新卒一括採用から離脱した日本人は海外就職で成功できるか

総合新卒一括採用から離脱した日本人は海外就職で成功できるか

内定をとるためだけの、型にはまった就職活動はもう嫌だ! …だから日本を飛び出して海外に行ってしまおう!  そう考える人も少なくないかもしれません。しかし実際「海外就職」とは簡単に成功してしまうものなのか?  マレーシアを拠点を置き、海外情報にまつわる情報発信を行う『なでしこVoice』『ABROADERS』代表・濱田真里さんに、リアルな事情についてお話を伺いました。


◆「新卒採用システム」は日本独特の文化

海外で働く日本人の取材を始めて6年目になります。始めたきっかけは、就職活動をしていた時に「海外で働きたいけど、日本人女性がどんな風に仕事をしたり暮らしたりしているのか、全く情報がない」と思ったことでした。実際にカンボジアにまで行って就職活動をしたのですが、今の自分ができることはほとんどないということを実感し、帰国して日系企業に就職をしました。現在はアジア各国に拠点を置く日系人材会社で働きながら、アジアで働く日本人の情報発信をマレーシアから行っています。
私が海外で働き始めて改めて思ったのは、「新卒採用システム」は日本にしかない独特の文化だということ。日本では学部で学んだ自分の専門性と関係ない職種につくことはよくありますが、海外の場合は自分の職種と大学で学んだこととの関連性が求められる場合があります。また、海外ではすぐに即戦力になることが求められるので、「何ができるか」を伝えるために学生時代からインターンシップなどで職業経験を積みますが、日本では研修などを通して会社のなかで育てることが前提となっています。
私自身はこの新卒採用システムを使って最初の会社に入りました。時期を決めて学生を集め、採用活動をするというのは企業側にとって合理的な方法なのかもしれませんが、「ここで内定をもらわなければ後がない」という強迫観念に駆られて就職活動をした当時の私は、とても苦しんだのを覚えています。まるでそれ以外の将来の選択肢がないような気分でした。だからこそ、「新卒で大手企業に入ること以外に、働き方の選択肢はあるはずだ」という思いに至り、『なでしこVoice』を立ち上げることに繋がったのです。

◆戦略的にインターンシップを活用する

よく私は「新卒で海外就職をしたい」という日本人学生からのご相談を受けるのですが、正直、新卒の場合はビザを取得するのが難しく、また会社からも経験不足で即戦力と見なされにくいのでなかなか実現しないのが現状です。しかし、中にはそれを実現させた人たちもいます。今回は、アジアの中でも特にビザと内定を取ることが難しいと言われているシンガポールでの新卒就職を実現させた女性2名の例を挙げたいと思います。

まず、シンガポールで最も伝統のあるホテルの営業として採用されたOさん。彼女は学生時代に1年間南米に留学され、その後シンガポールのホテル関連の企業でインターンシップを経験し、ホテルとの関連業務をしていたことが評価されてシンガポール企業に内定をもらいました。このホテルでの日本人採用は初めてだったらしく、彼女の担当は日系企業への営業開拓。2年間勤めた後にシンガポールにアジア統括拠点を持つ、大手グローバルIT企業の営業として転職されました。
2人目のMさんは、海外就職を目指して戦略的にインターンシップをすることを決意し、大学時代に日本で2社、マレーシアで1社のインターンシップを経験。特に人材会社での経験を積み、そのことが評価されてシンガポールにある米国のマーケットリサーチ会社に就職。現在は彼女も転職をして、Oさんと同じ企業の営業として活躍中です。
ふたりに共通することは、「即戦力としてアピールできるような経験をインターンシップで積んだこと」「明確な目的を持って就職活動をしたこと」だと思います。私も大学時代にインターンシップを経験しましたが、彼女たちとは違ってその企業で働く人と話したり、実際にどんな業務内容なのかを知りたい、という目的意識が強く、インターンシップを通して「業務経験を積んでスキルアップする」とは考えていませんでした。しかし、彼女たちのように新卒で海外就職を実現させている人たちは、自分のキャリアをどう組み立てていくかを真剣に考え、前に進むために必要な「武器」を学生の時から揃えているのです。

◆自分に必要なスキルを見極める

なんとなく憧れだけで「海外で働いてみたい」と思っても、現実は厳しいもの。たとえば、日本人を大量採用するコールセンターなどで働く場合は「日本語が話せること」が必要条件なので、そのハードルは高くないかもしれません。ただ、本当に海外就職を自分のキャリアステップに繋げたいのであれば、自分の能力に対する客観的視点を持ち続け、何を身に付ければより自分に付加価値を付けられるかを考えながら、やることを選択していく必要があります。
この考え方は、新卒で海外に出てくる人だけではなく、社会人経験を経てから海外就職をする人にも当てはまるものです。「日本」という環境を出た瞬間、自分が戦う相手は「世界中の人」となり、一気に母数が広がります。私は海外で働き始めて、より「自分ができること」や「次のキャリアステップに向けて必要なスキル」について意識するようになりました。日本ではひとつの会社の中にずっと勤める終身雇用制度がベースの考え方になっていますが、海外では自分のスキルをベースにより良い条件の仕事を求めて転職をする傾向が強いため、こういった考え方をするのかもしれません。日本と海外では、日系企業と外資企業のどちらにオファーを出すかにもよりますが、就職活動で求められることも必要とされるスキルも変わってきます。日系企業であれば「日本人として」働くことを求められる場合が多いので、日本での職業経験を積んだ方が有利になることも。また、外資企業であれば働く国にもよりますが、ビジネスレベルの英語は必須だったり、自分の職種に対する深い専門スキルを求められたり。自分に今必要なものは何なのか、新卒、転職に関わらず、正しい情報を集めながら実現のために動いていくことが必要となるのではないでしょうか。