焼肉店で就活説明会も 企業、16年卒の争奪戦

新卒焼肉店で就活説明会も 企業、16年卒の争奪戦

2016年卒の就職活動が本格的に始まり、企業が学生の囲い込みを急いでいる。経団連の日程見直しで企業説明会の解禁が3カ月遅くなり、選考期間が短くなったからだ。ほぼ7割の企業は学生が志望企業を絞り込むとみて、社長自ら出席するなど説明会に学生を集めるために知恵を絞る。景気回復を受けた企業の採用意欲の高まりもあって、学生の争奪戦は激しくなりそうだ。

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三井物産は29日、過去最大規模となる説明会を複合施設「東京ミッドタウン」(東京・港)で開く。通常の説明会では10社程度で使う大型会場を単独で押さえ、役員やグループ会社の社長が丸1日、2千人の学生を相手にする。3月に開く説明会は14年実績の2倍近い500回になる見通し。「予算と人の総力を挙げていく」(中野真寿人材開発室長)と意気込む。

就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートホールディングス(HD)の調べによると、16年卒の新卒採用を増やす企業は全体の14%。一方、採用日程の変更に伴い、67%の企業は選考応募者が「減る」とみる。

選考期間の短縮を受けて、「学生に早くアプローチしたいという企業の需要は多い」(就職情報サイトのマイナビ)。マイナビやリクナビが3月上旬に開いた合同説明会はいずれも大型見本市会場「東京ビッグサイト」(東京・江東)の東西2つの会場を借り切り、過去最大規模となった。

 

合同会社説明会で学生に語りかける資生堂の魚谷雅彦社長(8日、東京都江東区)
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合同会社説明会で学生に語りかける資生堂の魚谷雅彦社長(8日、東京都江東区)

「資生堂のことを理解した上でキャリアを考えてほしい」。マイナビが8日に開いた合同説明会では資生堂の魚谷雅彦社長が約600人の学生に語りかけた。就職人気ランキングの常連の資生堂でトップ自らが説明会に乗り出すのは初めてだ。

講演終了後も熱心な学生からの個別質問を30分近く受け付けた魚谷社長は「今後も機会があれば最大限にアピールしていきたい」と話す。経営トップの説明会への動員は外資系コンサルティング会社のアクセンチュアなども始めている。

「お肉食べたくありませんか」。エンジニアの確保が課題のIT(情報技術)業界ではこんな誘い文句で企業説明の場を設ける動きが広がっている。人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)が運営する採用サイト「ニクリーチ」は登録した就活生を焼肉店などに招待し、食事をしながらスカウトする仕組みだ。

自社の採用のために開いたサイトを16年卒から他社にも開放。すでに楽天やサイバーエージェント、ディー・エヌ・エーなど約80社が参加する。ビズリーチだけでも週に30~50人を食事に招く。竹内真取締役は「IT系の新卒採用の予算は1人100万円が相場。就活サイトの広告費に比べれば安い」という。

予定の採用人数の確保が難しくなるとみる企業もある。タクシー大手の国際自動車(東京・港)は履歴書不要、服装自由という事前準備の必要ない「ありのまま採用」を打ち出した。朗読劇による説明会とグループワークでほぼ全てという選考過程を通じ、15年卒実績よりも40人多い150人の採用を目指す。「タクシー業界はなかなか就活生の視野に入らない。まず業界に興味を持ってもらいたい」というのが新しい採用手法の狙いだ。

日程の大幅変更について、リクルートHDの就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「これまでの採用手法が通用しなくなる可能性があり、企業側も手探りの状態。できる限りの資金や人材を採用戦線に投入しようとしている」と分析する。