Uターン就職なら奨学金の返還減免 6県で制度導入

総合Uターン就職なら奨学金の返還減免 6県で制度導入

地元で就職した学生は奨学金の返還を免除します――。若者の流出に悩む県がこんな取り組みを始めている。朝日新聞が47都道府県に取材したところ、香川、福井の両県が先行。国が人口減対策の一つとして今年度から後押しし始めたこともあり、富山、鳥取、山口、鹿児島の4県があらたに導入したほか、13県が検討しており、さらに広がりそうだ。

写真・図版学生の奨学金返還を支援する各県の取り組み

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「地元に帰る後押しになりました」。そう語るのは高松市出身の天雲大貴(てんくもたいき)さん(22)。香川県奨学金を使って東京の私大に通っていた。今春卒業。東京の大手家電メーカーなど数社の内定を得ていたが、地元の銀行に就職した。

香川の制度は、2012年度に学生の地元定着を狙って始まった。奨学金を受ける条件は、保護者らが県内に居住▽保護者らの所得が県が定める基準額以下▽高校の成績が5段階評定で3・5以上――などで、大学などに在学中は月額3万~13万2千円を貸与される。卒業後、学生らが県内で就職し、3年間働くなどした場合、貸し付け月額のうち1万5千円または2万5千円分の返還が免除される。

これまで奨学金を受け取った人は計475人。今春までの卒業者99人のうち、県内で就職し、減免の対象となったのは33人(9月末現在)。県の担当者は「数が多いか少ないかは、まだ評価できない」という。

ログイン前の続き天雲さんは、東京での就職を希望していたが、きょうだい3人とも大学に入った家計を支援し、将来祖父母ら家族に何かあったときに、近くにいて支えたいと考え直した。2年生の時から借りた奨学金は230万円で、減免額は54万円。今は毎月5万円を家に入れている。「奨学金の返還を減らしてもらい感謝しています」

福井は香川より1年早い11年度から、奨学金返還の支援に乗り出した。ただし、こちらは理工系大学院の院生が対象。月額6万円を貸与し、県内の製造業などで7年間働いた場合、全額返還を免除する。これまで119人に貸与し、修了した74人のうち60人が県内企業に就職したという。

■国が今年度から助成制度

総務、文部科学の両省は今年度から両県の試みなどを参考にした制度を始めた。県が地元産業界と連携して基金を設置し、学生が日本学生支援機構などから借りた奨学金を返還する際、地元企業に就職すれば全額または一部を支援する。就職期間は各県が決める。国は各基金に最大1億円を助成。1県あたり100人までを想定している。

鳥取、山口、鹿児島の3県は早くも今年度からこの制度を利用することを視野に、奨学生の募集を始めた。富山も関連予算を組んでいる。ほかに、秋田、山形、栃木、三重、和歌山、島根、徳島、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎の13県が、人口減対策として策定する「総合戦略」などに盛り込み、検討し始めている。

一方で、慎重な県もある。静岡は、対象が1県で100人に限られている点を指摘し、「人口の多い静岡では効果が少ない」などとして、導入を見合わせる方向。愛媛は「就業義務期間の後も学生が地元に残ってくれるか確証がない」と効果を疑問視する。導入するかどうか「未定」という群馬は「県内の就職先を学生に伝えるのが大事」と、首都圏の学生を地元企業に案内するバスツアーに力を入れている。

日本学生支援機構奨学金を借りた人数は、03年度は74万人だったが、その後次第に増え、13年度には144万人に倍増。15年度は134万人となっている。返還を延滞している人は、03年度は22万2千人だったが、08年度に30万人を突破。14年度は32万8千人となっている。

■転出、3度目の山

地方を離れ、都会に向かう人の流れは、高校や大学の卒業時にピークを迎える。進学や就職が契機だ。

総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告(2014年)によると、地方圏(東京など3大都市圏を除く36道県)では、転出者が転入者を9万6883人上回った。年代別で10代後半と20代前半で計9万4374人とほとんどを占める。流出先の大半は東京圏だ。

地方からの人口転出は景気回復時に増えている。最初で最大の山は、高度成長期で、第2の山はバブル経済期。今は3度目の増加期に当たる。政府のまち・ひと・しごと創生本部は昨年末、20年までに東京一極集中を止めるとの目標を掲げたが、「東京五輪もあり、一極集中はさらに拡大していく可能性がある」との厳しい認識も示している。