新卒新卒採用ルール、再度変更で起きる”副作用” 「8月」から「6月」に再び前倒しを検討
読売新聞が10月25日の朝刊1面で「就職選考6月解禁へ」と報じた。その後、他紙も追随している。現在の日本経団連のガイドライン(指針)では、大学生を対象にした採用活動において、面接などの選考開始は8月1日からと決まっている。これを2017年卒(現3年生)採用から6月に前倒しするというのだ。
2015年卒の採用では、「4年生の4月」が選考開始時期だったが、2016年卒(現4年生)採用からは選考を「4年生の8月」に変更した。政府や大学が学生の学習時間確保のために後ろ倒しを要請したためだ。
しかし、スケジュール変更によって、就活期間の長期化やオワハラ(就職終われハラスメント)、中小企業での内定辞退の増加といった無視できない副作用が生じた。8月にマイナビが行った調査では、就活をした学生の79.3%が「採用スケジュール変更はマイナスの影響が大きかった」と回答している。
もともと指針に従わない企業が多かった
実は初年度から新しい指針に従わない企業が多かった。リクルートキャリアの調査では選考開始日の8月1日時点の内定率はなんと64.4%にも及んでいた。2015年卒の選考開始日(2014年4月1日)の内定率18.5%と比較すると、今年は異常に高かった。
そして、8月15日には70.6%、8月31日には78.1%にまで達している。多くの企業が新しい指針には従わず、フライングで選考していたことは明らかだ。
こうした状況を受けて、経団連の榊原定征会長は9月7日に「スケジュールを元に戻すのも選択肢」、10月16日には「選考開始は6月でどうか」などと発言し、現行の指針に問題があることを認めていた。新スケジュールが学生と企業の双方に負担をかける上に、守らない企業が多ければ変更せざるを得ないというわけだ。
8月から6月への前倒しによって、問題は解決するのだろうか。また、新たな問題が生じることはないのだろうか。
面接開始時期のピークは3~5月
まず、就活期間は短くなるだろう。もともと多くの企業は2017年卒採用から指針を無視して採用を前倒しにする方針だった。人事領域の調査を手掛けるHR総研が8月に行った調査によると、多くの企業が今年の12~2月にかけてインターンシップを行う。面接開始時期のピークは3~5月だ。8月以降に内定出しを開始すると答えたのは、大手企業の22%に過ぎない。
また、人材採用コンサルティングのジョブウェブが9月下旬に行った調査では30%の企業が年内に選考を開始すると回答している。
今年の採用が思うようにできなかった企業が、2017年卒採用では早めに採用活動を始めて巻き返しを図ろうとしているのだ。
それでは、中小企業は十分に学生を採用できるようになるのだろうか。従来は最初に大手企業の採用が始まり、それが落ち着いてから中小企業の採用が開始された。大手企業の内定を取った学生は中小企業を受けなかった。
しかし、今年はスケジュールの変更によって、中小企業から採用が始まった。学生はとりあえず中小企業を受けて保険として内定を取った。その後も就活を継続し大手企業から内定が出れば中小企業を辞退した。その結果、定員の数倍の内定を出しても人数を確保できない中小企業が続出した。なんとか学生を引き留めたい中小企業は、大手企業を受けさせないように働き掛けたため、これがオワハラとして大きな社会問題となった。
現3年生の採用で従来のように大手から先に採用活動が始まれば、中小の内定辞退者は減少して採用難はある程度解消するだろう。しかし、2017年卒採用では、大手も中小も早期に採用を開始する姿勢を見せており、大手と中小が同時に採用活動を展開するだろう。中小企業にとって採用しにくい状況はあまり変らない。
新たに生じる問題とは、公務員試験と民間企業の併願がさらに難しくなってしまうことだ。
公務員試験は6~8月が多いので、民間企業の選考ともろに重なる。2015年卒採用の時は民間企業の選考開始が4月だったので、5月の連休明けまでに民間企業の内定を取り、それから公務員試験に臨むことができた。
2016年卒採用では企業説明会やOB・OG訪問などの活動と公務員試験が重なったので、学生の負担は重くなった。そして、2017年卒では選考と試験が重なるため、さらに負担が増す。選考日と試験日が重なれば、どちらかをあきらめなければならない。
教職課程を履修している学生にも打撃
また、教職課程を履修している学生にも打撃を与えることになる。教育実習は6月に行われることが多い。教育実習に行くならば、期間中は選考を受けられないことになる。
2016年卒の就活でも民間企業の就活のために教育実習に行かず、教員免許取得をあきらめてしまった学生がいたが、2017年卒ではこうした学生が増加する可能性がある。
日本で初めて就職協定が結ばれたのは1928年。当時は極度の就職難で、学生の就活が過熱していた。学業の軽視が問題になり大手企業と有名大学の間で「入社試験は卒業後」という協定が結ばれた。だが、協定に参加しない企業は大学4年の年末年始から入社試験を行った。
その後、就活ルールを作っては破るということを87年間も繰り返してきた。問題になるのはいつも「選考時期」だ。87年かけてもルールを守れないならば、今後どんなルールを作っても守れないだろう。
日本には新卒採用をする企業が1万7000社超もある。業界や企業によってさまざまな事情があるにもかかわらず、選考時期を1つにするのは合理的とは思えない。政府や経済団体が、一方的に企業の採用時期を決めるという方式は限界が来ているのではないだろうか。