新卒「今年の新卒は…」とのボヤキはなぜ多いのか 20~30代が2017年入社組に向ける冷たい視線
「そもそも最近の若者は……」という人生の先輩による嘆きは、古代エジプト時代からあったといわれています。世代がすこし違うと価値観に違いが生まれ、先輩からすれば許容できないというのは、いつの時代も普遍的にあることなのかもしれません。
最近も2017年に入社した新入社員に対して若手クラスの社員が「最近の若者は……」と嘆くのを耳にしました。入社して導入研修を受けて、現場に配属されることになって、徐々に仕事ぶりや価値観などが見えてきた状況でのぼやきのようでした。
若手+中堅vs新入社員の対立
米国で政権交代した後、最初の100日間のことをハネムーン期間といいます。新政権の最初の100日と国民・マスメディアの関係を新婚期(蜜月)の夫婦になぞらえて名付けられました。この期間は報道機関のみならず野党も新政権に対する批判や性急な評価を避ける暗黙のルールがあります。新入社員も社内でのハネムーン期間を過ぎて、いろいろ指摘がされるタイミングがこの100日以降くらいかもしれませんね。ちなみに嘆いている若手社員と年齢差はわずか5歳程度。それでも、違いがあるようです。取材した広告代理店の若手社員Sさん(社会人5年目)によれば、
「新入社員との価値観に大きなギャップを感じる」
とのこと。たとえば、
・先輩に対する礼儀がなっていない
・仕事に対する執着心が足りない
とのこと。
Sさんは自分たちが若手のときには違っていたと嘆きます。加えて、理由はスマホ世代で対人コミュニケーションの機会が少なかった。あるいはゆとり教育を受けてきたので競争機会が少なかったからに違いない、ともっともらしい分析までしてくれました。と、ここまではよくありそうな話ですが、ここで悩ましい問題が起きているようです。新入社員との価値観の違いを若手社員だけでなく、中堅の先輩(入社12年目)たちも「そのとおりだ」もそれに同意し、
「仕事に対する取り組み姿勢が低下している。君たちの世代とは違うが、われわれの世代とも違う」
と問題視。厳しく指導しなければと、若手+中堅vs新入社員の対立に発展しかねない状況になっています。
先日、取材した食品メーカーでもこうした対立の構図が生まれていました。そのきっかけは有休の取得のようです。そもそも、この会社では入社してから数年間は有休取得は遠慮するという「暗黙のルール」がありました。まだ、入社から浅く勉強中の立場の若手は有休を取得する立場にはない……という発想からでした。ただ、時代が変わり、人事部から年次にかかわらず有休取得の促進が通達されて、新入社員から有休を取れる(取らなければならない)状況になりました。そこで新入社員も、
「明日から3日間、家族と旅行をしてきます」
と毅然とした態度で有休を取得するわけですが、その姿勢に対して、
「新人のうちから有休を取ることできるなんて、申し訳ないという姿勢をみせてほしいと思いませんか?」
若手+中堅社員たちが「イラッ」とし、有休取得した新人に厳しい態度で挑んだようです。たとえば、
「休みを取って、仕事が滞ることがあるとは問題だな。われわれの時代では考えられない」
などと嫌味を言ってみたり。でも、新入社員にとってみれば会社の通達に従ったのに責められるという、相当に困ったな状況です。
入社時の「覚悟の違い」
どうしてこのような対立が起きるのでしょうか? 筆者は入社時の「覚悟の違い」が原因のひとつではないかと思います。
覚悟とは、今後起きる事態を予測して心の準備をすること。つまり、会社に入社して仕事をする環境が自分が思うようには恵まれていないことを予測しておく状態。
たとえば、与えられた環境に対して、文句を言わない。自分で解決の方法を考える。そして決断する。こうした、行動ができる人は覚悟ができているといえます。いわゆる自発的に仕事ができる人材。新入社員にはこの「自発性」がないとの評価が下されているのではないでしょうか。
でも、どうして違いが生まれるのか? その理由を筆者は学生時代の就活環境にあるのではないかと考えます。では、若手+中堅の先輩たちと新入社員で就職した環境に違いはあったのか? 入社1年目と5年目、12年目(2017年、2012年と2007年入社)が就職活動した当時を振り返ってみましょう。
当時の人気企業ランキングを見てみると大手の航空会社、広告代理店、メーカー、商社などが並びます。会社単位で業績の不振等でランキング上の上がり下がりはあるものの、大きな変化があるとは思えません。ところが、会社選びの基準で違いが出ていました。マイナビの調査で会社選びの基準を比較してみても、
「やりたい仕事」「働きがい」が2012、2007年
「安定している」「給料のよい会社」2017年
に高い数値を示しています。この違いを生み出しているのが就職活動をしたときの環境ではないでしょうか。中堅+若手の就職活動時期は氷河期(1993年から2005年)と呼ばれる就職活動が困難な時期でした。2005年あたりまで日本ではバブル崩壊後で有効求人倍率は過去最低の状態が続き、就職氷河期という言葉が流行語大賞で特選造語賞を受賞したくらい。そして、2012年あたりはリーマンショック後に再び求人倍率が下落。新氷河期と呼ばれた時期です。
背景には、景気低迷や国際競争の激化で、企業が「優れた人材」だけを採る「少数・厳選採用」へと舵を切っていたことがあります。この両氷河期時代に就職活動した大学生の就職内定率はかなり厳しいものがありました。大手企業を志望する学生は就職活動に追われ、授業やゼミを欠席、採用時期と重なる留学を断念。企業が求める「能力」を磨けないという悪循環に陥って、内定がとれない学生たちは大いに苦悩しました。
こうした就職活動で苦労した世代は、与えられた環境で物事に貪欲に取り組む傾向があります。当時の就職活動でいかに苦労したか。その苦労が必死で仕事に取り組む姿勢=覚悟につながっているのかもしれません。
一方で今年の新入社員が就職活動した時期は、過去最高の売り手市場と呼ばれる状態。就職活動におけるエントリーシート数や訪問数は往々にして例年より少なく、厳選した会社だけに就職活動をした人も多くいたことでしょう。どうしても入社時点で仕事に取り組む「覚悟が足りない」と思われる状況になってしまうかもしれません。
まずは向き合うことから
こうした、就職活動をした環境の違いが、新入社員に対する嘆きになっているとしたら、その責任は新入社員の側にあるとはいいがたいものがあります。また、環境に変化があれば、違った覚悟の新入社員が入社してくると認識すべきでしょう。世代論とは必ずしも言い切れないのです。
さて、新入社員と中堅+若手のギャップを埋めるためにどうしたらいいのか? 当然のことながら双方の歩み寄りがないと、その溝は埋まりません。お互いの仕事に対する価値観を共有して、認識すること。そして、会社の成長のためにお互いがどうするべきか? それを考えて、実行する機会をつくる努力をしていくべきでしょう。最悪なのはお互いの価値観の違いを埋められない溝とあきらめてしまうこと。まずは向き合うことから始めていきましょう。