内定者をSNS内で公開、これって問題ない?

総合内定者をSNS内で公開、これって問題ない?

あなたの会社では、人材採用にSNSを活用しているだろうか。

ギブリーが実施したソーシャルリクルーティング(ソーシャルメディアを活用した新卒採用)についての意識調査(2013年6〜7月)によると、2014年度の新卒採用を実施した企業187社のうち、Facebookを活用した企業は107社、Facebookを活用しなかった企業は80社となった。

同調査でFacebookを活用した企業107社に対し、効果の有無を質問したところ、50.5%が効果を感じていると回答。「学生から親しみを持ってもらえるようになった」「学生の会社理解度が向上した」「社内広報ができた」「会社の認知度が向上した」などの効果があったという。

「みんなの就職活動日記」の協力の下、HR総研が2016年卒業予定学生を対象に実施した就職意識調査(2014年11月)では、学生が就活で利用するSNSのトップはFacebook、次いでTwitterという結果になった。FacebookとTwitterの利用度は、文系でそれぞれ40%、34%。理系ではそれぞれ31%、21%だった。

このように企業の人材採用でのSNS活用、学生の就職活動でのSNS活用は徐々に広がっている。その際、どのようなトラブルが起こり得るのだろうか。また、そういう事態にはどう対処すればよいのだろうか。

ソーシャルメディアコンサルタント志田なぎさ(略してSNS)の元には、様々な企業や社員からSNSに関する問題が持ち込まれてくる。なぎさはSNSの導入やビジネス活用だけではなく、社内SNSの活用や、社員のSNSトラブルまでSNSとつくものなら一手に相談を引き受けている。本日なぎさの元に寄せられた相談とは―。

内定者にSNSを活用する際の注意点とは

ネット広告代理店M社の企画・営業部に所属するM下は、今年度の内定者の世話係を社長から任命された。「内定者の世話係」にはピンとこなかったものの、任命された以上は頑張ろうと張り切っていたM下。ところが、同僚のN田に伝えると妙な表情をされてしまった。

急に不安になったM下は、「内定者担当を引き受けると何か問題あるのか?」と問いただしてみた。N田は同情するように、「M下も貧乏くじを引いたな。これまで内定者関連で問題があったことを知らないのか? 気を付けた方がいいぞ」と言う。聞くとM社は、以前に内定者絡みでちょっとした炎上事件を起こしたことがあるらしい。

寝耳に水だったM下は急に心配になり、問題を起こす前にと、慌ててなぎさの下に相談に訪れてきたのだ。

内定者をFacebookで「公開」して問題に

M下 :内定者に関するSNS活用において、これまでどんな問題が起きてきたのですか?

なぎさ :残念ながらいろいろと起きています。新しいツールなので仕方ないかもしれません。それと、企業が内定者に対してSNSを活用する場面が増えていることも背景にあります。 最近目立つのは、SNSで内定者同士がコミュニケーションを取れる場を設ける動きです。企業にとって、内定者による内定辞退は避けたいことです。内定者がSNSを通じて入社前に親しい人が出来れば情報交換もできて安心ですし、入社後にも協力関係を継続できるという効果も期待できます。実際に、Facebook内にはたくさんの内定者グループが出来ています。

M下 :それはうまいやり方ですね。

なぎさ :ところが、2013年秋頃、多くの内定者グループで「参加者」、つまり内定者の一覧が外部から丸見えの状態となっていることが明らかになりました。その多くは内定者自身が管理していたものでしたが、一部には企業の採用担当者が管理していたケースもありました。

M下 :あっ、その話は聞いたことがあります。当事者意識がなかったので何が問題なのか、分かっていませんでした。何でいけないのですか?

なぎさ :企業の従業員が管理していた場合、内定者の個人情報漏洩は、当然企業の責任になります。個人情報保護法違反であり、内定者のプライバシー権侵害にもなります。個人情報が公開されたことで内定者が損害を被った場合、損害賠償の可能性も出てきます。 また、経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章」によると、正式な内定は卒業・修了年度の10月1日以降とされていますが、情報が漏れてしまい、それ以前に内定が出ていたことが分かってしまった場合、憲章違反とされて問題になる可能性があります。

Facebookの「非公開」と「秘密」は別物

M下は青ざめた。「えっ、そんな大ごとだったのですか! でも、なぜFacebookではそんな問題が起きるのですか」。

なぎさ :Facebookのグループの公開範囲設定を間違えたせいで、このような大問題が起きてしまうのです。Facebookグループの公開範囲は、「公開」「非公開」「秘密」から選ぶことができます。「公開」はグループ名、メンバーリスト、グループ内の投稿がすべて公開されます。

