総合介護大手、相次ぎ賃上げ 深刻な人手不足に対処
介護サービス事業者が4月以降の賃上げに動いている。深刻な人手不足の解消につなげる狙いで、ニチイ学館やベネッセスタイルケアなど主要12社だけで10万人弱が対象になる。4月の介護報酬改定で事業者に渡される原資を数千円上回る賃上げに踏み切ったり、調理や送迎など周辺スタッフまで賃上げ対象にしたりする動きが出ている。介護では2009年以来の大幅な賃上げになりそうだ。
年間売上高100億円以上で介護サービスを手掛ける主要12社に聞き取ったところ、全社が15年度に賃金を引き上げると回答した。各社が賃上げに動く背景には人材難への危機感がある。
介護職員の有効求人倍率は2月時点で2.48倍。求職者の2倍を大きく超える求人がある状態で、産業界の中でも特に人手不足が深刻だ。介護職員は現在約180万人いるが、政府は今後の高齢者の増加を踏まえると、25年度に約30万人不足すると推計している。
厚生労働省の14年の調査では介護職員の平均賃金は月額約22万円。全産業平均を11万円も下回っている。売り手市場が強まる中で給与水準を引き上げないと、必要な人材を確保できずに介護現場を支えられなくなるとの判断がある。
厚労省は4月から介護報酬を改定し、介護職員の月給を1人あたり1万2千円引き上げる原資になる「処遇改善加算」を設けた。要件を満たした介護事業者は加算分の報酬をもらい、賃上げに充てられるようになる。多くの事業者はこうした加算を使って賃上げする見込みだが、大手では報酬分を上回る賃上げを実施する動きもある。
最大手のニチイ学館やセントケア・ホールディングなど4社は賃上げを1万2千円にとどめず、独自に上積みする方向だ。九州が地盤のシダーは定期昇給による2千~3千円を加え、月1万5千円程度の賃上げとする。
賃上げ対象を介護福祉士らに限らず、周辺スタッフに広げる動きもある。ワタミの介護など5社は介護計画を立てるケアマネジャーや食事の調理、高齢者の送り迎えなどを担うスタッフも賃上げする方向だ。
介護報酬を使った賃上げは高齢者のケアに直接携わる介護福祉士やホームヘルパーらに対象を限っている。5社は独自に財源を捻出して介護現場を支える幅広い人材の賃金水準を底上げする。
西日本や首都圏で特別養護老人ホームを展開する健祥会グループ(徳島市)など、社会福祉法人でも賃上げの動きは広がりつつある。ただ経営基盤が弱い中小事業者には、安定収入が見込めないことを理由に賃上げを見送るケースがある。
大手各社は複数の介護施設や訪問事業所を広域展開し、規模のメリットを生かして運営を効率化し生産性を高めている。一方、介護サービスの9割を占める中小・零細の事業者では効率性が低い。介護報酬に頼らずに介護職員の処遇改善を続けるには、再編など中小事業者の経営効率を高める取り組みが不可欠だ。
