総合女性初の官房長 どのように両立?
仕事を恐れず取りに行く

山田さんは、昭和59年(1984年)に旧郵政省に入省。情報通信分野の国際交渉や日本の技術の海外展開、それにインターネット上の消費者保護の法律立案など、幅広い分野でこれまで仕事をしてきました。
家庭では高校生の長男がいます。山田さんが長男を出産したのは入省14年目のときでした。仕事のキャリアはある程度積んでいたものの、子育てとの両立は自転車操業で、保育園やベビーシッターのほか、夫と交代で帰宅したりママ友に頼ったりと、ありとあらゆる手を使ったといいます。
Q.多忙な日々を過ごしていると思いますが、どんなスタンスで仕事に臨んでいますか。
A.仕事は本当におもしろいと感じますね。仕事で満足感や成功体験を得ると、気分的にも実際も次に続くんです。消費者保護に関する法案を作ったときには、何キロも痩せるくらい苦労しましたが、それが終わると次々に仕事が来るんですよ。
関連する仕事が降ってくることもあるし、自分から仕事を取りに行ったこともある。そうすると、仕事癖がつくというところがあって、どんどん経験が積めるようになる。ですから、仕事を恐れずに取りに行くことは必要だと思うんです。
Q.家庭のことを考えると、仕事をみずから取りに行くことには尻込みをしそうです。子育てが仕事の制約にはならなかったのでしょうか。
A.仕事を辞めようと思ったことは何回もありますよ。子どもが小学校に入ったとき、一度だけ「手作りのおやつが食べたい」と言い出したことがあったんですよ。「おっとっとー、これは」という感じでしたね。そのときは1日だけ休みを取って、おやつを作りました。
働くお母さんは、全部100%自分でやるってことは不可能だと思います。コーディネーターなんだと割り切って、これをするためにはこれを利用する、あれをするためにはあのサービスを使うというように、割り振っていくことになります。
しかし、そうやって準備しても思うようにならないこともありますので、危機管理上、最後の切り札が必要です。私の場合は、“おばあちゃんへのお願い”でしたが、最後の切り札ですから気軽には切れませんでしたね。

忙しいときは午前6時前に家を出ることもあるという山田さん。家事や育児についてはさまざまなサービスを利用しましたが、「食べることは生活であり文化だと思うので、料理はできるだけやるようにしてきました」と言います。
今でも毎朝、ニュースをチェックしながら子どものお弁当を作る日々です。こちらは、とある日のお弁当。添えられたキュウリのぬか漬けは自家製だそうです。
「女性初」は巡りあわせ

Q.山田さんはこれまでの経歴でも、「女性初」という紹介をされるようなポジションを多く経験してきました。「女性初」と言われることをどのように感じていますか。
A.巡りあわせだと思っています。私がそういう年齢で、たまたまウーマノミクスに注目が集まっていて、女性のやっていなかったところに仕事が割り当てられたからだと。私自身は本当にごく普通のおばちゃんなんですよ。こういう人でも、できるっていうことです。
Q.一方で、一般的には逆差別だという見られ方をしてしまうこともあります。
A.官民ともに女性の数を増やしていくことを実現するためには、多少は無理が必要だと思っています。それは逆差別ということではなく、職場に多様性をもたらすために必要な変革であるということです。
経験が十分でない人が配置された場合、その人はとても苦労するとは思いますが、その苦労が組織自体にとっても1つの経験になると思います。どのように人を効率的に育成するかという”学び”にもなりますから。
官房長として、これからは働きやすい職場、ワークライフバランスには力を入れてやっていきたいと思っています。女性にとって働きやすい職場は男性にとっても働きやすい職場なんです。
総務省の中でも最近、育児休業を検討する男性も出てきています。私も「行け!行け!」と言っているんですよ。育児休業に限らず、男性には日頃から「きちんと子育てに関わると、子どもとの信頼関係が築けるから将来お得ですよ」と話しているんです。
また、テレワーク(在宅などの勤務)も一部の人のものではなく、当たり前のようにみんながするものにしていきたいと考えています。自分としても、これまで周りにいろいろ迷惑をかけながら仕事をしてきたので、それをお返しするという意味もあります。
後輩に「波乱万丈を目指せ」と
Q.若い人たちにメッセージはありますか。
A.やりたいことがあれば、ためらわずやってみたほうがいいと思います。仕事もプライベートも、いろいろ計画してもなかなか思うようにいかないですから、それなら迷っているのはもったいない。後輩たちには「波乱万丈を目指せ」と言っています。

仕事は肩ひじ張らずに
きゃしゃな体に柔らかい雰囲気の山田さん。男女雇用機会均等法の施行前から働き続けてきた“キャリア官僚”という印象はありません。大変なことを大変と言わず、見せずに切り抜けてきた芯の強さ、しなやかさを随所に感じました。
私も3歳と1歳の2児の母と記者の仕事を両立しながら毎日を送っていますが、山田さんは「女性初」について、「仕事は結局、自分の幅でしかできないから肩ひじ張らずにやろうと思っています」と答えていたのが印象的でした。