次世代型”クリティカルワーカー”を育てる〈後編〉 21世紀に求められる人材・能力とは?

総合次世代型”クリティカルワーカー”を育てる〈後編〉 21世紀に求められる人材・能力とは?

前編では、(株)ワークスアプリケーションズが実施する“能力発掘型インターンシップ”により、同社がクリティカルワーカーの原石を見いだし、同時に社会を支える次世代育成をも手がける姿を紹介した。後編では、いま求められる「21世紀型キャリア教育」について、さらに、これからの社会や組織で求められる能力や人材像について、引き続き人材開発室長の佐藤文亮さんに伺った。

自ら問いを立て、あるべき社会を考える

創造的な“人”にこそ価値がある

ワークスアプリケーションズが提供する大学生を対象にした基礎教養講座「パトスロゴス」は、新しい価値を創造するために必要な知識や教養の習得を目的とした全7回の講座だ。ロジカルシンキングやデザインシンキングなどの思考法、人類の発展の歴史、学問の存在価値、企業の存在意義などをテーマに、ディベートやディスカッションを通して主体的に学んでいく。

すでに国内の各大学で取り入れられ、名古屋大学や立教大学などでは単位認定講座として開講されている。

講師を務める佐藤さんが常に学生に伝えているのが、「主体的に学ぶためには、自ら問いを立てることが重要であり、出会う問いによって成長曲線が変わる」ということ。「私たちが生きる21世紀の日本には、明確な答えはおろか、参考にできるものすらない時代。

自分自身で“社会はこうあるべきという理想像”を描き、それが実現する製品やサービスを生み出していく必要がある。しかし、インターンシップを提供していて感じるのは、自分で理想を描ける学生が年々少なくなっているということ。

理想を描けないというのは、問題発見ができていないとも言い換えられるが、それは、もとより社会や周囲に対する関心が希薄になってしまっているから。そのため、彼らの日常の中にこそ、自分と社会を接続して考える機会が必要だ」というのが、佐藤さんの考えだ。

今ある仕事の多くは、遠くない未来に、AI(人工知能)をはじめとした機械に取って代わられると言われている。仕事がなくなることを危惧する前に、自ら仕事を創り出す力、ゼロから1を生み出す力を身につけた“人”を育てることが急務である。

それは、向き合うべき問いを自ら発見し、解決の道筋を考えることができる力を身につけた人で、そしてもちろん、自分自身がそのような人材になることが重要だと、佐藤さんは語る。

 

「イノベーションを起こしたければ、つまり、ゼロから新しい価値を創造したければ、常に自分を含む“人”の集合体である社会に関心を持ち、アイデアを生み出さなければなりません。そしてもう一つ、最新のテクノロジに強い関心を持たなければなりません。

産業革命時代であれば、電気や蒸気など自然界のエネルギーを利用するために、化学や工学、物理学などの学問領域が進歩して、新しい時代が切り拓かれてきました。そして、こうしたテクノロジを先んじて学び、製品やサービスに取り入れた国が、先進国として発展してきました」

「現代であれば、情報革命の真っ只中で、AIやIoT(Internet of Things)、AR(拡張現実)、VR(バーチャルリアリティ)など、人間の思考や五感、行動などと伍する技術が生まれてきています。それらに関心を持って、その本質と影響範囲をしっかり考えていくべきです。

新しい価値は、既存のルールや枠組みを破壊する最新テクノロジの掛け合わせによって生まれます。だからこそ、最新テクノロジと向き合い、どのような社会を創っていくべきかを、真面目に考えられる人を増やす必要があります。

私たちが提唱する“21世紀型キャリア教育”は、こうした新たな価値を創造するために、思考力や知識習得の必要性に気づく機会を提供するためのものなのです」

本を通して視野を広げ、

未知への想像力を養う

学生に限らず社会人にも、21世紀型キャリア教育の基本軸はあてはまる。仕事におけるアウトプットの質を高めるために具体的にできることとして、佐藤さんは「とにかくたくさん本を読むこと」を挙げる。

「すべてのアウトプットはインプットに依存しますから、まずはインプットを増やすことが重要です。書籍は過去の偉人の知の集積であり、そこには自分が知らない世界が広がっています。また、長期間同じ組織に属していると、そこでしか通用しないルールや凝り固まった価値観にいつしか染まってしまうものです。

それを打破して柔軟で豊かな発想力を手に入れるためには、外の世界に触れ、想像力を身につけることが必要です。あらゆるジャンルの本を読むことは、そのためにも非常に効果的です。

多様な価値観に触れ、自分とは異なるものや未知のものを知ることは、とても大切なことだと考えています」

人材開発のターゲットは高校生へ

次世代育成を本気で考える

次世代育成を視野に入れ、価値ある人材の発掘に力を入れるワークスアプリケーションズだが、近年、その対象は若年化している。人材開発・育成の一環として高校生を対象にしたワークショップやフェスを開催しており、優秀な生徒には大学生向けのインターンシップへの参加も呼びかけているのだ。

なかには、高校生にして「入社パス(※ワークスアプリケーションズへの入社権利)」を取得する強者も出てきているという。

「社会で価値を生み出すにはどうすればいいか、誰のため何のために働くのか、そういったことを高校生のうちから考えることで、仕事に対する意識も大学へ行く意味や目的も変わってきます。本気で次世代の人材育成を考えた結果です」

新しい価値を創り上げる

クリティカルワーカーを目指す

では、“次世代”に負けぬ人材になるためには、どのような能力を身につければいいのだろうか。佐藤さんは、これからの社会や組織で高い価値創出につながる能力として、次の4つのスキルを挙げる。

まずは、英語。いうまでもなく、世界にアクセスするためには英語力が不可欠だ。英語ができなければ、今後は海外だけでなく国内でも活躍のチャンスを逃がすことになるだろう。

次に、プログラミングの知識。2020年には、小中学校でも必修化される。プログラミングの知識がない人にとってはハードルが高く感じられるが、「専門知識というよりはツールの一つ。原理原則さえ学べばできることの幅がぐんと広がる。語学と同じ感覚で挑戦してみてほしい」と佐藤さんは述べる。

そして3つめは、人と人、場と人をつなぐ力。今後は、プロジェクト単位で人も場所も変わる働き方が予想される。そのような時代においては、自らがその掛け橋となるコーディネーター的な存在になることが重要だろうと言う。

そして最後が、デザイン思考。デザイン思考とは、社会や生活、習慣をより良い方向に変化させるため、プロダクトやシステムなどのキーコンセプトを設計する思考のこと。まさに、アイデアと最新テクノロジを掛け合わせて新しい価値を創造するのは、このデザイン思考の力だ。4つの能力の中で今後もっとも求められるスキルだと、佐藤さんは考えている。

「テクノロジが発展すれば、人が本来楽しいと感じる、自ら創造していく仕事の割合が増えていきます。繰り返しの労働から解放されることで、表現者やアーティストになれる。そんなワクワクできる時代がすぐそこまで来ているのです。

言われたことをやるだけの人材の価値は、ますます下がっていくでしょう。そのような仕事はAIやロボットに任せればいいのですから。次の時代への変化に怯まず、豊かな人生を過ごしていくために必要なのは、想像力を働かせて最適な知識を組み合わせ、無から有を生み出す力。

また、自ら問いを立て、そこに向き合い続ける力です。他人や社会に興味を持ち、年齢に関係なく新たなことを学び続けられる、自らの人生を主体的に生き抜くクリティカルワーカーこそが、5年後、10年後のより良い社会を創り上げていくのです」

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