いきなり年収2000万円!今アツい仕事の真実 グーグル、トヨタ…人材争奪は国境を越える

総合いきなり年収2000万円!今アツい仕事の真実 グーグル、トヨタ…人材争奪は国境を越える

「新卒を雇おうとすると、年収は最低でも2000万円。大手は3000万~4000万円で人材を引き入れている」

これはプロスポーツ選手の話ではない。今、企業同士がかつてない人材争奪戦を繰り広げている。震源地は米国シリコンバレー。「大手」とはネット企業のグーグルやフェイスブックだ。

人工知能やロボットのエンジニアが不足

いわゆる「プロ経営者」のヘッドハンティングでもない。現場で働くエンジニアの採用の話である。それも、人工知能(AI)やロボットの分野だ。企業はのどから手が出るほど欲しい一方で、最先端の研究に携わる人材は大学院の博士課程に属しているか、まだ卒業して間もないというケースばかり。需要に比して供給が圧倒的に足りていない。未経験の新卒でさえ給料が“爆騰”する理由はここにある。

冒頭の衝撃的な数字を教えてくれたのは、AI開発を手掛けるベンチャー、プリファードネットワークス(PFN、本社・東京都)で最高戦略責任者を務める長谷川順一氏だ。そもそもAIの研究開発で最先端を行く人材が、日本にはまだほとんどいない。最新のAI技術は世に出てからまだ日が浅いためだ。

「われわれも世界中からかき集めており、(一般的な日本企業よりも)給料は上げてきた」(長谷川氏)。それでも最近、内定寸前だった米国の転職希望者は現地のベンチャーを最終的に選んだ。決め手は待遇だったとみられる。

日本企業は危機感を募らせている。人材大手リクルートキャリアによれば、同社に寄せられた求人のうちAI関連のもの(「AI」や「人工知能」というキーワードが含まれる求人)は、2012年は年間の件数が1ケタだったが、14年には3ケタに急増、15年には約200件に達しているという。人材へのニーズは高まる一方だ。週刊東洋経済は2月20日号(15日発売)の特集『給料が上がる仕事 下がる仕事』でその最前線を追っている。

その筆頭が自動車業界である。2010年にグーグルが自動運転車の開発を公表して以降、「自動運転」は自動車メーカーとして研究開発の避けられない分野となった。ここでAIはカギとなる。トヨタ自動車は米国の有力研究者たちの囲い込みに成功し、AIの研究所の設立にこぎ着けた。

日進月歩で進む技術革新に対応するには即戦力が必要

自動車メーカーのエンジニアは大半が機械系を専門とする。エンジンが開発の中心を担ってきたことが大きい。だが今後はソフトウエア系が中心になる。「AIのアルゴリズムを車に組み込むための高度なプログラミングをできる人が求められている」(人材企業関係者)。日進月歩で進む技術革新に追いついて行くには、即戦力となる人材を引き込むのが急務なのだ。

実はそんなトヨタをはじめとして、パナソニック、NTT、ファナックという日本を代表する大企業4社が資本・業務提携を結ぶのが、前出のプリファードネットワークス(PFN)だ。社員数約30人、創業からわずか1年強の会社にこれだけの企業が群がるのは異例のこと。「人材がいない」。同社を訪れる企業の担当者は異口同音にそう嘆く。それだけAI開発の人的資源を求めている。

PFNが求めるのは、研究と事業を両立できる人だ。つねに論文に目を通して最新の研究成果に目を配りつつ、プログラムも組みながら事業を進めなければならない。「大企業では研究所の成果が事業につながるまで非常に時間がかかる。われわれはとにかくスピード重視だ」(長谷川氏)。そんな姿勢も企業を惹きつけるのだろう。

「モノのインターネット(IoT)」や「フィンテック」といったバズワード(はやり言葉)に象徴されるとおり、AIに限らず、今やIT(情報技術)なしにはあらゆる産業が成り立たなくなっている。

つまり、これまでIT業界の中で起こってきた急速な構造変化が、伝統的な大企業をも巻き込んでいくということだ。その意味で人材獲得は企業の勝敗を決めるといえる。法外な給料と引き替えに、エンジニアたちが会社の未来をずっしりと背負っているということだ。