地方だからできる”再現性のない会社”を目指す~宮崎発ベンチャー「アラタナ」の挑戦

総合地方だからできる”再現性のない会社”を目指す~宮崎発ベンチャー「アラタナ」の挑戦

みなさん、はじめまして。”ネットショップの「今」と「未来」をあつくする”を理念に掲げる「アラタナ」という会社の代表取締役をしている濱渦伸次です。この連載では、アラタナと私、それ以外の企業や人も含めて、地方で会社を経営あるいは仕事をすることについて、現状とこれから実現していく未来についてお伝えできたらと思います。

アラタナは2007年に宮崎で創業し、この7年で100名を超える会社に成長しました。Eコマース一筋に5000社近いお客様にサービスを提供しています。一時期は東京、福岡と支社を拡大してきましたが、昨年度までに全ての支社を本社である宮崎に集約し、100名を超える社員(平均年齢29歳)がここ宮崎の一拠点に集まっています。

よく人から「なんで宮崎なの? 」「よくやってるよね」といったことを言われるので、今回はまず”なぜ宮崎なのか”をお話をさせていただきます。

地方の採用力は東京に勝る!? 地方ならではのランチェスター戦略

アラタナの一番の強みは人。県内外から優秀な人材が集まり”ダイバーシティ”化していることだと思っています。求人サイトにはほぼ出さず、自社サイトからの応募が8割です。クリエイターが全社員の約7割のアラタナがどうやって採用しているか。ちょっとだけその秘密を公開します。

アラタナには苦い思い出があります。創業間もない頃、誰も知らない会社に若者が1人飛び込んで来て、すごい熱意でアラタナに入りたいというのです。嬉しくて嬉しくてしょうがなかったのですが、入社直前に断られてしまったのです。

理由は知名度。地元国立大学の7割が公務員志望という宮崎において、ベンチャーは”悪”なんです。親御さんが反対するです。当時はこれはどうしようもないことだと思いました。でも、なんとかしないといけない!と思い、その対応策として出たアイデアがテレビCMでした。

宮崎は何を隠そう民間のテレビ局が2チャンネルしかありません。NHKいれてたった4局! 要は民間2局をジャックすれば宮崎のほとんどの方に情報を伝えることができるのです。ステキ! しかも宮崎だけであれば想像をはるかに超える激安価格。テレビで採用CMをやれば間違いなく安心してもらえる! そう思い、試しにテレビCMを打ってみたら大当たり。いろんな方から「テレビCMやってるよね? すごい!」とまるで宮崎の大企業であるかのような印象をもってもらうことに成功したのです。

今だから言えますが、当時は社員20人、売上は1,000万そこその赤字企業。大博打でした(笑)。今でもお盆期間や年末年始など、都心で働く宮崎出身者が”帰省”するタイミングでCMをうたせてもらっており、いい反応があります。

その他にも、アラタナ24hというオウンドメディアを使って会社の魅力を伝えたり、チキン南蛮食べ放題面接という訳の分からない企画をやったり(笑)、全国でそこそこ目立つのではなく、自分たちの地域で圧倒的に目立つという、ランチェスター戦略でアラタナは多くの優秀な才能を集めています。

宮崎だけには籠らない! 東京とのデュアルワーク・デュアルライフ

とはいえ、宮崎にビジネスに必要な全てが揃っているというわけではありません。東京は世界一クリエイティブで先進的な都市の一つです。私は宮崎と東京を行き来するのではなく、一年毎に”住所”も変えています。2年前は家族を連れて東京に住んでいましたし、昨年は宮崎、そして今年は東京に拠点を変えています。家族からしたら迷惑すぎる話ですが(笑)。

それでもなぜそういった生活をしているかというと、目線を下げないためです。アラタナは宮崎においてはそこそこの規模の企業になってきてるとは思いますが、東京に視点を移せばどこにでもある会社です。その意味で、東京にも視点を置くことで常に高い目線で仕事し続けることができます。

アラタナが目指す1,000人を雇用する会社をつくるためには宮崎に籠っているだけでは実現できないということも実感しています。人は住む場所、会う人をどんどん変えていくことでいろんな可能性を広げ、チャンスをつかめると信じています。

再現性のない会社を買収する

アラタナが昨年買収した、ファッションメディアのハニカムやセキュリティ企業のゲヒルンもこのデュアルライフがなければ成功させることができなかったと思います。

facebookが今年買収したwhats appや、appleが買収したbeatsは買収額と売上、利益のバランスが取れたものではありません。では、買収の価値がどこにあるのかといえば、再現性があるかないかに尽きると思います。一から投資をして、その存在が再現できるかという点で見るとその2社の価値は図りきれません。アラタナは、未上場ではありますが、自分たちが将来eコマースに必要なものが何かを考えてサービス開発をしています。しかし、自分たちが再現できないものはたくさんあります。ハニカムやゲヒルンをM&Aでグループ化したのはそういった理由があります。

ハニカムは東京で約10年トップクリエイターを集め、ブログメディアとして圧倒的存在感を示してきました。他社が同じように真似をしようとしてきましたが、それを超えるメディアをつくることはできませんでした。

私は将来eコマースにはキュレーションする力が最も必要になってくると思っています。ものも情報も膨大になるにつれ、商品を選び、伝えることそのものにecサイトの価値がでてくると思うのです。いわゆるメディアコマースと私はいっているのですが、発信力のあるコンテンツをつくる力がecサイトに求められると思うのです。ファッションというカテゴリーにおいてはハニカムが圧倒的にその力を持っていると思いましたし、かつ再現性のないものだと感じ買収を決めました。

同時期に買収したセキュリティ会社のゲヒルンも再現性がありません。ゲヒルンは天才エンジニアの石森大貴くんが作った会社で、彼自身も23歳。しかも小学生のときからレンタルサーバーのサービスをやっていたという変態っぷりです。彼を中心に約10名のエンジニアが集い(平均年齢21歳!)、銀行や大手メディアのセキュリティをやっているというのはもはや理解不能です。この会社は絶対に誰も再現できない!と思い、5年間一緒にやろうと口説き続け、仲間になってもらいました。

再現性のない会社を目指す

そんな2社をグループ傘下にいれたアラタナですが、私たちグループもそんな再現性のない企業を目指しています。Eコマースのシステムだけやる会社はたくさんありますし、メディアも多い。ただ、メディアによる集客、キュレーション、システム、物流、セキュリティまで一貫して行える会社はそうありません。しかも本社が宮崎にある。社長は住所不定。なかなか再現性がないと思いませんか?(笑) 私自身これからの展開、アラタナらしさの追求にワクワクしています。