女性雇用育児と仕事の両立 IT業界で進む支援
若い社員が中心で“不夜城”ともいわれるIT業界。そんな業界で、出産後も働けるような環境整備が始まっている。育児中の社員の発想によるボトムアップの制度が目立つ。動き始めた仕事と子育ての両立支援の現状を追った。
「一日が圧縮され、育児と仕事に追われる。(相談できる)先輩がいなければ今、ここにいません」
東京都港区にある情報サービス大手、ヤフーの本社で、育児休業中の社員三十二人が参加して開かれた「育児休業者座談会」。石井久恵さんが声を詰まらせた。
石井さんはブログなどでの広報業務を担当。二〇〇六年に出産後、一日の勤務時間が六割程度に。復帰一カ月後には肺炎で一週間入院した。「体調管理と仕事の可視化が大事。午後六時以降から家事をするなど、復帰後をイメージして」と助言。その後、グループごとに話し合った。
社員の七割が三十~四十歳代で、三割が子育て中。子育て経験がある有志の取り組みを、人事部門がサポートするのが特徴だ。
育児経験のある十一人が育児中の社員や、時短勤務中の部下を抱える上司の相談に応じる「パパママサポーター制度」が、昨年六月に発足。月一回「パパママカフェ」で両立の悩みを語り合う場を設け、育休中や復職後の座談会も開く。
サポーターの一人で、同社広報チームの後藤雅美さん(41)は「育休中は『前と同様は無理でも、頑張りたい』と焦りがち。座談会で気持ちを共有できる」。参加者の浦田聡子さん(33)も「社員だから分かり合え、不安が消えた。二人目を出産した後の働き方など、発見も多い」と言う。斎藤由希子・人財開発本部長は、「グローバル化が進み、育児、介護など勤務に配慮が必要な人が増える。現場の上司の支援や研修にも力を入れたい」と話す。
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オンラインゲームなどを手掛けるグリー(港区)でも七月から、家族の病気で出社できないときに月二回の在宅勤務と、年五日までの休暇が可能な「グリーファミリーサポート」を始めた。家族は子どもだけでなく配偶者の両親までも含め、男性社員の利用も多いという。制度を整備する人材開発部の斧(おの)佳代子さん(35)も、子育て中の社員だ。
同社は中途採用が七割。斧さんは「男女ともに上昇志向が強く、両立支援を進めづらかったが、子育て中の社員が増えて変わってきた。制度で新卒入社の社員にとっても将来の働き方をイメージしやすくなる」と説明する。
夜勤のある職場もあるため、子育て中の社員の働き方がマッチしにくく、どうやっていくかが今後の課題だ。十月から二カ月間、人事担当者が全社員千三百人に適材適所を模索するために面談している。来年一月からその面談者が継続して助言者となる「キャリアサポーター制度」を始める予定だ。斧さんは「子育て中の社員だけでなく、より広い人材活用の多様性が可能」と期待する。
ブログサービスなどのサイバーエージェント(東京都渋谷区)も女性社員の平均年齢が二十九歳で、五月から両立支援制度を始めた。在宅勤務の充実に加え、不妊治療に関する専門家の相談を男女ともに月一回受けられる「妊活コンシェル」も、六月から実施している。社員の配偶者も相談でき、利用者数は延べ約六十人。同社広報は「有能な社員の活躍には妊娠そのものへの不安を支える仕組みも必要」と説明している。