新卒新卒採用もう終盤戦? 大手内定「早く、多めに」
2015年春に入社する新卒者を対象にした企業の採用活動で異変が起きている。採用面接は1日に始まったばかりだが、実質的な内定を出す企業が続出。大手企業の活動は早くも終盤戦の様相だ。景気回復による人手不足感を背景に、優秀な人材を囲い込もうと昨年より1~2週間早く動く例が目立つ。採用基準を緩め、量の確保を優先する企業も出てきた。
大手企業は優秀な人材を囲い込もうと昨年より1~2週間早く動く例が目立つ(1日、都内の採用面接受付風景)
「優秀な人材を採用するため、早めに内定を出した」。キヤノンは350人の新卒採用を計画し、すでに約半分に内定を出した。内定者の人数は昨年の同じ時期に比べ1割多い。多くの企業が内定時期を前倒ししているとみて追随した。総合職を約130人採用する三井物産は夏の選考分を除き、すべて内定を出した。他の大手商社もほぼ内定を出し終えたもよう。
三菱東京UFJ銀行など3メガバンクの15年春入社の採用計画は約4700人と、14年春より2割以上多い。個人向け運用商品の販売強化や国際業務に注力しており、人材の獲得競争は激しい。あるメガバンクはすでに総合職の選考作業をほぼ終えた。損害保険大手も「採用スケジュールが昨年より数日前倒しになっている」。生命保険会社の面接担当者は「他社の選考が進んでいる学生が多い」と危機感を示す。
就職活動サイト大手のマイナビ(東京・千代田)の調べでは、筆記試験や面接、内定を出す時期を「早める・早めた」と回答した企業は約3割にのぼる。半数を超える企業が採用環境が「厳しくなる」とみており、学生の争奪戦に身構える。
優秀な学生を採りたいと焦るあまり「おきて破り」に走る企業もある。経団連の倫理憲章では、面接などの選考は4月1日が解禁日。しかし、ある有名大学の就職担当者は「あるメガバンクは3月末に水面下で内定を出していた」と明かす。他社の面接が始まった4月1~2日には食事会を開き、内定を出した学生が他社の面接を受けられないよう「拘束」もしていたという。
企業は選考ペースを早めるだけでなく、量の確保にも腐心する。クボタは技術系の採用で、大学推薦の受験者の面接を1回のみとした。昨年までは一般の受験者と同じ2回の面接だったが、面接回数を減らすことで大学生の負担を減らし、少しでも多くの学生の獲得を狙う。住友ゴム工業と東洋ゴム工業も例年より多くの内定を出している。
内定を出した学生が他社に流れないよう、企業は囲い込みにも懸命だ。双日は4月から学生同士の懇親会を開いている。正式な内定を出す10月までに懇親会や山登りなどのイベントを定期的に開くことで、同期の仲間意識を植え付け内定辞退を防ぐ。
「売り手市場」が鮮明になるなか、複数社から内定を得た学生も多い。苦戦する学生がいる一方で優秀な学生には内定が集中。1人で7社から内定を得た例もある。明治大学就職キャリア支援部には「どう断れば失礼にならないか教えてほしい」「入社する誓約書を出したが、他の企業も受けてみたい」といった学生の相談が絶えない。
複数の内定を得た学生を狙う新ビジネスも登場している。就職サイトを運営するネオキャリア(東京・新宿)は今春、新たな求人サイト「ワイルドカード」の運営を本格化した。内定を持つ学生を集め、他の企業に紹介するシステムだ。登録する学生は約1200人。約100の企業が利用し、他社が優秀と認めた人材の獲得を目指す。
12~3月までは選考時期の早い外資系企業の内定者を国内企業がスカウト。4月からは大手企業の内定者をベンチャー企業が狙う。グーグル日本法人の内定を断り、ベンチャーへの就職を決めた学生も現れた。
景気回復に加え、リーマン・ショック後に採用を絞った反動で、企業の人手不足は深刻になっている。労働力人口の減少に備えるため、「短期的に企業が採用を減らすことは考えにくい」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長)。将来の戦力となる人材の奪い合いは一段と過熱する可能性がある。


