全社員が9連休しても仕事が滞らない会社の秘訣

総合全社員が9連休しても仕事が滞らない会社の秘訣

1年に1回、前後の土日を含めた9連休を全社員が必ず取得し、休み中は会社との連絡を一切禁止するというロックオンの「山ごもり休暇制度」。制度の狙いや、取得率100%を徹底したことで社内にどのような変化が生まれたのか、人事部部長の桐生明子さんに聞きました。

仕事の属人性が高く、経営に危機感があった

――「山ごもり休暇」は2011年にスタートしたそうですが、制度が生まれた背景を教えてください。

新しいことをドンドン取り入れていこうというチャレンジ精神のある副社長が、会社が抱える課題を解決するために発案しました。

当時はみんなが遅くまで働き、有休も取りづらい雰囲気がありました。また、その頃の社員数は50人ほどでしたが、そのくらいの規模だとその人にしかわからない業務が本当に多いんです。担当者が急に辞めたり、入院したりすると事業が滞るという危機感が常にありました。

山ごもりは単なる社員のリフレッシュだけではなく、こうした属人化を改善して、業務効率を上げることも狙いとして導入されました。

コーポレート戦略本部/人事部 桐生明子さん

――具体的にはどのように運用されているのでしょう。

休暇に入る人は、3日前までに全社メールを流します。内容は期間と行き先、休み中の仕事を誰に引き継いだかという指示を箇条書きにしたもの。またこれとは別に、各部内でのみ閲覧できる詳細なマニュアルや引き継ぎ書が作成されています。以前は作ろうとしても引き継ぎ書の作成は後回しになってしまったり、途中で止まっているようなことが多かったのですが、誰もが会社から1週間いなくなるので、完成させざるを得ない状況が生まれました。

休み中は仕事の連絡を一切取らないということも徹底しています。メールアカウントも他の人に引き継ぐので、メール自体が見れなくなる上、facebookのメッセンジャーなどを通じてコンタクトを取ることも禁止しているんです。

――メールアカウントごと引き継ぐなんて、すごい徹底ぶりですね。そういえば、山ごもりの日程は一度決めたら変更できないんですよね。それはなぜですか?

忙しいとか、何か用事が入ったというような理由を認めると、結局休みを取らない人が出てくるからです。どうしてもという場合は役員会にかけます。

――そうはいっても皆さんお忙しいですよね……。初年度からスムーズに運用できましたか?

多少の引き継ぎもれなどはありましたが、思っていたより順調でした。「自分の仕事は他の人にはできない」という風に思っていた人にとっては、社員同士の信頼関係をつくる機会に、若手にとっては先輩がいなくても自分で何とかするんだという、責任感が芽生えるきっかけにもなっているんですよ

「作業」は誰でも代わりを務められる状態にする

――自分の仕事を別の誰かに代わってもうらことで、業務の上で何か良い効果が生まれたりしますか?

他の人の仕事を引き継ぐことによって、「こんな非効率なやり方をしていたんだ」っていう発見がけっこうありますね。また、業務マニュアルが作られたことで人事異動の引き継ぎもスムーズになり、部長や経営陣も誰が何をしているのか把握できるようになりました。

日頃から誰かと仕事を共有しておくことも当たり前になっています。誰でも代わりを務められるとなると寂しい気もしますが、自分にしかできないことは「発想」の面で発揮すればいいわけで、日々の「作業」はどんどん共有していった方がいいと思います。

また、職場に休みやすい雰囲気が生まれて、山ごもりを年に2回するような人も出てきました。1カ月の育休を取った男性管理職もいます。山ごもりの1週間が1カ月になると思えば、そんなにたいしたことはないねという感じで。これまでに3人の男性が育休を取っています。

うちのようなITベンチャーは意欲の高い人が多くて、しばりがないと働きすぎてしまうんです。休みや残業のルールが厳しくなった当初は、もっと残業や休日出勤をしたいという声もありましたが、それよりも勉強やリフレッシュ、違う人脈づくりなどの時間にあててもらった方がいい。今はそういう雰囲気になりつつあります。

家族サービスで海外旅行、断食道場やアフリカ一人旅まで

――ちなみに、みなさんは山ごもり休暇をどんな風に過ごしているのでしょう。

安い時期に海外へ行けるので、結婚している人はハワイやグアムへ家族サービスに出かけたりして、すごく評判がいいみたいです。旅行に限らず、断食道場に行った、ずっと家にいたという人もいますよ。

休暇の内容は、後日スライドを使って全社員の前で5分間プレゼンすることになっています。今は社員数が増えたので、初めて山ごもりをする新入社員だけの発表になりましたが、以前は毎年全員が行っていました。休みの過ごし方には人柄が出るし、写真に家族が登場したりするので、見ている方もすごく楽しいです。

社内プレゼンの様子。長期休暇の過ごし方からその人の価値観や意外な一面を知ることができ、社員同士の交流のきっかけにもなっている

――ユニークな山ごもりの例はありますか?

たぶん私が一番ヘンだと思います(笑)。昨年は、アフリカのタンザニアにある電気も水道も通っていない村へ1人で行きました。彫刻師に弟子入りして、黒檀から精霊を彫り出すんです。言葉も通じないし、「世界ウルルン滞在記」のようでした。

ほかの会社で働いていたら絶対できなかった挑戦だと思うと、人生に一つ大きな価値が加わったような気がします。

タンザニアでは、言葉が通じない分、相手の表情や場の雰囲気から「相手が何を伝えたいのか」必死で考えたという桐生さん。コミュニケーションについて考える機会になったそう(写真提供:桐生明子さん)

――山ごもり休暇のような制度を他社が取り入れたいと考えたときに、気をつけるべき点があれば教えてください。

引き継ぎ書やマニュアルをちゃんと「作りきる」ことが大事じゃないでしょうか。やらない人が出ないよう、できあがったものをメールで流すようにして、完了チェックの項目を作っておけば進捗状況を管理者が確認することもできます。

あとは、会社としてやるんだという姿勢を見せること。うちの場合は役員の発案だったので、強制力をもって全社員が実行することができたと思います。

――ありがとうございました!