「幅と深さ」を兼ね備えた リーダー人材を採用するには

総合「幅と深さ」を兼ね備えた リーダー人材を採用するには

新年度が始まりました。今回は採用がテーマです。プロの面接官は、対象者の「エネルギーレベル」を感知することで、実力を見抜く。GEやグーグルで採用面接を実施してきた筆者は、そう語ります。グローバル企業の採用担当者は、どんな観点で人を見るのか。また、面接で、どのような質問を投げかけるのか。いくつかのヒントを挙げてもらいました。

候補者の能力だけを判断するのなら
履歴書も職務経歴書も要らない

テレビの時代劇でよくあるような剣豪同士の対決を思い浮かべてみてください。

お互い向き合い、剣を交えたその直後に相手の実力を見抜いてしまう。

「お主なかなかやるな」「お主こそ!」

長年、人事として採用面接に関わっていると、候補者に幾つかの質問をするだけで、相手の能力はかなりの精度で分かってしまうものです。

私の中で採用面接は、剣道やテニスのラリーのようなものです。自分が繰り出す質問(攻撃)に相手がどのように回答(防御)するかで相手の実力を判断します。

極論すれば、候補者の能力だけを判断するのなら、履歴書も職務経歴書も要りません。

現実には、能力だけでなく、相手の価値観や会社とのフィット感を判断するので、履歴書や職務経歴書に書かれている内容をしっかりと読み込んでから面接に臨むのですが。

それでは、なぜプロの面接官は候補者の実力がすぐに分かってしまうのでしょうか?

それは、候補者のエネルギーレベルの違いなのだと思います。

当たり前ですが、人によって、それまでの人生で蓄積した知識と経験の質・量にはバラツキがあります。

どれだけ真剣に勉強したか、どんな本を今まで読んできたか、我を忘れて没頭したことはどれ位あるか、大きな挫折を乗り越えた経験はあるかなどが、その人のエネルギーレベル(発電量)を決めているのかもしれません。

人生では付け焼刃はきかないので、これまで頑張ってきたことが今の自分の実力で、これから頑張っていくことが自分の人生を決めていきます。

さまざまな経験を通して初めて、人は自分がどういう人間なのかを理解します。

別の言葉で言えば、自分は何がやりたくて、どんな価値観を持っていて、周りにどんな貢献ができるかが見えてきます。

その結果、自分に自信を持つことができ、それこそ、自分の目つき、顔つきが変わってきます。

借り物ではない自分の言葉で自分の考えを伝えることができるようになります。

そういう候補者はとても魅力的なので、その顔と話は、面接官の記憶に焼きつきます。

ジャック・ウェルチが提唱する
リーダーに必要な4Eモデル

新卒採用のグループディスカッションをしていても感じますが、エネルギーレベルの高い人がグループ内に1人か2人いるだけで、そのグループの良い部分が引き出され、グループの最終成果の質を数段押し上げる効果があるように見えます。

そこにエネルギーの高い人がいることで、シナジーが起きて、1+1がそれこそ、10や100になってしまう感覚があります。

20世紀最高の経営者と言われる元GEのジャック・ウェルチ氏は、リーダーに必要な条件として、4Eモデルを提唱しています。

4Eとは、Energy(エネルギー)、Energize(相手のエネルギーを引き出す)、Execute(実行力がある)、Edge(厳しい意思決定ができる)のことです。

4つのEのうち、2つのEは直接エネルギーに関わっていて、残りの2つはそのエネルギーを使って組織目標を達成すると解釈できると思います。

つまり、ジャック・ウェルチ氏は、エネルギーレベルが高い人材=リーダー人材と定義しているのです。

「リーダーは、人間発電機たれ」ですね。

そう考えると、組織力とは、発電所としてどれだけ電力を供給できるかの勝負なのかもしれません。

本当の話かは分かりませんが、ディズニーの創設者 ウォルト・ディズニー氏のエネルギーレベルを示す逸話をどこかで読んだことがあります。次のような話だったと記憶しています。

大きな社内パーティーに事前予約なしでウォルト・ディズニー氏が参加したのですが(当然、他のパーティー参加者は彼が来ることを知りません)、会場にいた参加者全員は、ウォルト・ディズニー氏がパーティーに会場に入ってきた瞬間に、彼の存在をすぐに感じとったそうです。

ウォルト・ディズニー氏ぐらいのエネルギーレベルがあると、こんなマジックも起こせてしまうのかもしれません。

エネルギーレベルの高い人材とはどのような人材なのかと仮に聞かれれば、私は「幅と深さ」を備えている人材だと答えます。

幅広い知見を持ちつつ、特定の専門分野を究めているT型人材に近いイメージです。

さらに、ローマ数字のⅢのように専門分野が複数ある人材は高度なクリエイティビティを発揮できる印象があります。

「幅と深さ」を確認するための
いくつかの質問

もちろん、どれだけの幅と深さ(器)を持っているかは人それぞれですので、この幅と深さ(器の大きさ)を面接で確認していくのが面接官の役割であると私は考えています。

面接官には、候補者が単なる思い付きではなく、論理的に考えているか(主張とその理由を分かりやすく説明できるか)、さまざまな可能性(選択肢)を考えることができるか、を確認することが求められます。

面接官として注意すべきことは、自分の感情をできるだけ入れずに客観的に判断することです。

当然ですが、見た目や好き嫌いで合否を決めてはいけません。

また、自分より器が大きい人材は、何を質問しても、自分が期待する答えかそれ以上のものが返ってくるので、能力を見抜くには苦労しません。

が、自分のプライドが邪魔するのか、抜かれてしまうという無意識の恐怖からか、時に人は、そういう人材を不合格にしてしまうことがあるので注意が必要です。

具体的には、次のような質問を候補者に投げかけると良いでしょう。

候補者が論理的に物事を考えられるかを確かめるには、「どうしてそう思うのか? その理由は? なぜそれがベストの選択肢だと思うのか?」などの質問をします。

また、さまざまな可能性を考えられるか、つまり候補者の幅を確認するには、「他の見方はできないか? 他の選択肢は?」という質問をします。

さらに、相手が事前準備してきた回答の外側、相手の枠の外にあるような質問を投げて、その場で考えさせ、回答させることも意識します。

冒頭のテニスの例で言えば、相手が返しづらい場所にショットを打ち込む感じです。

それでは最後に、外資系企業はどんな人材を採用・育成したいと考えているのでしょうか?

もちろん、一番欲しいのは幅と深さの両方を持っている人材、つまりリーダー人材

次に欲しいのは、幅か深さかのいずれかを持っている人材

深さがある程度ある人材は一つの分野を究めるスペシャリストとして成功できるかもしれませんし、逆に、幅がある人材は、論理思考を身につけ、細部まで考え尽くす訓練を行うことで、リーダー人材に化けるかもしれません。

一方、幅も深さもない人材を採用していると、中長期的には組織力を弱めてしまうかもしれません。

まとめると、常に好奇心を持って、さまざまなことに首をつっこみ、その中から自分が熱中して掘り下げられる分野を見つけ、究めるプロセスを通じて、幅と深さを併せ持った剣豪(リーダー)に変容できるのです。

自分もそのような人材でありたいですし、人事として、そのような人材を採用・育成したいものです。