新卒いま“逆求人型”の就活が必要とされるワケ
2017年卒業予定の大学生(大学院生)を対象とした就職活動(就活)における企業へのエントリーが解禁されてから、もうすぐ1カ月が経過しようとしている。会社説明会に足を運ぶなど、学生も徐々に忙しくなってきた時期だと思う。

就活定番のイベントといえば、複数の企業が展示会場などに集まって事業説明やPRなどを行う合同企業説明会、いわゆるゴウセツだ。例年通り、今年も東京ビッグサイトや幕張メッセなどで開催されており、多くの学生が参加している。
ゴウセツに参加する理由は人それぞれだと思うが、その多くは、さまざまな企業のブースを見て回るなかで、自分が働きたいと思える企業を見つけ出すことにあるだろう。そこで興味ある企業を見つけたら、エントリーをして採用選考を受けていくのだ。
しかしいま、こうした従来の就活スタイルを変える新しい風も吹き始めている。それが“逆求人型”の就活だ。学生側が興味ある企業にエントリーをするのではなく、企業が興味ある学生に対してオファーをするというものだ。
ここ最近、「JOBRASS(ジョブラス)新卒」や「OfferBox(オファーボックス)」など逆求人型の就活サイトが増えてきた。2015年にジョブラスに登録した学生は約9万人、企業は約1000社にまで拡大している。ベンチャー企業から大手企業まで、さまざまな企業がこの逆求人型就活サイトを活用し始めている。
また、Web上だけでなく、リアルの場で企業と学生のマッチングを図る逆求人型の就活イベントも開催されている。その1つが、採用支援などを手掛けるジースタイラスが3月21日に第一ホテル両国(墨田区)で開催したITエンジニア向けの逆求人イベント「逆求人フェスティバル」だ。
本イベントでは、学生が企業に対して、在学中に作った成果物についてや、自身のスキル、入社後に取り組みたいことなどをプレゼンする。その後は、企業側も自社について説明するなどしてお互いに紹介し合う。
こうして企業は複数の学生のプレゼンを見て回り、学生とやりとりするなかで、興味をもった学生に選考オファーを出したり、ときにはその場で内定を出したりするのだ。イベント自体はマッチングの場を提供するものであり、その後のステップは企業に任せている。
いま、盛り上がりつつある逆求人型の就活――。それは、学生と企業のどんな課題を解決してくれるだろうか。10年以上前から全国で先駆けて逆求人型の就活イベントを展開してきたジースタイラスの担当者に話を聞いてみた。
●「企業ありき」から「学生ありき」へ
3月21日に開催された「逆求人フェスティバル」では、将来はエンジニアとして働きたいと考えている約40人の理系学生が参加。都内の大学に通う学生だけでなく、同志社大学(京都)、神戸大学(兵庫)、室蘭工業大学(北海道)など、全国各地の学生が参加した。
学生はどのような部分に魅力を感じてイベントに参加しているのだろうか。ジースタイラスで、就活アドバイザーとして多くの学生と接してきた及川直人氏は次のように答える。
「自分のスキルや研究分野を生かせる企業、自分を高く評価してくれる企業で働きたいというニーズが、特に理系の学生の間で高まっています。学生のPR(やりたいこと、スキル、経験)を聞き、興味を持ってくれた企業がその学生にオファーをするという逆求人型の就活なら、より効率的に学生が求めている企業と出会うことができます」(及川氏)
逆求人型の就活をする学生は、ある特定の企業に入りたいというよりも、自分のやりたいことができ、自分の実力をより発揮できる企業に入ることを就活の軸にしている。だからこそ「自分の考え、スキルを知ってもらった上でオファーをくれる企業」と出会える逆求人型は、就活の効率化にもつながり、大きな魅力となっているようだ。
「大学での研究が忙しく、就活をする時間はありません。逆求人型のイベントに参加したのは自分に合う企業と効率的に出会える可能性が高いと思ったからです」(東京大学、岩成竜哉さん)
近年、就活期間は長期化しており、学業に支障が出るなど問題視されている。従来型の就活では、受けたいと思う企業に対して自分からES(エントリーシート)や自己PR文をその都度作成したり、企業説明会に足を運ぶ必要があるなど内定を取るまでの負担が大きい。
例えば、逆求人型の就活サイトなら、自己PR文などは一度作成しておけば、あとは興味を持ってくれた企業からのオファーがくるのを待つだけ。逆求人型イベントでも、一度に複数の企業へ自己PRができるので、内定を取るまでの工数を圧倒的に減らすことができるのだ。
「企業が不特定多数の学生に対して情報を発信する合同企業説明会では、結局、会社説明のパンフレットに載っている程度の情報しか得られません。この逆求人イベントでは、こちらの考え方を知ってもらった上で企業と1対1で話ができるので新しい発見もあります」(神戸大学、入江凛さん)
また、自分が知っている企業、興味がある企業だけを申し込む従来型の就活とは違い『まさかこの企業から評価してもらうとは思っていなかった』という意外な出会いがあるのも、逆求人の大きな魅力だそうだ。
●多様な人材を求めている企業
今回のイベントへの参加企業は20社。業界はさまざまで、ベンチャー企業から大手企業まで集まった。学生にとってのメリットはよく分かったが、一方で、企業にはどのようなメリットがあるのか。
本イベントの運営責任者であり、10年以上にわたり逆求人型就活イベントの運営に携わってきた川中義卓氏によれば、中小やベンチャーなど、思うように人材を採用できない企業の場合は「学生と対面での接点を持つことで採用率を高められる」「採用コストを抑えられる」などのメリットがあるようだ。
では、比較的学生を集めやすい大企業の場合は、なぜ逆求人型の採用方法を取り入れるのだろうか。川中氏は「企業がより多様な人材を確保したいと考えるようになったため」だと捉えている。
「従来型の採用方法では、自社に興味を持ってエントリーしてくれた学生の中からしか選ぶことができませんでした。自社に興味、関心を持っていない学生に対しても積極的にアタックし、多様な人材を獲得しようと考えイベントに参加する企業が多くなっています」(川中氏)
近年、企業がより生産性を高めていくために、多様な人材を活用する「ダイバーシティ」という考え方がより重要視されている。環境の変化のスピードが早い現代社会では、多種多様なタイプの人材を社内に置かなければ、環境の変化への対応が難しくなると考えられているからだ。
従来型の採用方法では「自社に興味を持ってエントリーした学生」に限られた層(内側)の人材だけが集まることになる。自社や自社の業界に興味がない、存在も知らない層(外側)に対してもアプローチをして採用することで、より多様性を持たせたい考えがあるのだという。また、優秀な人材を見つけるという点においても、内側ではなく、外側にこそ多くいるはずという考えもあるそうだ。
「学生側と一緒で、新しい出会い、意外な出会いを企業も求めています」(同)
このように、学生側と企業側の双方にメリットがある逆求人型の就活スタイル。いま、本イベントを主催した同社だけでなく、さまざまな企業が逆求人型の事業に乗り出してきている。
川中氏は「同業他社が増えるのは大歓迎。今までのような『企業ありき』の就活だけでなく『学生ありき』の就活がもっと主流になってほしい」と語った。
採用する側も大変だが、就活をする学生はもっと大変である。前述したように、従来型の就活スタイルでは就活が長期化するなど、学生の負担は重い。「学生が企業を探す」のではなく「企業が学生を探す」という新しい就活の形は、その課題を解決してくれるはずだ。