時給5000円の求人も 派遣技術者の争奪戦が過熱

総合時給5000円の求人も 派遣技術者の争奪戦が過熱

有効求人倍率が1倍を超え、人手不足が叫ばれるなかで派遣社員の人材争奪戦が起きている。特に引く手あまたの技術者は時給5000円の求人まで出てきた。高時給な求人が相次ぐ現状からは開発・生産体制を強化したい企業が技術者を奪い合う構図が透けて見える。

中途採用は激しい人材争奪戦になりつつある(インテリジェンスが開催した転職フェア、2015年10月)

中途採用は激しい人材争奪戦になりつつある(インテリジェンスが開催した転職フェア、2015年10月)

 

■高時給ほど高度な技量が求められる

「就業祝い1万円」「1カ月フル出勤で特別手当を加算」――。大手求人サイトを見ると様々な特典がついた求人が目につく。特にIT(情報技術)職のシステムエンジニア(SE)やネットワークエンジニアなどを求める求人が多い。派遣社員の時給はこれまで交通費込みの時給が普通だったが、今では「交通費別途支給」も増えている。もちろん時給も高い。5000円の求人はスキルに加えてビジネスレベルの英語も必要など、高時給なものは相応の高度な技量が求められる場合も多いが、例えば3000円の時給であれば、1日8時間で月に22日働くとすると月給は実に52万8000円になる。そのうえ残業代も支給される。一定の技術力を持っている人の中には「給与レベルが変わらなければ正社員よりしがらみの少ない派遣の形態を好む人も少なくない」(エン・ジャパン)。

背景には、IT各社のシステム開発やメーカーの技術・製品の開発が旺盛なことがある。IT業界ではマイナンバー制度導入やIoT(モノのインターネット化)の関連でシステム開発の発注が多く、プログラマーやSEなどが求められている。業績が好調な自動車業界などを中心に電気・機械系の人材の需要も高まっている。

技術者不足を裏付けるデータは多い。求人情報大手のリクルートジョブズによると、2015年12月のIT・技術職の派遣社員の募集時平均時給は2027円と前年同月に比べて2.3%上昇した。2年前と比べると7.2%上がった。例えばSE(2414円)は前年同月比4.1%高い。

厚生労働省によると、求職者1人に対して正社員の求人が何件あるかを示す有効求人倍率は15年11月時点で、ITエンジニアなど「情報処理・通信技術者」が2.23倍、開発技術者が1.95倍などと高水準が続く。正社員の技術者に特化した転職サービス会社のメイテックネクスト(東京・千代田)に寄せられる求人は15年10月に1万件を突破。金融危機直後の08年の4倍以上に膨らんだ。同社は「プロジェクト内容によって年齢要件を緩和する動きが出てきており、採用年齢も少しずつ上昇している」と話す。

即戦力の採用が厳しい以上、時間はかかるが新卒者を採用し育成していく必要性が高まっている。しかし実際は難しい。各社が採用を増やしており、今年3月卒業予定の大学生の就職内定率(15年12月1日時点)は金融危機で新卒採用が冷え込む前の水準に回復した。スケジュール変更の影響もあって採用に苦戦する企業が続出。とりわけIT業界は労働環境を懸念して学生がなかなか集まらない。

「15年夏に5人の内定を出したが全員に辞退された。例年より明らかに厳しい」。東京都内のソフトウエア開発会社の人事担当者の表情は険しい。その後、秋に追加で内定を出して1人確保したが、15年卒も7人と前年に比べ半分に減った。「中小は知名度が低いし来てもらえない。残業が多いイメージも足を引っ張っている」と漏らす。

 

 

■カードゲームで働き方を知ってもらう

自社で正社員として雇用する技術者を企業に派遣する技術者派遣会社にも苦悩がある。ある大手の担当者は「技術系を専攻した学生はメーカーに行きたがる。内定を出しても『派遣』という言葉だけで親が反対して辞退する場合も多い」と明かす。金融危機直後の雇い止めの印象が強く、一般の派遣と同一視されるという。

一方で、志望者の減少を食い止めようとする会社もまた多い。東京に本社を置く別のシステム開発会社は1カ所だった地方支社を新たに2カ所設立した。「内定を早めに出しても辞退者が出た。例年に比べ苦戦した」(担当者)というが、地元で勤務したい地方の学生を取り込むことができたため内定者の減少は前年比1割にとどまったという。

技術者派遣最大手のメイテックは14年から、理系の大学生に対し「派遣技術者」という働き方を浸透させるためインターンシップを始めた。様々な企業の開発現場などで働きながらスキルを積んでいくという働き方を疑似体験できるカードゲームを自社で制作。学生に遊びながら派遣技術者について知ってもらう。狙いは「『就社』よりも『就職』ということを訴える」(同社)ことだという。実際に参加した青山学院大学の男子学生(21)は「メーカーの技術者になりたいと思っていたが、いろいろな場所で働けるのは利点だと感じた」と満足げに話していた。

人手不足は今後も続く。一歩一歩、地道な取り組みをしていくしかないようだ。