総合「素敵なオフィス空間」では会社は良くならない
有効な人材活用のためにオフィスのデザインがいくら美しくても、それが実際どう使われているか、という現実との間には差があるものだ。伝統的な職場空間に替わる新しいコンセプトのオフィスデザインにその好例が見られる。
20世紀の終わりまで、会社というものはマネジャーや管理職者たちの執務室(部屋の大きさはその地位に比例した)の集合体であった。独立した小部屋になっていることもあればデスクによって仕切られているケースもある。あのビリー・ワイルダーの映画「アパートの鍵貸します」に出てくるようなスタイルのオフィスだ。
アドレス・フリーとは名ばかり…
ある業界(具体的にはマネジメント業界)では、オフィスのレイアウト一新に着手した。というのは顧客との打ち合わせやマネジメント業務で社員が自社オフィスを使わず、社外に出ているケースが多いため、オフィスの賃貸コストを必要最小限に詰めていくこと(オフィス効率を高める)が必要となっていたのだ。
そこで、社員の決められたデスクがない“アドレスフリー”と呼ばれる新しい形が現れた。この新しいオフィスレイアウトは、企業の上下関係を重んじる世代にとっては受け入れがたいものであった。アドレスフリーとはいいながらも、一番いい場所に子どもたちの写真や個人のカレンダー、観葉植物を飾って、さり気なくテリトリーの主張を行っている、というケースも少なくない。
21世紀に入ってテクノロジー企業がオフィスレイアウト改革のリーダーとなった。
オフィスは“共同創造”の場となり、労働者各自が持っている知識を交換し、お互いに協力しあうために設計された複数のゾーンの集まり、という形になってきた。
福利厚生も使われなければ意味がない
例えばグーグル社のオフィスにはサッカー盤ゲームやテレビ、食事(グーグル社が力を入れているのは社員の食生活の向上だ)が置かれているが、これらはオフィスの近代化をめざす企業でどんどん取り入れられている。
私のとある生徒によると、彼が管理職として働いている多国籍企業ではサッカー盤ゲームはあるにはあるが全然使った形跡がない。オフィスで暇だとは見られたくない、仕事に興味がないという印象を与えたくないためだ、という。
職場の雰囲気を創造的でダイナミックなものとするために取り入れられた新しいアイデアが受け入れられていないのであれば、このスペースは全く意味がないものと言わざるを得ない。このための投資は無駄となり、社員のために始まったことが社員にとって意味のないものとなってしまう。
物事の順番がなっていないことを表す“屋根から家を建てる”ということわざがあるが、サッカー盤から経営を変える、という新しいことわざもできそうだ。