新卒長い就活変わらず…インターンシップ、夏も冬も
大学生に職場や仕事を体験してもらうインターンシップに変化が起きている。学業優先などを理由に、現3年生は企業説明会の解禁が従来の12月から翌3月に、選考は4月から8月に後ろ倒しになるのを意識した動きだ。優秀な学生を集めたい企業は夏だけでなく、秋冬にも様々なメニューを用意して引き留めに躍起だが、学生には「実質的な就活の長期化で負担が大きい」との不安も生まれている。
「記念イベントが終わった反動やライバルの追撃で売り上げが落ちるかも」「新企画もあるし、慎重に見過ぎじゃないか」。8月上旬、第一生命保険の本社会議室では約60人の学生が決算短信を片手に、その会社の業績を予想するグループワークに取り組んでいた。午前か午後に4時間ずつで連続5日間、様々な業務を体験する夏のインターンでの一幕だ。
■説明会と選考開始は遅くなったが…
株式運用のほか、保険金や法人営業といった仕事の担当社員が日替わりで課題を示し、学生が話し合いながら解決法を探る。例年出る欠席者は今回皆無。関心の高さをうかがわせた。「実際の仕事がイメージできた」と満足げな中原睦美さん(20)も今夏は早速3社に応募したという。
就活後ろ倒しといっても学生の動き出しは昨季と変わらないが、人財開発室の榎並重人室長は「むしろ冬をどうするか。工夫の余地がある」と語る。今季初めて1~2月ごろの開催を検討中だ。
景気回復や人材不足感から「売り手市場」の様相をみせる就活。その中で政府の要請や経団連が昨年決定した指針などに基づき、2016年3月卒の現3年生は、説明会など広報解禁が従来の12月から翌年3月に、選考開始は4月から8月に繰り下がる。
ただそれまでに何らかの接点を持ちたいのは企業も学生も同じ。インターンは選考直結とは言えなくとも、大半の企業が採用の参考にするのが実態で、関心は増している。

■企業、冬の間も学生を引き留め
マイナビの調査(5月実施、1350社が回答)では、52.9%の企業がインターンを「実施予定」「実施する可能性が高い」と回答。開催月(複数回答)は、8月が最多だが、秋冬の各月にも2割前後が開催すると答えた。夏中心だったインターンが、秋冬も一般的になりそうだ。
カフェのようなリラックスした雰囲気で意見を交わす「ワールドカフェ」の手法なども取り入れたインターンを夏に続けてきたSCSKも今季初めて秋冬に企画する予定。簡単なプログラミング体験を交えた3~5日間のより実践的な形にする。東京建物はインターンの軸足を夏から冬に移す。夏は1日体験、冬は現場体験も含む5日間だ。
6月から来年2月まで開催する、息の長いインターンを打ち出したのが松屋フーズ。心理テストや店長体験ゲームなどの3パターンの1日プログラムを随時開く。学生は夏に3回全部、夏と秋に1回ずつなど、自分の予定に合わせて参加できる。「少しでも学生と接点を増やしたい。就職に至らなくてもインターンを機にファンが増えれば」(担当の森本英介さん)
7月下旬に東京都武蔵野市の本社を訪れると、学生は店長体験ゲームの真っ最中。「テレビCMを流す」「サラダの無料券を贈呈」「高齢者に食べやすいメニュー」など約30種のカードから自店での取り組みを選ぶ。効果はランダムに決まり、毎月の売り上げや経費、顧客満足度などが増減するルールだ。「心理テストは自己分析になるし、ゲームでは仕事をイメージできた。就活の参考になった」と永吉拓也さん(20)。
ほかにも、1つのプログラムを夏秋に各2日、冬1日と分散させたり、夏のインターンの成果を見て次のステップへの参加者を選抜したりと手法は様々だ。
学生はどう感じているのか。島田直輝さん(21)は「ペース配分を考えながら時間をかけて準備できる」と話す。4年夏は就活に費やさざるを得ない分、3年夏は別の体験をしたいとサークル活動やボランティア、短期留学に励む同級生もいるという。
■「絶対参加しないと」…学生に危機感
ただ、こうした前向きな反応の一方で不安を口にする学生も多い。「就活期間が長くなったなというのが本音。インターンも秋冬まで常に予定をチェックしている」と話すのは佐藤良紀さん(21)。第一生命のプログラムに参加した須永惇弘さん(20)も「インターンには絶対行かなければという印象」と危機感を抱く。日程の変化で1学年上の先輩の体験談を共有できない部分が多い。
マイナビの石田力主任研究員は「後に続く選考が短期決戦になり、その懸念が学生をインターンに向かわせている」と解説する。多くの大学が3年春に開くキャリア説明会で「後ろ倒しの就活を勝ち抜くにはインターン参加が必須」と呼びかけている。
就活に詳しいハナマルキャリア総合研究所(東京・渋谷)の上田晶美代表は「採用選考は短期でもそれまでの準備は長期戦。中だるみなどがあり得て学生は大変だが、手を広げすぎるのも禁物。適職を考え、就職後のミスマッチをなくす手段としてインターンをうまく使って」と助言する。長期戦を乗り切る身体と心のコントロールが今まで以上に大切になりそうだ。
