衆院解散で廃案となった改正派遣法、2015年10月施行シナリオのワケ

派遣衆院解散で廃案となった改正派遣法、2015年10月施行シナリオのワケ

「臨時国会は、(法案成立のための)環境は良かったのだが」――。厚生労働省の関係者は、このように振り返る(写真)。臨時国会に提出していた「改正労働者派遣法案」のことだ。改正法案は、IT業界になじみの深い「専門26業務」や「特定労働者派遣」の廃止などを含んでいた(関連記事:2015年4月施行で混乱必至、改正労働者派遣法案が臨時国会へ)。

多数の法案が審議される通常国会に比べ、臨時国会では同法案以外の重要法案が少なかった。成立は堅いと見ていたが、小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相の2閣僚の辞任を受けて審議に遅れが生じた。さらに、2014年11月21日に衆議院が解散されたことで、改正労働者派遣法案は廃案となった。

衆院選の結果、与党は公示前と同数の議席を確保した。それでは派遣法の行方はどうなるのか。

前出の関係者は、与党の判断次第と前置きしたうえで、「(2014年の)通常国会も臨時国会も、問題が噴出して法案を通せなかったわけではない。通常ならば、再提出することになるだろう」と話す。「専門26業務の撤廃」や「特定労働者派遣の廃止」といった中身について、大きな方針は変わらない模様だ。

確実に変わるのは施行日である。厚労省は2015年4月施行を目指していたものの、臨時国会で法案は成立しなかったため、4月施行は絶望的だ。前出の厚労省関係者は、「2015年10月が一つのターゲットになる」とする。

「労働契約申込みみなし制度」という落とし穴

背景にあるのが、2015年10月の施行が確定している「労働契約申込みみなし制度」の存在だ。同制度の施行前に、労働者派遣法の改正によって専門26業務の撤廃を実現しなければ、「かなりの確率で混乱が起きる」(厚労省関係者)という。

労働契約申込みみなし制度とは、2012年の派遣法改正で規定されたもの。違法であることを知りながら派遣技術者を受け入れている場合、派遣先の企業が派遣技術者に対して労働契約を申し込んだものとみなす、という内容だ。場合によっては、企業側が派遣技術者全員を直接雇用する義務が突然生じる。

例えば、専門26業務にあたる「ソフトウエア開発」という名目で受け入れている派遣技術者に、単純なデータ入力業務ばかりを任せていると、専門26業務外と判断される場合がある。

図●「 労働契約申し込みみなし制度」と「専門26業務」の関係
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現行制度下では専門26業務外の雇用期間制限は最長3年間という上限が存在する。専門26業務に当たると思い込んで長期にわたって派遣技術者を受け入れて業務外の仕事を任せていると、期間制限違反となる。それが、労働契約申込みみなし制度の対象になる可能性があるわけだ()。

そもそも今回の派遣法改正による専門26業務の撤廃は、制度のシンプル化を掲げたもの。専門26業務に該当するかは各労働局によって判断に差が出る場合もあり、「分かりにくい」と頭を悩ませる関係者は少なくなかった。専門業務の基準が曖昧なまま、労働契約申込みみなし制度が導入されるのは、企業にとってリスクが高い事態と言える。

優良派遣事業者認定制度もスタート

専門26業務の撤廃と並んで改正労働者派遣法の柱となっているのが、特定労働者派遣の廃止である。簡易な手続きで事業を開始できた特定労働者派遣を見直し、全て許認可制へと移行することで、悪質な派遣事業者の退場を狙ったものだ。

実は、これと対になる取り組みも始まろうとしている。厚労省の委託事業である「優良派遣事業者認定制度」だ。

事業者としての経営基盤の安定性や派遣技術者への処遇、派遣先に対するサービス品質など、95のチェック事項に基づいて審査。合格した派遣事業者を、“優良派遣事業者”として認定する仕組みだ。有効期間は3年間で、認定マークの使用などが許可される。

応募は2014年12月19日に締め切っており、早ければ2015年3月にも合格事業者を公表する。厚労省からの委託を受けて、同制度を推進している人材サービス産業協議会(JHR)の川渕香代子事業本部部長は、「まずは100社には合格してほしい」と話す。

認定までの流れは次のとおりだ。まず、第三者機関である「審査認定機関」が基準を満たしているかを判断する。同機関としては、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなど五つの組織が名を連ねる。認定可の判断が下りると、5人の有識者で組織する保証委員会がそれを認証し、優良派遣事業者とする。

JHRは2014年10月から全国7地域で説明会を開催しており、「アンケートの結果、説明会参加企業の3割が申請に向けて準備中と答えている」と、川渕部長は説明する。「IT関係の事業者の関心も高いという印象がある」(川渕部長)という。

優良派遣事業者認定制度のチェック事項は、「雇用安定措置」や「キャリアアップ措置」といった改正労働者派遣法が求める内容に関係したものが少なくない。同法の行方とともに、優良派遣事業者認定制度の中身についても注視する必要がありそうだ。