メーカーは「文系女子」を採用したがっている キリン、アルプス電気で活躍する女性たち

女性雇用メーカーは「文系女子」を採用したがっている キリン、アルプス電気で活躍する女性たち

「メーカーは理系学生が入社する会社」「文系が入社してもおもしろい仕事をさせてもらえない」などと話す就活生が多いことに驚きます。特に文系女子の場合、「メーカーは絶対無理」と最初から諦めている就活生もいます。多くの文系女子はメーカーに縁がないと決めつけているようです。

しかし、これは全くの誤解。メーカー側からすると、「理系だけでなく、文系女子にも入社してほしい」と願っています。市場変革を迎えている今は、人材の多様性が企業の生き残りには必須。女性の力はメーカーになくてはならない存在なのです。
そこで、今回はキリンホールディングスとアルプス電気という就活生が知っている有名メーカー2社の事例から、文系女子のメーカーでの活躍ぶりを紹介します。

文理の隔てなく全学部対象に採用

キリンHDは日本を代表する酒造メーカーです。2015年3月末の従業員数6712人のうち、女子は1446人で女性比率は22%を占めています。2015年4月入社の社員に絞れば、全83人のうち女子は36人。文系女子だけでも25人が入社しました。

同社は全学部全学科が採用対象で、文・理別の採用枠を設けていません。出身学部に関係なく活躍の場が用意されていて、理系出身者がマーケティングを担当することもあれば、文系出身者が商品開発に深く携わることも珍しくありません。

マーケティング部商品開発研究所に勤務する吉野桜子さんは、東京大学の文学部で社会心理学を学び、2006年に入社しました。仲間とともに演劇サークルを立ち上げて脚本を担当するなど、充実したキャンパスライフを過ごしたとのことです。

「専攻以外の授業にも積極的に顔を出していました。マーケティングの講義で『キリン氷結』の開発担当者のレクチャーを聴く機会があり、その内容に感銘を受けてキリンを志望しました」(吉野さん)。

入社後、まず工場に半年間配属され、品質管理や製造工程などについて、徹底的に学びました。研修期間中に「作り方次第で数え切れないほどの種類ができる、無限の可能性があると知り、商品開発の仕事に魅力を覚えました」(同)。

続いて約2カ月間の営業研修があり、その後は営業部門に配属されました。千葉県船橋エリアでスーパーなどの取引先に通って、販売スペースの確保や新商品のセールスをしました。

2007年10月に現在のマーケティング部商品開発研究所に配属されました。希望していた商品開発に就くことができたのです。これまでに、カクテル全般やビールの開発に携わり、『ハードシードル』『ツードッグス カクテル』『グランドキリン』など、計7種類のブランドを世に送り出したとのことです。

「新商品のコンセプトやテーマを考えるのが主な仕事内容です。それを、技術系の方やデザイナーに形にしてもらいますが、学生時代の演劇で培った『伝える』というスキルが、思いのほか役に立っています」(吉野さん)。

文系社員は「まとめ役」に

文系出身だからといって開発に関われないわけではなく、まとめ役として開発チームに参加することが多いようです。「コンセプトを具体化したり、消費者にわかりやすく伝えたりするのは、私たちの役割です。技術者とは異なる視点でアドバイスできるのも強みだと考えています」(同)。

吉野さんのチャレンジはとどまるところを知らない。現在は、キリン子会社でクラフトビールを製造・販売する「スプリングバレーブルワリー」の設立にも関わり、代官山と横浜で醸造所併設の飲食店を展開する同社のマーケティングマネージャーも兼務しています。

「社員同士で『ビールで面白いことをしたい』などと雑談していたら、『クラフトビールの会社を作って、ビールの大聖堂を開こう』と話が広がり、社長に直談判したところ、ゴーサインが出ました」(吉野さん)。

近年、ビール市場は厳しい状況にさらされていますが、クラフトビールで打破したいというのが、吉野さんの目標です。新商品の開発にも積極的にアプローチしていて、6種類の定番フレーバー以外に、季節・催事に合せた40種類程度の期間限定フレーバーを展開予定です。

