女性雇用増えるか工学系女性「コウジョ」 まだ全体の1割
理系の女性、いわゆるリケジョの活躍が注目されている。だが学生の4人に1人が女性の理学分野に対し、工学分野は1割を超えた段階。企業でもようやく工学系女性の活用が始まったばかりだ。技術者や建設現場での施工管理者など、「コウジョ」は増えるか。
横浜市戸塚区の大成建設技術センター。実証棟の地下で免震装置を点検するのは防災研究室の新居藍子さん(32)だ。京都大学工学部建築学科の修士課程を修了し、2006年に入社した。振動制御チームの一員として揺れ幅が少ない都市型の免震装置を開発した。
■やりがいある
「女性ゆえのハンディを感じたことはない。子育てしながら働く先輩もいる。大学での研究が、企業での具体的な成果につながるのはやりがいがある」と話す。
同社人材いきいき推進室の塩入徹弥室長によれば、技術系の女性基幹職採用を始めたのは03年。07年から本格採用に踏み切った。それまで女性を採用していなかった施工管理部門も門戸を開放。現在、海外も含めて建設現場で働く女性は70~80人に達する。設計部門では150人、研究部門でも25人が活躍している。

「業界を取り巻く環境は厳しく、優秀な人材を確保するには性差にこだわっていられない。入社してくる女性はやる気も能力もある」と塩入室長。建設現場では経験を積むため、男性同様に夜勤もこなす。「今後は出産・育児との両立をどう支援するかが課題」だ。
自動車部品大手のデンソーは昨年、20年までの長期方針で女性活躍を掲げた。今年1月には専任のダイバーシティ推進室が発足。女性技術者の採用強化とキャリア支援を目指す。「かつては自動車メーカーの要望通りに部品を作ればよかったが、今年は自ら最終ユーザーの要望をくみ取り環境や安全に配慮した製品を作る必要がある。多様な人材は企業が勝ち残るために欠かせない」(新屋敷博之DP―ダイバーシティ推進室長)
女性技術者はすでに男性と肩を並べて活躍しており、リチウムイオン電池や吸気圧センサーの開発に携わる女性もいる。だが、技術系総合職に占める割合はまだ2%だ。
昨年11月に社内の女性技術者7人で理系女性採用タスクフォースチームを結成した。問題を洗い出すとともに就職説明会で、女性技術者から見た会社の魅力ややりがいをアピール。従来は工学部の機械、電気電子、情報分野を中心に採用してきたが、この分野は工学部でも特に女性が少ない。対象を工学部の他分野や理学部、農学部にも広げた。
今春は技術職女性9人が入社し、来春は約30人。技術系総合職採用の1割強が女性になる予定だ。新屋敷室長は「さらに増やす」と強調する。
文部科学省の学校基本調査によれば大学の工学分野に占める女性の割合は12.3%。他分野に比べ圧倒的に少ない。「一番の原因は親と先生が工学系の女性を知らないから」。こう話すのは女性技術者のネットワーク、日本女性技術者フォーラム運営委員で東京大学工学系研究科広報室の永合由美子さん(52)だ。
工学分野で働く女性は企業の中におり、外部の目に触れにくい。親や先生は優秀な女子学生を医学部や薬学部に誘導しがち。女性自身も力仕事が多くとっつきにくいと思っている。
フォーラム運営委員長で富士通研究所専任研究員の金田千穂子さん(58)は「なぜを追究する理学に対し社会に役立つモノを作るのが工学。やりがいはあるし仕事も多様。企業の現状を知る父親がかかわれば変わるのではないか」と話す。
変化は始まっている。土木学会の正会員に占める女性の割合はまだ2.9%(14年3月)だが、若い世代が急増。半数強が20代だ。
■多様な人材必要
学会のダイバーシティ推進委員会幹事長を務める山田菊子さん(49=東京工業大学研究員)は「我々の先輩は、噂は聞いたが見たことがないユニコーン世代。男女雇用機会均等法後の私たちは大手企業に1人くらいはいるパンダ世代。そこそこ見かけるシマウマ世代を経て、身近なネコのレベルになるのも時間の問題」と話す。
83年に30人ほどで発足した土木技術者女性の会も、14年には205人になった。東日本支部支部長で東京電力土木グループマネージャーの北原正代さん(46)は「土木工事はかつては事故を出さないための指示、命令が重視されたが、最近は住民との話し合いの大切さなども認識されるようになり、多様な人材を求めている」と話す。
土木好きな女性を指す「ドボジョ」なる言葉も誕生。漫画のヒロインにもなった。土木技術者女性の会ではロールモデルを集めた冊子を作成。土木学会でも女性土木技術者のキャリアガイド「継続は力なり」を発行した。「土木女性の増勢は止まらない」と山田幹事長。土木に限らず、工学系女性の進出が加速する可能性は大きい。
