女性雇用5年後、日本は女の「名ばかり管理職」だらけ? 酒井穣×太田彩子、2020年「働き方のリアル」
営業部女子たちから日々、「今までの売り方では通用せず、将来がまったく見えない」「昨日まで売れていた商品が急に売れなくなった」といったお悩みが寄せられる昨今。これからのキャリアを、どんなふうに展望していけばよいのでしょう……。
太田彩子(以下、太田):酒井さんのご著書は、初めて会う前からずっと読ませていただいていました。『はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、今いる会社の社内研修でも使わせいただいたくらいで、個人的には憧れの作家さんです。
酒井穣(以下、酒井):いやいや。でも、ありがとうございます。
誰もコントロールできない「問題」に悩まなくていい
太田:もちろん最新作の『ビジネスパーソンの父が子どもたちに伝えたい21世紀の生き方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も読ませていただきました。子育てに悩む親だけじゃなく、自分の将来に漠然とした不安を持つビジネスパーソンにも響く内容だと思います。
この本にも書かれているように、日々、ビジネスや社会のルールはめまぐるしく変わっています。私が主宰する営業部女子課でも、「今までの売り方では通用せず、将来がまったく見えない」「昨日まで売れていた商品が急に売れなくなった」といった不安や悩みを聞きます。これに苦しむ女性が多くいるのですが、どうしたらいいでしょうか?
酒井:僕はそういった不安は解消しなくてもいいと思っています。だって、僕も太田さんも数年先のことなんて予想できないじゃないですか。この対談の後に、何か事故や災害に巻き込まれるかもしれない。でも、そういう悩みは、自分でコントロールできない性質のものです。だから、そこまで怖がらなくてもいいと思います。
悩むよりは、自分やまわりの人が持つ不安を理解して、その不安に共感を示すところまでが、まず重要だと思います。自分が不安なら、自分のことはともかく、同じ不安を感じている他者のことをケアするということです。
太田:マイナスを逆手にとるのですね。
酒井:太田さんが今やられている営業部女子課も一つの例ですよ。誰もモデルケースがいない状況だから、漠然とした不安に悩まされるわけです。だから、太田さんを中心にして女性同士がサポートし合えるネットワークが求められているし、実際に全国に広がっている。
太田:なるほど……。今まで気づいていませんでしたが、確かに酒井さんの言うとおりかもしれません。
酒井:でも、うがった見方をすれば、営業部女子課の活動が広がっているということは、まだまだ働く女性の悩みは解決されていないということなんですよね。
太田:そうですね。今年の8月末に「女性活躍推進法」が成立したじゃないですか。国を挙げての女性活用が期待されている一方、当事者である企業も、女性たちも、モデルケースがない中、結果を残していかなければいけない。そんな今の状況に危機感を抱いています。
まずは会社の「マッチョ体質」を変える所から
酒井:最悪なのは、最終的に「やっぱり女性が男性と同じように働くのはムリなんだ」と、社会に認知されてしまうケースです。
太田:「女性活躍は失敗だった」と言われてしまう日が来るかもしないわけですね? どうすればそれが避けられるとお考えですか?
酒井:女性の数を増やす前に、会社の体育会的な風土を変えることが先だと思います。今でも、休日の出張や徹夜の残業を自慢する人が評価されるようなところが、日本の会社にはあるじゃないですか。それはただの精神論であって、別に成果や能率とはまったく関係のないものです。
そういうマッチョな働き方を奨励せず、むしろ男性も女性も普通に有給を申請したり、フレキシブルに働けるのが当たり前にならないといけないと思います。それさえ実現できれば、数の上では、女性も男性同様に活躍できるようになるでしょうね。
太田:経営者や人事担当が理解のある会社ならいいですが、すべての会社がそう変わるのは、なかなか難しそうですね……。
酒井:あとは自分の実力を定期的に見つめなおしてみることをおすすめします。というのも、これから女性たちは2020年頃までは、実力以上の期待を背負わされます。管理職研修に参加したり、男性と同じように役職を任されたりする人も出てくるでしょう。
ですが、それは多くの日本企業が「いつまでに何名の女性の管理職を作る」という目標を持っているからです。それは果たして、本当に自分の実力で手に入れたものなのか、それとも制度によって与えられたものなのか、よく考えたほうがいいですね。
「名ばかり管理職」に終わらせないために

太田:女性が「名ばかり管理職」のような扱いを受ける可能性もあるのかと想像するだけで怖いと感じます。
酒井:そうですね。そうならないためにも、男性並、それ以上の活躍が求められることでしょう。ただ、それが男性社会的な、休日の出張や徹夜の残業だと、困ったことになります。ここは、会社側の問題です。
太田:ただ、女性の中にも今の風潮をチャンスに捉えている方もいます。そういう女性たちが将来、自分の実力で高いポジションに立つことによって、どんどん会社の男性的なカルチャーも変わっていくんじゃないかと、私は期待もしています。