総合世界で最も採用が難しい国日本、優秀な人材を獲得するためには
企業の存続・成長のために、人材はまさに企業の生命線だ。それゆえ人事担当者は、いかに優れた人材を採用するのか、引く手あまたの優秀な人材をリクルーティングするために、多額のコストをかけてきた。いま国内で人材市場は活況を呈しているが、従来のリクルーティングの手法を一変させたベンチャー企業がある。わずか6年で従業員450人超に急成長したビズリーチだ。
創業者の南 壮一郎氏は、当時人材業界ではまったくの素人だったという。同氏は先ごろ開催された「経営者向けダイレクト・リクルーティングセミナー」に登壇。世界で最も採用が非効率で高コストな国日本において、優秀な人材を獲得するために知っておきたいポイントを説いた。
人材業界の大きな疑問
ビズリーチ代表取締役社長
南 壮一郎氏
まず南氏は、世界の人材採用ランキング(Mercer 2012 Talent Shortage Survey)を示し、「実は、日本は世界で採用が最も難しい国という結果が出ています。皆さんが採用で悩んでいるのは当たり前のことなのです。なぜ日本の採用は、こんなに非効率で高コストなのでしょうか?」と問いかけた。
同氏は、モルガン・スタンレー証券などを経て、東北楽天ゴールデンイーグルス創業メンバーとなるといった異色の経歴の持ち主だ。もともと人材業界で起業する気はなく、まったく畑違いの金融や球団の業界にいたのだ。しかし、この時代に生きている以上、何かITを活用した仕事をしたいと考えて、転職活動に踏み切った。南氏は転職するにあたり、人材会社を1ヶ月で27社も回ったそうだ。人材会社の担当に「インターネットで世界を変えたい」というと「わかりました。お任せください。南さんにぴったりの仕事をご紹介します」と応えてくれた。
最初の人材会社で紹介されたのが外資大手インターネット会社だった。しかし他の人材会社では、まったく異なる企業を紹介された。担当者の全員が違うことをいうのだ。それで南氏は不思議に思った。そんな折、人材サービス会社の元役員に業界のことをレクチャーしてもらったという。そこで人材業界の2つの事情を知った。
・人材業界特有の2つの事情とは?
・なぜ日本の人材業界は見える化が進まなかったのか?
そこで、採用市場だけでなく他の市場でも同じような問題がないかを考えてみたところ、15年前の小売市場も同じだったことに気づく。昔は、売り手と買い手の間に、問屋や小売店があった。つい最近までは中間がブラックボックス化されていた。そういった市場を楽天市場などのEコマースプラットフォームが可視化し、売り手と買い手をダイレクトに結んだ。これがECによって引き起こされた革命だった。ニーズを可視化して、売り手側は多くのマーケットに商品を売れるようになった。一方、買い手も店からネットを通じ商品を直接買えるようになった。「しかし、なぜ人材採用ではブラックボックスが続いているのでしょうか?」と先述の人材サービス会社の元役員に疑問をぶつけると、同氏は「面白い考え方だから、自分でビジネスをやってみろ」とアドバイスしてくれた。それが、南氏が現在のビズリーチを創業する契機となった。
なぜ日本の人材業界は見える化が進まなかったのか?
南氏は、世界の人材業界について徹底的に調べてみた。そして事実を知って驚愕したという。
「世界中で、日本だけが人材業界がブラックボックスになっていました。すでに世界の人材業界では、可視化されたマーケットプレイスが形成されており、データベースにすべて職務経歴書が登録され、そのサマリーも公開されていたのです。また企業への応募も、登録された求人情報をクリックするだけで、15分で応募できました。世界の採用実態は、ダイレクトリクルーティングで効率化され、手数料も約12%。日本は倍以上もコストがかかっていました。」
さらには、海外では中小ベンチャー企業こそが、人材データベースを有効活用していることがわかった。
中小ベンチャー企業は、大企業と比較すると給与などの条件が上回ることは稀だ。そうなると、人材紹介会社は利益の最大化を図るために、優秀な人材から順番に給与が高い(手数料が高い)大企業に紹介してしまいがちだ。求職者がベンチャー企業に興味をもっていたとしても、その情報が提供されないケースもある。これは決して人材紹介会社で働く人が悪いのではなく、ビジネスモデルがこうした状況を生み出していたのだ。そのため中小企業の経営者は「自分たちのような小さな会社に、即戦力の有望な人材なんて入ってきてくれません」と嘆く。しかし、そんな経営者に対し、南氏は「ビズリーチに一度任せてください」という。2ヶ月後には「自分たちのような地方の中小企業でも即戦力の人材が入ってくれた」という喜びの答えが必ず返ってくるからだ。
人材業界で経験のない南氏は「業界での経験がないからこそ、日本のこれまでのあり方にとらわれず、世界では採用の常識になっているダイレクトリクルーティングを業界に先駆けて導入できました」と説明する。
実はダイレクトリクルーティングの予兆は、10年以上前の『ウォー・フォー・タレント~“マッキンゼー式”人材獲得・育成競争』(翔泳社 2002)という書籍において、採用市場の未来として予言されていた。インターネットの普及により採用チャネルがどんどん増え、それらを管理しながら最も効果的なチャネルを上手く運用していくことが求められるというものだ。応募を待つだけではなく、自分たちから応募を誘発するようなマーケティング活動をしない限り、採用ができなくなる時代がやってくるという予測であった。
そして、ダイレクトリクルーティングは、SNSや外部データベースを活用し、経営者・役員・採用担当者が自ら候補者を見つけ出すアプローチだ。まさにウォー・フォー・タレントの時代が到来したのだ。南氏は「ダイレクトリクルーティングの定義は1つ。受身でなく主体的な採用活動をすることにより、より優秀な人材を、より早く、より安く雇えるというものです。そして、やればやるほど優秀な人材が獲得できるシステムです」と語る。
ビズリーチのデータベースには、現在約17万人の職務経歴書が登録されている。採用企業も3000社超あるという。また起業の要望で、若手人材を中心とした日本初のレコメンド型転職サイトも構築した。こちらは1年間で約10万人もの職務経歴書が登録され、すでに2400社が利用している状況だ。こうしたサイトは、大手グローバル企業ほど積極的に利用しているそうだ。


