「完全雇用」近づく 賃金・物価上昇圧力に

総合「完全雇用」近づく 賃金・物価上昇圧力に

日本経済が「完全雇用」に近づいている。1日発表の3月の有効求人倍率は1.15倍と23年ぶりの水準となり、バブル期以来の高さとなった。3月の完全失業率も前月より0.1ポイント低い3.4%で、2カ月続けて改善した。日本の失業率は3%台前半だと、現行の賃金水準で働きたい人がすべて雇用されている「完全雇用」に近い。労働供給を制約し賃金や物価の上昇圧力となりそうだ。

1日発表の家計調査や消費者物価指数などの経済統計は強弱がさまざまみられたが、雇用指標は総じて堅調だった。求人サービスのインテリジェンスによると3月の求人数は前月比4.6%増えた。電機や自動車など「幅広い業種が中途採用に力を入れている」(木下学DODA編集長)。

求人の増加は失業率の改善につながっている。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「3.4%の失業率は完全雇用に近い状態」とみる。

「完全雇用」の状態になると、企業は人手を確保するために賃金を上げ始める。賃金を受け取った労働者が消費を増やし、経済の体温計である物価も上がるというのが経済学の考え方だ。

現状をみると、賃金はまだ上がり始めの段階で、消費増や物価上昇には時間がかかりそうだ。

毎月勤労統計調査では3月の現金給与総額は前年同月比0.1%増の27万4924円だった。

リクルートジョブズによると3月の飲食店の募集時給は937円(三大都市圏)で、前年同月に比べ1.4%高い。パートやアルバイトの時給は高い伸びだが、正社員の賃上げはこれからだ。

3月の家計調査で実質消費支出は消費増税前の駆け込みの反動で前年同月比10.6%減と過去最大の落ち込みになった。ただ、前月比では2.4%増と2カ月連続で増え、改善の兆しもある。

目先、一番の課題は物価だ。3月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比2.2%上昇で、消費増税の影響を除くと0.2%上昇だった。エコノミストの多くは、日銀が掲げる2%の物価安定目標の達成は難しいとみる。日銀の黒田東彦総裁は4月30日の記者会見で「賃金上昇を伴いながら、緩やかに物価上昇率が高まっていく」と完全雇用のメカニズムが働くと主張した。

完全雇用の負の側面を指摘する見方もある。国内生産や設備投資が伸び悩んでいるのは「人手不足が制約要因」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)との声も多い。