就活生からの「内定辞退」は本当に合法なのか 知らないと損する就活生のための労働法

新卒就活生からの「内定辞退」は本当に合法なのか 知らないと損する就活生のための労働法

就活生にとって忙しい毎日が続いていることと思います。経団連の指針では正式な採用内定を10月1日以降としていますが、選考開始が6月1日のため、実際には内定、内々定が気になっていることでしょう。焦りは禁物ですが、とにかく体調を整え、ベストを尽くして頑張ってください。

そもそも採用内定とは、法律的にはどんな状態のことをいうのでしょうか?この点については最高裁昭和54年7月20日第二小法廷判決(大日本印刷事件)が有名です。この裁判では新卒の内定取消の適法性について争われましたが、最高裁は採用内定通知の時点ですでに労働契約が成立しており、一方的な内定取消は無効であると判示しました。

内定段階での労働契約は「始期付解約権留保付労働契約」です。新卒採用では卒業を条件に4月1日を始期として働き始めるのが一般的だからです。ただし、解約権が留保されているからといっても、企業の都合で勝手に内定取消ができるわけではありません。

重大事由がなければ内定取消はできない

最高裁は「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である」としています。

つまり、卒業できない、健康状態の著しい悪化、虚偽申告、犯罪行為など内定当時予測できなかった重大な理由がなければ内定取消はできないということになります。

よく内定と内々定の違いを聞かれますが、もし紛争が生じた場合は単なる言葉の問題ではなく実態はどうなのかということが問われます。経団連の指針が正式な内定を10月1日以降としているため、実態は内定と変わらないけれども、便宜上それ以前の内定を内々定と呼んでいる場合も多いようです。また、たとえ労働契約締結準備段階での内々定取消の場合でも、信義則違反として損害賠償請求が認められる可能性もあります。

一方、内定者からの辞退を企業が拒否することはできません。日本国憲法22条1項では「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と職業選択の自由を保障しています。新卒の就活で複数企業の内定を取得し、その中の一社を選択することは社会通念上認められているともいえます。

また、民法627条1項では「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と労働者側からの労働契約解約の自由が保障されています。

なお、民法627条1項は各当事者となっていますが、使用者側からの解雇については、労働基準法、労働契約法などが民法の修正を行っています。

しかし、土壇場での辞退は困りものです。実際には難しいと思いますが、内定辞退があまりにも信義則に反する場合は損害賠償の対象となりかねません。複数の内定を取得した場合、就職するつもりのない会社には早めに内定辞退の申し入れをすべきでしょう。何事もご縁を大切にすることで運も生まれてきます。誠実に対応することで、もしかしたら将来、ビジネス・チャンスが生まれるかもしれません。

内定中の研修に参加義務はない

内定中の研修は必ず出席しなければならないのでしょうか?内定関係における信義則から、必要最小限度の研修は肯定されるという見解も有力です。しかし本来、学生の本分は学業にあります。研修に追われ学業がおろそかになり、卒業できないようでは本末転倒です。

内定者には就労義務はなく、研修は学生生活に支障のない範囲で、参加は任意であるべきです。もし、業務命令の場合は研修であっても賃金が発生し、研修中のケガには労災保険が適用されなければなりません。

東京地裁平成17年1月28日判決(宣伝会議事件)では、「入社日前の研修等について同意しなかった内定者に対して、内定取消しはもちろん、不利益な取扱いをすることは許されず、また、一旦参加に同意した内定者が、学業への支障などといった合理的な理由に基づき、入社日前の研修等への参加を取りやめる旨申し出たときは、これを免除すべき信義則上の義務を負っていると解するのが相当である」と判示しています。

では最後に腕試し、下記の○×問題で復習してみましょう!
【質問】
1.採用内定の法的性格は確立されていない。
2.労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

 

次回は求人票と勤務条件について取り上げます。

【答】
1は×です。判例上「始期付解約権留保付労働契約」という考え方が確立されています。2は労働契約法3条4項の条文で、○です。