海外経験生かし日系企業に人材紹介 ジェイエイシーリクルートメント

紹介海外経験生かし日系企業に人材紹介 ジェイエイシーリクルートメント

□ジェイエイシーリクルートメント・田崎ひろみ会長

高い語学力や海外勤務経験など「グローバル」をキーワードにした人材紹介を行うのがジェイエイシー(JAC)リクルートメント。経営層やマネジメント層などをターゲットにしたサービスを、日本を含めて世界9カ国で提供している。ビジネスモデルの発祥の地が英国のロンドン。現在も年間の約半分を海外で過ごす、会長の田崎ひろみさんが編み出した手法だ。

アポなしで訪問

田崎さんは幼い頃から教会や英会話学校に通ったりして、英語の魅力にとらわれていた。高校を卒業後、秘書や通訳などを経て本格的に英語を学ぶために渡英。フランスでの語学勉強などを行った後、日系の銀行の英国支店に勤務し総務の仕事に携わっていた。

一方、JACリクルートメントが属する田崎グループは英国在住の日本人向けに、不動産業と食品の輸入販売を営んでいた。事業主は田崎忠良氏。ひろみさんの現在の夫で、JACリクルートメントの取締役最高顧問だ。

忠良氏は銀行でのひろみさんの仕事ぶりを耳にして、スカウトした。1981年のことだった。ひろみさんに任された仕事は、日系企業に現地日本人を紹介するマッチングビジネス。自ら事業モデルを開発し、顧客の開拓を進めていく。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉を裏付けるように、当時の日系企業は元気がよく海外進出を積極的に進めていた時代。とくに金融機関は、世界三大金融センターの一つであるロンドン“詣で”を活発に行っており、証券会社から地銀に至るまで数多くのプレーヤーが集結していた。

日系企業は同じビルにテナントとして入ることが多い。田崎さんはほとんどアポなしでビルを訪れ、端から順にノックしていった。当時、人材紹介ビジネスはなじみが薄く、しかも説明するのは日本人女性。田崎会長は「追い返されることはなかった」と振り返る。

日本の金融機関は人材採用を急ピッチで進めていた。現在は存在しない中堅証券会社でさえも軽く100人を超えるスタッフを抱えるなど、人材は常に逼迫(ひっぱく)状態にあり、田崎さんの仕事も多忙を極めた。1カ月で14、15件といったように、現在では考えられないペースで成約したケースもあり、現地人の間でも評価は高まった。

アジア事業を強化

英国の成功を踏まえ、他地域での事業展開にも乗り出す。その第1弾がシンガポール。そして日本にはバブルの全盛期である88年に“進出”した。当時、人材紹介会社の主力事業はヘッドハンティング。JACリクルートメントのような事業モデルは珍しかった。加えて、外資系金融にターゲットを絞った戦略が奏功。日本でも着実に実績を残していく。

世界を股にかけた活躍に対する評価は英国で高い。昨年には英国を拠点とする人材紹介業界専門誌の顕彰式で、人材紹介業界の発展に最も寄与した人物の功績をたたえる「名誉殿堂賞」を受賞した。

同社が今後、グループとして力を入れていくエリアがアジア。日系企業の進出が相次いでおり、現地では優秀な人材に対するニーズが高いためだ。ただ、アジアでの日系の人材会社間の覇権争いは激しさを増すばかり。日本の人材マーケットだけに依存していては成長が見込みにくいからで、ライバル他社による大型M&A(企業の合併・買収)も目立つ。

JACリクルートメントは「英国を起源としているため、海外に拠点を置く日系企業が、どういったことで苦労しているのかを理解しやすい」という点を武器に、圧倒的な実績を残してきた。

これを糧にした上で拠点を増やすなどの対策を練ることで「アジアで絶対的なナンバーワンブランドを確立すること」が田崎会長の目標だ。(伊藤俊祐)

≪Q&A≫

出産後の早期職場復帰に力

--JACリクルートメントでは女性社員が活躍できる仕組みづくりに力を入れている

「女性が多い職場で男女の比率は、ほぼ半々だ。われわれのコンサルテーションという仕事は、顧客の信頼感を勝ち取るためにも会社・業界の知識をだんだんと付けていくことが前提条件となる。あらゆる観点からのアドバイスを行えるプロフェッショナルになるには5年、10年といった期間が必要だ。しかし、女性は『これから』というときに結婚、出産・育児に直面するケースが多い。この結果、休職が長期化し、これまでに培ってきたキャリアが断絶。復帰後はゼロからやり直す事態が生じてしまう。退職の道を選ぶケースもある。これらを何とかしたかった」

--具体的な方策は

「出産後の早期職場復帰に、子供1人当たり月額最大で10万円を支給する社内育児支援策の運用を行っている。慢性的な保育所の不足問題に対応し、できるだけ早い段階で職場に戻ってこられるようにした。こうした取り組みの結果、女性社員の意識も大きく向上。昔は復帰しても『子育てがあるから』といった理由でコンサルタントから事務職への配置転換を申し出るケースが目立ったが、コンサルタントとして再び活躍したいという社員が増えた。『子育てを行いながらキャリアを積み上げていける』といった模範を作り上げていきたい」

【プロフィル】田崎ひろみ

たざき・ひろみ 平安女学院高卒。1981年、人材紹介や不動産業を展開する田崎グループに入社。英国で人材紹介事業(現ジェイエイシーリクルートメント)の本格的な立ち上げに携わり、88年に日本進出と同時に取締役。2008年社長。会長・CEOを経て15年3月から現職。64歳。京都府出身。

【会社概要】ジェイエイシーリクルートメント

▽本社=東京都千代田区神田神保町1-105 神保町三井ビルディング14階

▽設立=1988年3月

▽資本金=6億1950万円

▽社員数=518人

▽売上高=92億7900万円(2014年12月期連結)

▽事業内容=人材紹介