グーグルの面接、驚愕の採用基準とは?「この会社しかない」は正しいのか?

総合グーグルの面接、驚愕の採用基準とは?「この会社しかない」は正しいのか?

「戦後70年」の2015年も終わり、21世紀に入って、はや15年が過ぎた。かつての「高度成長」「終身雇用制度」といった言葉は遺物と化し、もはや「大企業だから安心」という時代は終わったといえる。

 一方で、ブロガーやユーチューバーといった、数年前までは存在すらしていなかった職種も生まれ始めている。また、AI人工知能)の進化により、10~20年後には、日本の労働人口の約49%がロボットなどで代替される可能性もあるという。

そんな時代に、これからのビジネスパーソンに必要な心構えや働き方はなんなのか。15年11月に『仕事のエッセンス「はたらく」ことで自由になる』(毎日新聞出版)を上梓した、東進ハイスクール講師の西きょうじ氏に、

・激変の時代をサヴァイブする方法
・組織が求める「個」の大切さ
・「仕事」や「働く」ということの意味

などについて、話を聞いた。

「ひとつの会社でひとつの仕事」は危険!

–何事においても移り変わりの激しい時代ですが、いま「仕事人」たちは、どんな境遇に置かれているのでしょうか。

西きょうじ氏(以下、西) 一言で言えば、それまでやってきた自分の仕事や既存の枠組みが、さまざまな外的要因によって脅かされる時代になったと思います。それは、ロボット・AIの進化に限らず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)やテロ・戦争の脅威など、政治経済的要因も含みます。

変化が訪れた時、人は「いま、どうしようか?」と思うわけですが、私はまず「いま、ここ」から一度離れて思考することを勧めます。「いま」という時間軸と「ここ」という空間軸から離れる、つまり「自分」から離れて外部性を持つ。そして、「いま、自分がどこにいて、外には何があるか」を確認することで、次の可能性を見いだすことが必要だと思います。

 

–空間的な外部性として、本書では、いわゆるパラレルキャリアを推奨していますね。

 

西 いまは副業を容認する会社も増えてきましたが、複数の仕事を持つことはリスクヘッジにもなります。ひとつの組織だけに帰属することのリスクを回避できるからです。ひとつの会社だけに収入を依存していたら、その会社がつぶれたら立ち行かなくなってしまいます。外にも人間関係をつくることで、息苦しさや悩みが緩和されることもあるでしょう。

また、外部的視点を持つことができるため、それまでの仕事や自分の境遇に対する見方が変わり、「いま、ここ」を見直すきっかけにもなります。ほかの仕事を経験することで、「うちの会社、意外と良心的だったんじゃないか?」「私は恵まれていたほうだったのかもしれない」などという気づきを得られるかもしれません。

本書では、その具体例について多く触れていますが、例えばエンファクトリーというIT関連会社では「専業禁止」をうたっているし、社会起業家の慎泰俊氏が理事を務めるLiving in PeaceというNPO法人では、専従職員を持たず、メンバーは全員本業を持ちながら、平日夜や週末に、マイクロファイナンスや児童支援の活動をしています。

隣のデスクにコンピュータが来たら「あきらめる」

 
–時間的な外部性としては、どんな方法があるのでしょうか?

西 例えば、ある日、隣のデスクに超優秀なコンピュータがやってきて、「これから、君の仕事は全部こいつがやってくれる」となったら、どうしますか? 多くの人は、あがいて、目先の解決策をひねり出して「延命処置」をすると思います。しかし、いくらいまのスキルを向上させても、もはやそのコンピュータにはかなわないでしょう。それが時代の変化というものです。

だから、私は「あきらめる」というのが一番いい方法だと思います。「いま、ここ」を基準に思考するから、無駄で不毛な延命策しか思いつかないのです。そこから3歩も4歩も下がり、原点に立ち戻ってから、「じゃあ、どこに可能性を見いだしていくか」を考えたほうがいいと思います。

