総合職長・役員級の人材を採用する際の注意点
企業のリーダークラスや役員クラスの中途採用が一般化
ひとつの企業に骨を埋める終身雇用は過去のものとなり、転職そして中途採用は一般的な企業経営の検討事項となりました。中でも、自社に不足しているキャリアを補うために企業組織のリーダークラスや、役員クラスの中途採用を行うことはもはや一般的になってきました。
そこで重要なキーパーソンである中途採用者を社会から発見するためによく利用されるのが、人材紹介会社(有料職業紹介事業者)です。彼らは豊富な社会人経験をもつ企業に合致した候補者を多数抱えていますから、企業に合致した人材を紹介してくれる可能性が高くなり、採用の成功率が高まります。
しかし、人材紹介会社も人の集団であり、こちらの中途採用の意図を的確に伝えないと、採用の成功率が極めて低くなります。それはまるで、銀行融資を受ける際に融資を受けたいといっている金銭の使用目的をはっきり説明できないのと同じです。これでは、融資は到底受けられないことになる。言い換えると、良い人材を紹介してもらえないということになります。
こちらの希望を的確に伝えるための「5W1H」
ではどうしたら、人材紹介会社に対して、自社の求人をアピールし、的確に条件を伝えることができるのでしょうか。そこで役に立つのが、5W1Hです。
英語の時間に習った5W1Hは以下の通りです。「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」と称されますが、実は、これが人材紹介会社に求人を伝える際に重要な要素を全て網羅しているのです。
- いつ(When)=いつまでにそのポジションに人材が必要なのか。
- 採用期限を明確にする必要があります。新組織なら立ち上げ前、既存組織なら前任の退職までといったいろいろなケースがあるでしょう。長い目で良い候補者が現れるまで求人を続けるつもりなのか、短期間に多数の紹介を受けて一気に決めてしまうのかによって、人材紹介会社の対応は自ずと変化します。
- どこで(Where)=どのポジションに人材が必要なのか、新組織の組織長なのか、既存組織の一員からスタートするのかなどを明確に伝えます。
- 社会人経験は長いが、専門経験の浅い人間を採用する場合は主任からスタート、どちらも豊富の場合は課長からスタートなど、組織ピラミッドのどの位置からスタートするのかを明確にしておいた方が、人材紹介会社も候補者の経験とマッチングがしやすくなります。
- だれが(Who)=だれが採用の決定権者なのか、それぞれの面接での面接担当はだれなのかをも明確にしておく必要があります。
- 面接◯回と漠然と伝えるのではなく、「◯◯面接は◯◯が担当します。◯◯は~」と面接担当の人物紹介もしておくと、人材紹介会社も候補者に面接概要を伝えやすくなり、応募者も面接のイメージがつきやすくなります。
- なにを(What)=どのような経験の人材を採用したいのかを明確に伝える必要があります。
- この要素は最重要要素であり、根幹をなす伝達事項です。この経験◯年以上と数値的な要素だけでなく、採用にあたって必須の経験をかならず伝え、できればあったほうがよい経験などと区別して、人材紹介会社が「◯◯のような人を採用したがっている」とイメージがつかめるまで、何度も説明すべきでしょう。この説明が欠けていると、「なんだかよくわからない求人」として処理されてしまいます。
- なぜ(Why)=採用するに至った求人背景を明確に伝えることも大切です。
- なぜ中途採用するのか、既存組織ではなぜその人材がいないのか、(新組織の場合)新組織の長が会社に慣れていない中途採用者で問題ないのか。既存の人材の理解は得られているのかなど、受け入れ体制も説明しておくと、人材紹介会社が人材を紹介する必要があるのかを安心して理解しやすくなります。
- どのように(How)=「どのように」は「待遇」と意訳します。
- 年収はどの程度を想定しているのか、休日はいつなのかなどを伝えます。待遇は人材紹介会社も候補者も特に気になる要素ですから、齟齬のないように正確に伝えます。
以上のように、人材紹介会社の対応は注意点が多いですが、要点をしっかり押さえておけば、まったく問題はありません。要は人材紹介会社にこちら側の欲しい求人をしっかり理解して動いてもらうこと。そのために必要な情報をしっかり伝えることが肝要です。
内定時に自然な前職調査をする方法
さて、人材紹介会社の対応も終着点に達するのが、採用内定時です。特に注意したいのは、やはり幹部クラスを採用するのですから、入社後に「しまった」ということがないように、「採用内定前」に前職以前の勤務状況に問題が無いか、経歴に詐称がないか、犯罪歴がないかなどは厳しくチェックしたいところです。
しかし個人情報保護の観点から、信用調査会社(興信所)などからの情報取得は避けたいところです。間違いがあった場合に責任をとってくれるところがありません。そこで、候補者個人にこう伝えるのがベターでしょう。「採用にあたって、前職に形式的な勤務状況の確認をするが問題ないか?」と本人の同意をとってしまうのです。そうすれば、後ろめたい気持ちにならずに本人同意の前職調査が可能になります。
また経歴詐称・前科については、採用時の労働契約書をうまく活用し、経歴詐称や職務に影響する犯罪歴があった場合は、解雇することに同意するといった書面を交わしておくのもひとつの予防手段になります。実際にそれで解雇できるかどうかは争いになりますが、ひとつのお守りになることは間違いありません。
以上のように中途採用はいろいろなハードルがありますが、良い人材を採用するには必須の過程と考えていきましょう。