総合OECD34ヵ国中で下から3番目? 日本の人材育成はかなり荒んでいる
誰もが組織に育てられている。
今度はあなたの番だ
組織の中で、課長や部長などミドルマネジャーと呼ばれる立場になって一番困惑するのは多分、部下の育成だろう。名プレイヤーといわれた人ほど、それまで人を育成するということについては興味もないし経験もなかったはずだ。
プレイヤーとして自信があった人はだいたい、「僕は誰にも育てられていない。もちろん上司に育てられた覚えもない」などとしたり顔をすることだろう。私もそうだったからよくわかる。
しかし、冷静に思い出してみると、どこかで「育てられた」と思い当たることがあるはずなのだ。もちろん、それは丁寧に質問に答えてもらったとか、手取り足取り教えられたといった、学校教育の延長のようなやり方ではない。
たとえば、嫌で仕方がなかった作業が実は訓練目的であったり、放置プレイかと思った現場体験も“任せてみる”という育成であって、実は結構、用意周到に用意された“修羅場”といったケースもある。そんなふうに、結構育てられているものなのだけど、本人にはその自覚がないということが多いものだ。
もちろん、実は用意周到でも何でもなくて、ただ任せっきりの場合もあるかもしれないが、それでも結局、あなたが育ったとすれば、それも放任主義という立派な育成手法と言えなくもない。反面教師が人を育てることもある。上司の不在で部下がすくすく育つということもある。
いずれにしても、あなたが優秀なビジネスパーソンであればあるほど、あなたは絶対に組織によって育ててもらったはずだ。
第一に、自分も後進や部下を育てなければいけないという意識を持つこと。
人材育成は、育ててもらったことへの対価を組織に支払う、いわば義務なのだ。しかし、同時に権利でもあることを知ってほしい。人が育つのを見ることはとてもうれしいことだと気づいてほしい。その意味で、とても価値ある権利なのだとわかってほしい。
バブル崩壊以降、
日本は人材育成に手を抜いてきた
「人は石垣、人は城」という言葉がある、これは武田信玄の考え方といわれるもので、勝利の礎を意味する、「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵」という言葉からきている。大事なのは城ではなく、人の力だ。
しかしながら、現在の日本は、実は人材育成にかなり手を抜いている国だということもお伝えしておく必要があるだろう。
たとえばOFF-JT(社外での研修などによる、技術や業務遂行能力トレーニングのこと)に投資している金額で言うと、OECD参加34ヵ国中、下から3番目というから驚く。日本より下にはポルトガルとスロベニアしかない。日本はそれだけOFF-JTに手を抜いている。言い方を変えると、他国はもっと真剣に人材に投資しているのだ。
この話をすると、「いやいや、日本の人材育成はOJTだから」と言う人も少なくない。ところが、そのOJTが機能しているかというと、これも怪しい。
確かに、1990年代の前半までは機能していたと言ってもいい。ただし、それも新入社員からミドルマネジャーに上がるまでに限られる話だ。しかも、バブルが弾けてからは、現場からは人が抜かれ、塩漬けも当たり前になってしまい、OJTがあまり機能しなくなってしまった。多くの会社で、OJTが形骸化しているのだ。
OFF-JTにお金をかけず、頼みの綱のOJTもろくすっぽやっていないというのが今の日本の人材育成の現状なのだから、諸外国に負けるのも当然だ。
戦略を実行できる人間を育てる
目的から逆算して行うのが育成の基本
大学までで学んだことで一生食っていけると思うのは、あまりに楽観的すぎる。どう考えても、何回も学び直しを繰り返して自分を磨き続けない限り、グローバルに戦うことなどできるはずがない。ましてや、大学で真剣に学んでこなかった学生が多いのだから、「何をか言わんや」だ。人材大国日本は、もはや幻影であるということを全員がしっかりと認識するところから我々はスタートするべきだと思う。
では、これから心を入れ替えて、人材育成を真面目にやろうと思ったときに、何から手をつければよいのだろうか。そもそも人材育成は何のために行うのかを考えるところから始めるのがいいだろう。簡単な話だ。企業で行う人材育成は、人道主義的にやるべきものではない。極めて目的的にやるべきものだ。
人材育成の目的で、一番の王道は何か。組織には目的があって、その目的を完遂するために新たな戦略が立案される。その戦略を実行することができるスキルや知識、経験を持った人材を育てることこそ王道だ。
戦略を実行するのは人だ。その人が物足りないと思ったら、外から採用するか、あるいは育てる、または鍛えるしかない。外からできる人間を採用したとしても、すぐに使えるとは限らない。組織に適合させるためのトレーニングが必要だから、どのみち人材育成は必要になる。
つまり、新たな戦略を立案して実行しようと思ったら、もれなく人材育成がセットでついてくると思ったほうがいい。そのくらいに人材育成とは、目的的で戦略的なものなのだ。
ちなみに、人材育成の目的は全部で3つ、つまりあと2つある。1つは、今、営業ならば営業のマンパワーが足りないので、短兵急に現有戦力の能力を上げないといけないという場合。もう1つは、新しい経営手法や技術が導入されたので、勉強し直さなくてはならなくなったという場合。
しかし、やはり王道は戦略立案に伴い、その実行を担保するための人材育成だ。もちろん、新人から育成するということも重要な育成テーマだが、その場合も、漫然と旧態依然とした方法で行うのではなく、この戦略に沿って、教える内容も変わっていかないといけない。
まず、その人に何をやってもらいたいのか、どういう役目を担ってほしいのかという目的を必ず先に持つこと。
その目的から逆算して、それでは、どのような能力をどのレベルでつけてもらうのか、また、どんなマインドセットを持ってもらわないといけないのかということを決めて、そのための方法論を考える。
そんなところから、人材育成は個別に、目的的に組み立てていってほしい。