そうすると、「自分のこの作業は、なんの役に立っているのか」「この取引が成立するのは、なぜなのか」「この仕事によって、どこにお金が回り、誰の利益になるのか」「そもそも、この仕事はなぜあるのか」ということについて、思いを巡らすことになると思います。

–普段、習慣的に目の前の仕事を片付けていると、なかなかそこまで深く思考することはできません。

西 それも当然だと思いますが、「いま、ここ」の絶対性に閉じ込められてしまい、外の世界に広がっているはずの多様性に気づかないというリスクは、想像以上に大きいと思います。

例えば、ブラック企業で疲弊している人が「この会社しかない」「この仕事しかない」という思いで、つらい毎日を送っている。しかし、本当に「その会社(仕事)しかない」のでしょうか?

そんな時、自分と距離を置くことで、次の可能性を見いだすことができるかもしれません。「いま、ここ」からの解放によって、逆説的に自分の立ち位置、つまり自分の「いま、ここ」ですね、それがはっきりしてくるということです。

逆に、「いま、ここ」だけを見て、逃げ道を見いだそうとしたり、その場しのぎでやり過ごそうとしても、なんの解決にもなりません。

「分業」は社会人の特権

 
–本書では、「個」が重視される時代についても触れています。

西 個の力だけではなく、他と協働できる個の力も大切です。先ほどの「コンピュータが来たら、あきらめる」という話もそうですが、「自分にできないことは、ほかの誰かにやってもらう」というスタンスが重要です。

例えば、「全部自分でやらなきゃ」というのが学生時代。「数学は苦手だから、代わりにテストを受けておいて」なんてことはできませんが、社会人であれば「自分ができないことを人にやってもらい、その人ができないことを自分がやる」という分業ができます。当たり前ですが、そのために無数の会社があり、会社の中でも多くの部署に分かれているわけです。結果的に自分を含めた全体としての生産性が上がればいいのです。

それには、仕事を人に任せ、また人から自分に仕事を任せられるだけの「人間力」が必要になってきます。これは「人を信頼する力と、人に信頼される力」と言い換えてもいいかもしれません。

グーグルでは、採用面接の最後に「エアポートテスト」というのを行います。これは、面接官が「空港で飛行機が欠航になり、近隣のホテルもいっぱい」という状況を想定して、「この人(求職者)と空港で一晩一緒に過ごすことになっても、耐えられるか」と自問自答するものです。そして、「朝まで一緒にいられそうだ」と思えば、採用に至るわけです。

つまり、「多くの知識や高いスキルを持っていることも大事だが、企業側は、より性格のいい人を雇おうとしている」ということです。いまの時代、知識やスキルは、必要に応じていくらでもアウトソーシングできます。だからこそ、「共に働きたい」と思える人を採用するわけです。求職者の側からすれば、「共に働きたい」と思ってもらえる人間であることが、何より重要です。

また、テスラモーターズ会長兼CEOのイーロン・マスク氏は、以下のようなことに焦点を当てることが大切だと説いています。

「企業への貢献において鍵となるのは、人柄であり、周囲の人たちに与えられる影響です。人格を重視すること、その人が善い人物なのか、一緒に働きたいと周りの人が思うか」

–スキルよりも人間性が重視されるということですね。そして、その根底には、「仕事は1人ではできないから、任せたり、任せられたりする。その時に、いい関係性を醸成できるかどうか」という考えがあるということでしょうか。

西 そもそも、誰も全能ではないから「仕事」が生まれたわけです。「すべてを1人ではできないから、誰かがパンを焼いてくれないかな。誰かが道路を掃除してくれないかな」というところから、道を掃く人ができて、パンを焼いて売る人が現れて……。

仕事とは、自分と社会を持続的に接続するものであり、積極的に選択できるものであり、本来は自他共に幸福感を得られるものです。いまの働き方に疑問を感じていたり、仕事を変えることを考えている人は、「なぜ働くのか」「働くとはどういうことか」という原点に立ち返って考えてみることをおすすめします。

–ありがとうございました。