新卒人材ビジネスモデルの変革に挑戦 就活生マークのリーディングマーク
春は出会いと別れの季節。就活中の学生なら、自身の人生をはっきりと、あるいはぼんやりと思い描きながら、様々な企業との出会いを求めて就活サイトの画面と日夜、にらめっこしている人も少なくないだろう。
その出会いを生かして就活に見事成功したとしても、その後ときめきをため息に変えてしまった者も中にはいるだろう。出会いの難しさといえるが、これが意外に多い。
内閣府の国民生活選好度調査によると、労働者の中で「働きがい」を感じている人はわずか18.5%にすぎない(2008年調査)。この低さの背景には、不況による経済環境の悪化があるにしても、最初の出会いそのもののミスマッチもあるだろう。
就活・採用支援事業を展開するリーディングマークの飯田悠司社長(29)は「キャリア選択、人材採用の仕組みのおかしさが、ミスマッチを招いている」と断言する。
東大在学中に起業した飯田氏は、人材業界の構造的問題点をこう指摘する。
「採用媒体は就活生に企業エントリー数を競わせる傾向にあるが、なぜか。エントリーさせればさせるほど人材会社がもうかるからだ。また、人材紹介会社は転職先給料の35%をフィー(手数料)として企業からもらう。ぴったりの会社を紹介するというが、給料が高い会社を紹介したほうがもうかるので、実情は必ずしも本人に合った仕事を紹介するわけではない」
無駄なエントリーを生み出せば生み出すほどもうかる採用媒体業と、給料が高いものばかりを紹介する人材紹介業。これしかビジネスモデルがなければ「人材会社は当然、本人に合った案件を紹介するインセンティブがない」
人材業界の既存ビジネスモデルが多くの若者のため息の一因なら、この構造を打ち破る就活生本位の新たなビジネスモデルが模索されてもおかしくない。
飯田氏の出した答えは、個人を起点にした就活プラットフォームのアプリ「レクミー」。スマートフォンにダウンロードして、プロフィールや志望業界などを登録すれば、企業の就活情報を就活生に届けてくれる無料アプリだ。自撮りをした動画を使って自己アピールができる「自己紹介動画」機能も使える。リーディングマークが2月6日、リリースした。
飯田氏は「人材業界、キャリア選択の仕組みを根本から変える。高いお金を払ってくれる会社ばかりを一生懸命紹介する企業寄りの紹介サービスはやめる」と意気込んでいる。
レクミーは、リーディングマークが採用成功報酬契約(採用一人に付き60万円)を締結している契約社(約200社)の情報でも、各就活生に合致しなければ配信しない。一方、契約社以外の就活情報も、各就活生の志向性に合致すれば、提供する。つまり、契約社であるかないかに関わらず、各就活生の志向性に合致した就活情報を提供する。
現在の就活情報提供企業数は、大手企業やベンチャーなど約1000社。いずれは、日本中すべての企業の就活情報を網羅する予定だ。情報は各企業のウェブサイトから自動収集するシステムを採用するので「技術的にはそれほど難しいことではない」という。
「情報収集の範囲とか情報の質はまだまだ。ただ、営業マンが受注してきた企業の案件しか掲載しない他の人材媒体と比べたら、はるかに多くの情報をカバーしている」
これで就活生の企業選択肢の幅は広がる。飯田氏が新たなビジネスモデルとして強調する点だ。
ただ、就活生が情報洪水の中で溺れる心配もある。そのために、レクミーには学生の志向を把握する85のキーワードを、大海上の航路の目印である「ブイ」のごとく設けている。就活生はブイ(キーワード)を目指して進めば、無事、港(希望企業)にたどり着く配慮だ。
就活生はレクミーに登録する際、大学名や文系、理系などの基本項目以外に、関心のあるキーワード、例えば銀行やIT、グローバル、ベンチャー、クリエイティブなどの項目を選んで打ち込む。すると選択キーワードにひも付けされた企業の就活情報のみ、レクミーは提供する。
このような情報収集範囲の拡大と提供情報の精選がレクミー最大の特徴で、飯田氏が提示する「就活生本位のビジネスモデル」の具体的な中身だ。
さらに、キーワード連動の情報精選機能は、企業側の欲しい就活生を絞り込んで紹介する「人材精選」の働きもこなす。就活生が選んだキーワードやアプリ内の閲覧履歴が、就活生の志向を浮き彫りにするからだ。「就活生本位のビジネスモデル」は、企業側の採用活動の効率化をも、もたらす可能性がある。
「就活生に合った情報を提供するだけでなく、各企業に合った人をご紹介できるビジネスモデル。本質的な意味で人と企業がしっかりとマッチングしていける世の中をつくっていきたい」
レクミーの登録者は現在約2万人。情報収集範囲の拡大→提供情報の精選→就活生の登録増→契約社増→適正なマッチング数増→収益増。このような理想的な流れを実現するには就活生、契約社数の増加が今後も必要だろう。
飯田氏の業界変革の熱い挑戦の根底には、社会の変化を見据えた冷静な時代認識があるように思える。企業主体から個人主体の時代に変わりつつあるという見方だ。
「個人主体の時代には個人起点のプラットフォームがふさわしい。株式市場との連想でいえば、我々は『個人の株式市場』の構築を目指す」
「個人の株式市場」は、どんな能力・実績の人間かが一目で分かるプラットフォーム、という。
「今アメリカではリンクトインという履歴書のプラットフォームがはやっている。世界の3億4700万人以上の履歴書が載っている。将来的にはリンクトインに代わるキャリアのプラットフォームをつくっていきたい」
飯田氏の視線は、業界の狭い殻はもちろん日本をも突き抜けて、広い世界に向かっている。