総合外国人労働者定着率が上がる!3つの“社内制度”
日本で働く外国人が過去最高となった。今後も人手不足が続くため、外国人労働者の受け入れが急務だ。定着を図るための働き方改革も急がれる。「オヤカク」「360度人事評価」といった日本人向けへの取り組みは、外国人労働者にも活用できそうだ。
日本で働く外国人が増えている。
2016年は過去最高の108万人(厚生労働省調べ)となった。特に政府はエンジニアや経営幹部といった高度で専門的な人材を増やそうと躍起になっている。
世界的に見るといま日本には人材獲得の追い風が吹いている。人材採用のアクティブコネクター(東京・文京)の松本麻美社長は「日本は他国と比べると就労ビザの申請が通りやすい。トランプ政権になってから米国への入国がとても厳しくなり、欧州やシンガポールも同様に厳しい。優秀な人材を獲得できるチャンス」だという。
日本は少子高齢化の影響で今後も人手不足が続くと予想される。好条件が整っている間に外国人が働きたいと思える環境を用意しなければ絶好のチャンスを逃しかねない。熱心に取り組む企業は仕事内容や人事制度を用意し、外国人社員を増やそうとしている。
外国人社員に定着してもらうには、大きく3つの方法がある。
昇進するための条件を明示
1つ目が仕事の中身の面白さで外国人社員を引きつける方法だ。その代表例が無人機の開発のエンルートラボ(埼玉県ふじみ野市、伊豆智幸社長)だ。モロッコやスペインなど6カ国の技術者が日本で働き、オーストラリアの開発拠点と分担して開発に取り組むグローバルカンパニーだ。エンルートラボにはAI(人工知能)や画像認識技術などの専門家が世界から集まる。工場内ではドローンが飛び、実験を繰り返している。
なぜエンルートラボにわざわざ外国人技術者が集まるのか。それは「世界でここでしかできない面白い仕事がある」(伊豆社長)からだ。
同社には「橋桁の下を安全に点検したい」「楽な姿勢で収穫がしたい」といった課題を抱える企業からの依頼が舞い込む。それに対し、ドローンをはじめとした無人機を活用し解決策を考える。現場には外国人エンジニアも出向く。日本人社員が通訳しながらサポートし現場の課題点を吸い上げる。「海外で優秀なエンジニアが現場へ行くことはない。彼らには新鮮で楽しい職場とみられるようだ」(伊豆社長)。こうした仕事内容の面白さで優秀な外国人技術者を引き寄せている。

2つ目が人事評価に透明性を取り入れることだ。外国人社員はどう働ければ昇進したり、評価されたりするのかという点をとても重視する。
グローバルトラストネットワークス(東京・豊島、後藤裕幸社長)は外国人社員が納得して働ける仕組みを導入している。2006年にグローバル社を設立した後藤社長は当初、外国人社員の離職率が50%を超えることに悩み、定着してもらうための仕組みを考えた。いまや離職率は5%にまで下がった。社員の7割が外国人となり、13カ国出身者が働く職場になった。離職率の低下に役立ったのが人事制度の公平性だった。「スポーツのルールのように人事評価を明確にすれば、働きがいが生まれると考えた」(後藤社長)。まず主任への登用方法に立候補制を採用し、全部長の3分の2が同意すればなれるようにした。
さらに人事評価の透明性を高める評価制度を導入した。チームワークや業務改善への貢献など28項目について、無作為で選んだ8人が評価をする。評価をポイントに換算し、100ポイント貯まれば、5000円昇給するようにした。この評価制度は後藤社長も受ける。公平な評価を導入することで、外国人社員のやる気を引き出そうとしている。
大げさに褒める
3つ目は家族も巻き込んで信頼関係を築く方法だ。人材開発の森興産が採用しているのが、オヤカクだ。オヤカクとは企業が内定者に対し、自社への入社を親は承諾しているのか確認するプロセスを指す。ここ数年、求人増で学生の売り手市場になり、新卒採用活動では必須の取り組みになってきた。
森興産は、このオヤカクを海外にまで出向いて行う。社長自ら現地に出向き、オヤカクにいく。森興産では中国やアルゼンチン、アメリカなどの人材が働いている。森隼人社長は「異国の地で働くことにはどの国の親でも心配になる。その気持ちを少しでも和らげるのが重要」という。
入社後も手厚いフォローは続く。そのひとつが社長と社員の毎日の交換日記だ。森社長はタイやシンガポールなど海外拠点を飛び回っている。本社にいることが少ないこともあり、社員が毎日取り組んだことや感想を日記にして社長にメールで送ることにしている。書式は自由。内容は業務が中心となるが、日々感じていることや悩みを書いても良い。
森社長は「交換日記を通して自分が学ぶことも多い」と話す。自国のやり方との違いを書いていたり、森社長が出身国へ出張する時にはどのような点に気をつけるべきかも教えてくれる。「社員と距離が近くなるので考えも分かり、離職率も自然と低くなる」(森社長)。
各社の取り組みは様々だが、共通しているのはいかに長く勤めてもらうか工夫を凝らしていることだ。日本で住む上での不安を解消したり、寂しい思いをさせないための取り組みが目立った。
日本の大企業の多くは口先ではダイバーシティーの有用性を訴えながら社員の同質化を進めている。それは企業にとって、扱いやすいからだ。しかし、結果的に同質の社員が増えれば、企業を変えていくような革新的な取り組みは生まれにくくなる。
最近は日本人でも一風変わった”天才社員”が求められている。育った環境が異なる外国人社員もある意味では天才社員だ。天才は考え方や行動様式が少し変わっていることもある。規律や集団行動、同調性を重んじる日本企業の風土に、日本人であってもなじめないというケースもも少なくない。日本人でも外国人でも異質な人材を使いこなせるような企業風土が求められている。