学校、八木澤商店、蔵ホテル一関、シェルター、八葉水産、丸平木材、ヴィ・クルー、西条タクシーグループ、マルベリィ、北洋舎クリーニング、キクチ【関東】中里スプリング製作所、日本電鍍工業、永瀬留十郎工場、浜野製作所、コビーアンドアソシエイツ、古田土会計、博水社、吉村、栄鋳造所、大橋製作所、日進工業、ミナロ、大功、ウェルネスダイニング、安田塗装【中部】給材、エイベックス、キタガワ工芸、ユーズネット、麻布【近畿】千房、ロマンライフ、山田製作所、枚岡合金工具、新日本テック、進和建設工業、カワキタ、梅南鋼材、三協製作所、日本グリーンパックス【中国】玉野縫製、中村ブレイス、エブリイ【九州】ヒューマンライフ、お掃除でつくるやさしい未来、プレースホーム、阿蘇プラザホテル

■国籍多様化、社員に刺激

〈アルミ鋳物「栄鋳造所」社長 鈴木隆史さん(41)〉

〈Yes〉 カメルーンからの難民を正社員にしています。彼は、母国に残した娘を呼び寄せたいと、けんめいに働いています。もちろん所得税を払い、社会保険にも入っています。

さらに、別の国の難民がひとり。韓国人、イラン人の社員もひとりずついるので、英語、韓国語ドイツ語、フランス語、アラビア語への対応ができています。いま売り上げの7割が海外のお客さまです。

リーマン・ショックで仕事が止まり、グローバル化を意識しました。それまで売り上げを国内の自動車産業に頼っていましたが、中小企業が日本にいながらできるグローバル化って何だろうと考えました。その答えが、日本が好きで中小企業に喜んできてくれる外国人の採用でした。

最初は「鋳物工場で英語かよ」と社内にあつれきを生みましたが、私が本気なことがわかり、社員は目の色を変えました。外国から来た彼らを見て「負けるものか」と頑張ります。コミュニケーションを図ろうと片言の英語で語り始めます。ネットで英会話を学んだりもしています。

私や社員のおおくは語学が苦手です。でも、いずれは自分で海外との商談をまとめるぞ、と意気込んでいます。ダイバーシティー、つまり多様化で社員は成長し、輝くのです。

グローバル化とダイバーシティーを掲げたことで、若い人が来てくれています。中小企業も明確なビジョンがあれば人材を確保できます。

(本社・東京都八王子市、従業員約30人)

〈Yes〉 幹部社員が新卒社員の個性に合わせた研修プログラムを組み、部署をこえたチームで面倒をみている。入社3年目のころ、社員は大きく伸びる。(サービス業・60代)

 

〈Yes〉 就職活動の時期がずれ、予定通り採用できるか不安。約束を守らない企業があるようで、ルール違反はブラック企業として公表すべきだ。(製造業・60代)

〈Yes〉 うちでインターンをした学生が、ものづくりへの志と夢をもって、入社を希望してくれている。若者たちが活躍する場を提供しつづけたい。(製造業・50代)

〈Yes〉 うちの工場では整理・整頓・清掃を徹底してきた。良好な労働環境が新卒採用で有利になっている。(製造業・50代)

■業績が悪化、採用を断念

〈観光ホテル「阿蘇プラザホテル」社長 稲吉淳一さん(46)〉

〈No〉 高卒を毎年3~4人採用してきましたが、今春は見送らざるをえませんでした。昨年11月に阿蘇山の中岳が噴火してお客さまが減り、業績が悪化したのです。

修学旅行先として阿蘇を避ける動きはまだ残っていますが、お客さまはだいぶ戻ってきました。来春は、ぜったいに採用を再開します。

いま中小企業の採用は難しい局面にある、と思います。アベノミクスの恩恵で景気のいい大企業が、ごっそり採用し、恩恵のない中小が苦しむという構図にあるからです。

大企業はいい給料で人を集めます。でも景気が悪くなるとリストラ、工場撤退ですよね。中小企業は簡単に人を切れません。地域と共に生きていく宿命にあるのですから。

うちには半世紀にわたって働いている社員たちがいます。もう体がもたんかもしれん、と言いながら楽しそうに通ってきています。わたしたち経営者も、社員への愛、地域への愛、つまり雇用の死守と拡大を貫こうと思っています。

でも人材の確保は大変です。とくにホテルのようなサービス業は土日が忙しく、早番や遅番勤務もあります。さらに、地方にある中小に、その地以外の人が目を向けてくれることは、あまりありません。

求人に応募ゼロということがあります。転職されてしまうこともあります。そんなときは企業努力が足りなかったと考えます。魅力的な企業づくりに励んでいく覚悟です。

(本社・熊本県阿蘇市、従業員約100人)

〈No〉 ヘッドハンティング会社に人材をとられた。取引先ではなく、社員を接待しなくてはならない。社内に居酒屋を開こうかと考えている。(サービス業・50代)

 

〈No〉 人手不足が売り上げ増のブレーキに。でも消費増税が予定されている2017年4月以降の見通しが立たず、新卒採用に踏み切れない。(サービス業・70代)

〈No〉 短期で高収入の仕事を求め、労働力が地元から流出している。東京五輪が近づくにつれ、その傾向が強まることを懸念している。(サービス業・40代)

〈No〉 若い人を入れて、技術の引き継ぎをしたい。だが、これと思える人材が来ず、来ても定着しない。(製造業・40代)

■中島隆の現場で考える

50社のうち29社が「人材を確保できている」と答えました。人手不足と言われている割には多いと感じ、不思議に思いました。理由を現場で探って合点がいき、中小企業担当記者として自分の不明を恥じました。

中小の場合、新卒や中途で社員を募集しても、選考でふるいにかける大企業のように人が集まることは、あまりありません。心ある経営者は来てくれたという縁を大切にして、「人手」から「人材」そして「人財」へと丁寧に育てていくのです。

だから中小の現場には、様々な国籍、学歴、個性を持った人たちが集います。50社に含まれる、ある会社の社長は、私にこう言いました。「元暴走族の子には問題解決力がある。いつも警察のやっかいにならないように考えてきたからだろうか」

就職活動をしている学生のみなさんへ。人気の大企業に挑戦して「ご縁がなかった」と言われても、どうってことありません。磨けば光る原石を企業側が取り逃がしたのです。

アベノミクスで業績好調な大企業は、新卒を大量採用するでしょう。でも時間をかけて人を育てる余裕はあまりなく、社内競争は厳しい。

40歳の自分を想像したうえで、就職する会社を選ぶことも大切です。その社で輝くことができますか、それとも社内競争に敗れて……。