「ホワイトカラーエグゼンプションは過労死を増やす」連合“残業代ゼロ制度”潰しへ執念、政府と激突

総合「ホワイトカラーエグゼンプションは過労死を増やす」連合“残業代ゼロ制度”潰しへ執念、政府と激突

厚生労働省が1月16日骨格案を示した新しい成果制度「ホワイトカラーエグゼンプション」、いわゆる「残業代ゼロ」制度に対し、大手企業の労働者らを束ねる連合が、絶対反対する姿勢を打ち出している。同制度は、成果に対して賃金を支払う制度で、ホワイトカラーを中心とする労働生産性を高めて企業の国際競争力を高めようという政府や財界の意思を反映している。

ただ、連合の古賀伸明会長は「政府も経営側も過労死が毎年100人を超える現実を直視すべきだ」と強調、法案つぶしに執念を燃やしている。賃上げをめぐっては協調する労使だが、長時間労働の懸念が指摘されるホワイトカラーエグゼンプションについては、妥協点が見いだせていない。

過労死を助長

「ホワイトカラーエグゼンプション」は働いた時間ではなく、仕事の成果に対し賃金を払う仕組み。残業代の支払いが免除されるため、「残業代ゼロ」制度とも呼ばれる。安倍晋三政権の経済戦略であるアベノミクスの成長戦略にも位置づけられた「働き方の改革」の目玉といっていい。

年収基準を1075万円以上に設定し、研究開発などの職種に対し労働時間規制を外す内容で、対象となるホワイトカラーを絞り込んだ。厚労省は通常国会で労働基準法改正案を提出を目指している。

これに対し、古賀会長は「Karoshi(過労死)が英語になるほど、日本の長時間労働の実態はひどい。労働時間の短縮を実現する対策こそ優先されるべきであって、このような中で、新制度を入れることは矛盾している」と真っ向から反対する。

政府が新しい成果制度を検討する背景には、労働の効率性を示す労働生産性が、欧米諸国に比べて低いという事情がある。日本生産性本部によると、経済協力開発機構(OECD)加盟国で比較した1人当たりの国内総生産(GDP)で、日本は34カ国中17位。加盟国平均をやや上回るが、米国の7割程度に過ぎない。

政府は、労働時間規制を「岩盤」のひとつとみなし、新制度の導入で岩盤突破を試みようという意図が透けてみえる。経営者側は、新制度の導入で労働時間規制に縛られない柔軟的な働き方が可能になり、「職種によっては仕事の能率がはかどり、競争力が高まることは間違いない」(大手企業経営者)との見解を示す。

仕事の能率、競争力向上

春闘の指針となる経団連の経営労働政策委員会(経労委)報告も働き方の改革について、「長時間労働を助長するとの懸念は、法律上、新たな労働時間制度の対象者に十分な健康確保措置を要件化し、労務管理を徹底することで払拭できる」と明記した。

しかし、過重労働に伴う過労死や労働者のメンタルヘルスの問題に取り組む水口洋介弁護士は「ホワイトカラーエグゼンプションを導入すれば、過労死が増えていくのは明らかだ。年収が高い人は心身が頑強なのか。労働者の安全を守るのに、年収の高い低いは関係ない」と話す。

労使の考え方の違いの中で、誤解を生みやすいのは「残業代に対する考え方」だ。経営者側からはは「労働者は残業代ほしさにムダに時間をかけている」という疑念が根強い。

これに対し、水口弁護士は「残業代制度は、働く者に対する長時間労働のご褒美ではなく、長時間労働をさせた使用者へのペナルティーで、長時間労働を抑制させるのが趣旨だ」と指摘する。

今回の春闘では、政労使会議で「経済の好循環を維持するために、『賃上げ』は重要」との基本認識を共有している。従って、労使の対立点は賃上げの幅と方法、中小企業など裾野への広がり、そして、労働生産性を高める働き方改革に集中する。

古賀会長は「バブル入社組を全て管理職にさせるにはポストが足らず、だからといって残業代を払い続けるのも困る」と話し、新制度の導入の背景には、経営者の人件費抑制の思惑があると解説する。

連合が「残業代ゼロ」制度を葬り去ることができるかは、労働者の団結をどれだけ強くできるかにかかっている。