最後に文系就活女子にアドバイスをいただきました。

「酒造メーカーの主役は技術者や男性だと思われがちですが、女性が加わることで、新たなアイデアが生まれることもあります。実際、キリンビールの商品開発チームの半数近くは女性です。女性が活躍しにくいイメージのある職場の方が、女性にとってチャンスが多いこともあります」(同)。

また、人事部採用担当の高野友理香さんも、次のようにエールを送ってくれました。「時代とともに多様化するお客様の嗜好やニーズに対して、期待を超える商品をお届けすることでこたえていきたいと思っています。そのためには男女の垣根はなく、幅広い業務を経験するなかで、多くのことを学び活躍していただくことを期待しています。自らの範囲を狭めず、様々なものごとに興味・関心を持ってください」。

日本製品を広めたい

一方、アルプス電気は大手電子部品メーカーです。子会社で製造しているカーナビが人気商品ということもあり、就活生でも社名を知っている方も多いかと思います。

2015年3月末の従業員数5323人のうち女子従業員は1226人で女性比率は23%。キリン同様に女性比率は高くありません。2015年4月の新卒入社は45人で、うち女子は19人。文系女子は9人でした。

2012年に入社以来、営業職として活躍するのが、営業本部に所属する、中村梨乃さん。学生時代は商学部でマーケティングを専攻しました。

現在は、海外スマホ向け電子部品の試作イベントの管理や、顧客と工場の間に入り量産までの立ち上げをサポートしています。

中村さんがメーカーを選んだのは、学生時代の経験が影響しています。「南米やアジアなど、バックパッカーとしていろいろな国を回ったのですが、現地で日本人だというと、家電や車を指し『日本の製品は質が高い』とほめてくれるのです。とても誇らしく、海外に日本製品を広めることができるメーカーへ就職したいと思いました」(中村さん)。

中村さんは、多くの分野に向けて製品を供給する部品メーカーを中心に就職活動し、グローバル展開が進むアルプス電気に入社しました。「海外営業で活躍したいという希望を受けとめていただいたことが入社の決め手です」。

同社の人事部人材開発グループの内山光美マネージャーによると、「面接時に職種希望を一旦確認したうえで、入社後に社内研修や職種説明会を実施、その後に配属面接を行い最初の部署を決定します」とのこと。

同社では3~5年間を目安に幅広く実務経験を積む「育成型ローテーション」を実施していて、10年で2~3の部門または職種を経験することが多いようです。

新入社員教育の一環として、モノ作りの現場を体験する製造実習があり、中村さんは5カ月間、スマホ向けカメラ部品の製造に携わりました。「現場に接することで、営業と開発や設計、生産管理との関わりをイメージすることができ、大きな収穫となりました」(中村さん)

聞いて回ってスキルアップ

営業職の醍醐味を尋ねたところ「いろいろな部署の方と関わることができ、単に製品を売るだけではなく、調整役やパイプ役になれるところ」と中村さん。当初は、専門用語が飛び交う現場に驚いたそうですが、とにかく聞いて回り、スキルを高めていったとのことです。

「今後の目標は海外勤務。異文化に触れることで視野を広げつつ、自社製品を広めていきたいです」。アルプス電気では海外勤務に男女の隔てはなく、これまでも数名の女性社員が、北米や中国、マレーシアなどで活躍。中村さんの目標も近い未来に実現するかもしれません。

最後に、メーカーへの就職をためらう文系女子学生にメッセージをいただきました。「性別や学部は関係ありません。興味があるなら、まずは扉を叩くこと。面接では、やる気をぶつけてください」(中村さん)。

内山マネージャーからは、「就活にあたり、業界や職種の間口を自分から狭くするのは、もったいなことです。アルプス電気では、性別や文理の違いは関係ありません。国内・海外問わず、様々な活躍の場があるので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。やりたいことがあるなら、思いを受け止めてくれる会社を見極めること。意思あるところに道は拓けます」とのことです。