経済動向を反映する求人倍率

総合経済動向を反映する求人倍率

いま起こってしまった変化の始まりを探してみると2008年にあるように思える。

この年の7月に全世界でiPhoneが発売され、携帯電話とパソコンの地位が次第に沈み、スマホやタブレットが主流になっていく。9月にはリーマンショックが起こって世界経済がきしみ、日本経済は沈んだ。そして2009年に民主党政権が成立した。

この頃の企業マインドは低く、新卒採用意欲は低かった。しかし2012年末の政権交代あたりから、株価は上がり、為替レートは円安に振れ、新卒採用意欲が強まってきた。

2016年卒の採用「増」、その内情は

在学中の学生に内定を出し、卒業度同時に採用する雇用システムを新卒一括採用と呼ぶ。日本では当たり前すぎるが、世界的には稀で日本独自のシステムだ。新卒一括採用の是非については多くの議論があるが、戦前に遡り、高度経済成長期の日本企業を支えてきたことは間違いない。

労働実績のない新卒者を白紙で雇用し、育成するには多大なコストがかかる。したがって企業マインドが萎縮して先行きを不安視しているときは、新卒求人数は少なくなる。逆も真である。企業マインドが回復すると、新卒求人数は増大する。

2016年卒の採用計画人数を見るとたしかに増大している。とくに目立つのは大手の採用意欲の強さだ。4割以上の大手が「増やす」と回答している。中堅中小は4割に届かないが、3割に近い。多くの企業は学卒者が戦力化する数年後まで人材を育成しようとしているのだ。

ただ大手の採用意欲の強さを見ると、「景気回復の恩恵を受けているのは大手」という批判にも一定の根拠があることが分かる。

前年と比較した、2016年卒の採用計画人数(企業規模別)

大卒求人倍率にみる景気

景気と新卒採用の相関を確認できる指標として有名なのは大卒求人倍率(リクルート調べ)だ。1987年卒から公開されており、1980年代半ばからの景気の動向を知るサブ資料として役立つ。1987年卒から1992年卒までのいわゆるバブル経済企業の大卒求人倍率は2を超えていた。

1993年以降は長らく1台だったが、2008年卒と2009年卒に2.14を記録し、企業マインドが強気に転じたことがわかる。しかし2008年のリーマンショックで再び経済は低迷し、2009年卒で1.62、2011年卒から2014年卒までの4年間は1.2台だった。ところが2012年12月に安倍政権が成立してから日本経済は持ち直し、2015年卒の大卒求人倍率は1.61と大幅に改善し、2016年卒では1.73とさらに上昇した。

メディアの影響も無視できない

大卒求人倍率が高いと採用難、低いと就職難になるのは当たり前だが、別の影響もある。それはメディアによる就職報道だ。企業の求人数が少なく、学生が進路を選びにくい年にメディアは就職の困難さを報道して学生を焦らせた。

2016年卒でメディアは「売り手市場」という記事を早くから掲載して学生を煽り、学生に大きな影響を与えた。またソーシャルメディアを使って情報交換も盛んになってきた。

人事が2016年卒採用の悩みとして「学生の動きが読めなかった」と語っているが、既成メディアとソーシャルメディアの影響まで読み込んで採用計画を立案するのは難しく、今後の課題と言えるだろう。