M下 :「非公開」と「秘密」は何が違うんですか。

なぎさ :まぎらわしいのですが、これらは違うものです。「非公開」はグループ内の投稿はメンバーしか見られないものの、メンバーリストは誰でも見ることができます。「秘密」はグループ名、メンバーリスト、グループ内の投稿すべて非公開になるため、存在自体を知らせたくないなら「秘密」を選ぶ必要があります。 つまり、企業が運営するなら「秘密」が一番安全です。次年度以降の宣伝の意味も兼ねるのであれば、10月1日以降に「非公開」として運用開始すればよいでしょう。

Facebookグループの公開範囲についてのヘルプ https://www.facebook.com/help/103763583048280

内定者による情報漏洩に注意

M下 :うかがったときにはぞっとしましたが、グループの公開範囲さえ間違えなければいいんですね。聞いてよかったです。

なぎさ :いえ、まだあるんですよ。内定者による炎上問題です。

トレンドマイクロの「就活生と社会人のSNS利用とプライバシー意識に関する調査」(2013年11月)によると、「日々の出来事を不特定多数に公開している」就活生は82.2%、社会人は54.8%となっている。さらに、SNSに投稿する際、情報公開の範囲を「意識していない」就活生は35.5%、社会人は29.4%。近年問題となっている炎上問題について尋ねたところ、就活生の53.3%、社会人の45.2%が「自分の周りにはリスクはない」と回答するなど、就活生は自ら投稿を不特定多数に公開範囲を意識せずに公開しながら、炎上のリスクについて気にかけていない現状が分かる。

M下 :えっ。学生がSNSで炎上事件を起こしていることは知っていますが、内定者の炎上も企業の責任になるんですか?

なぎさ :ご存知の通り、内定者による炎上事件は多発しています。例えば、企業秘密に当たることを漏らした場合はどうなるのでしょうか。 内定とは、正確には「始期付解約権留保付労働契約」という条件付きの労働契約が成立した状態です。入社日が明示されており、内定取り消し事由に当たることが生じた場合は、企業には内定を取り消せる権利が留保されています。つまり、もし内定者が問題を引き起こした場合は、企業は内定取り消しができるのです。内定者が顧客情報などを漏らした場合、企業は内定者に対して損害賠償請求ができるでしょう。

M下 :ということは、企業は内定者の責任を取らなくてもいいということになりますね。つまり問題ないということになりますが…。

なぎさ :法的にはそうなのです。ただし炎上が起きた場合、企業に抗議の電話やメールが殺到し、対応を迫られるのが実情です。さらに、炎上によって企業にマイナスイメージが付くことは避けられません。

M下 :それは絶対に避けたいです。

なぎさ :そこで、最近は新入社員だけではなく、内定者向けに、情報リテラシー研修を実施しているところが増えています。入社してからも使える内容ですから、内定者に対して実施するのはお勧めですよ。

M下 :なるほど、確かにその通りです。研修のための予算をかけあってみます。研修の中には、内定者グループの公開範囲のことも盛り込まなくてはいけませんね。これから忙しくなりそうです。

 解決策:
●内定者グループの公開範囲に気を付ける
●内定者向けに情報リテラシー研修を実施する

企業の責任の範囲、問題実例を把握しておこう

SNSでは、内定者絡みで様々な問題が起きている。例えばFacebookグループにおける内定者の個人情報漏洩問題は、騒ぎになったのでご存知の方も多いだろう。炎上事件もよくメディアを騒がせているので、耳にしたことがあるはずだ。

新しいツールが普及し、新しい問題が起きている。最初からすべてのリスクに備えるのは難しいが、ニュースに目を向けておくことで、どのような問題が起きているのかを知り、未然に対処できるようになる。事件に関する報道ほど反面教師として役に立つことはない。ぜひ報道から問題となるポイントを知り、自社の安全対策に生かしてほしい。

皆さんはSNSの企業利用でどんなトラブルや悩みを抱えているだろうか。志田なぎさはSNSにおけるあらゆる悩みにお答えしていくので、皆さんの悩みもお聞かせいただければ幸いだ。

 今回のポイント:
●SNSは企業の内定者に対して有効活用できる
●情報漏洩や炎上事件を引き起こしかねないので、利用方法には十分留意する
●情報漏洩や炎上事件の防止には情報リテラシー研修が効果的 ●SNS関連の事件報道は反面教師として役立てる