総合市場価値=オファー数じゃない! ネット転職が年収800万円の人を不幸にしていた
機械的なマッチングがミスマッチを引き起こす
インターネットの普及は人材紹介の世界にも非常に大きな影響を及ぼし、企業と候補者のマッチングを素早く、大量に行うことを可能にしました。ただし、ネット転職の隆盛は企業と転職希望者にそうしたメリットをもたらした反面、最近はデメリットも目につくようになってきています。
書面に書かれた表面的な情報だけで機械的にマッチングを行い、企業と候補者がお互いをよく理解しないまま転職が成立し、結果として不幸なミスマッチを招くパターンが増加しているのです。
第二新卒のように若い人たちや職務内容が限定されたスタッフ職の人たちであれば、機械的なマッチングでも多くの機会と出会えるという点でよいかもしれません。
しかし、一定以上のポジションの場合、採用する企業側は本人の適性や志向を見極めなければならず、候補者側も同様にその会社を深く理解する必要があります。それにもかかわらず機械的なマッチングだけで転職してしまえば、うまくいくわけがないのです。
こうした不幸な転職例が目立つようになった背景には、日本の人材紹介市場が抱えている構造的な問題があります。それを理解するには欧米の人材紹介サービスとの比較が役に立ちます。
スタッフとエグゼクティブを同様に扱う日本の人材紹介サービス
欧米の人材紹介サービスはスタッフ層を扱う「スタッフィングサービス」と、エグゼクティブ層を扱う「エグゼクティブサーチ」が明確に分かれています。スタッフィングサービスはジョブディスクリプションと呼ばれる求人票と、候補者がこれまでにやってきた仕事のレジュメをほぼ機械的にマッチングしていく世界で、エージェントはほとんど面談もせず候補者を採用面接に送り込みます。
一方、エグゼクティブサーチは企業が重要なポジションを採用するときに使うサービスで、エージェントは企業側のニーズを深く把握するとともに、候補者としっかり面談して志向性や本当の実力を把握し、そのポジションにふさわしい人を企業に紹介していきます。
両者は報酬体系も異なり、スタッフィングサービスは成功報酬で年収のおよそ10%から20%にとどまるのに対し、エグゼクティブサーチは年収の35%から50%相当の前金となっています。前者の業務は情報のマッチングサービスですが、後者は一種のコンサルティングフローになっているため、業務の内容に応じ異なる報酬体系になっているのです。
ところが日本の人材紹介サービスをみると、スタッフィングサービスもエグゼクティブサーチも一緒くたにされている感があります。正確に言うと超エグゼクティブ層を対象としたエグゼクティブサーチのマーケットは存在していますが、問題はスタッフレベルと超エグゼクティブ層の中間にいる人たちがネット転職の世界に巻き込まれていることです。
年収でいうと800万円から1500万円くらいの間に位置する人たちでさえネット転職でスタッフィングレベルのサービスしか受けられず、不十分な情報しか得られなかったためせっかくのチャンスをムダにしたりいい加減な転職をしてしまったりするケースが起こっています。企業も候補者もお互い、こんなもったいないことをしていてはいけません。
もちろん、しっかり情報提供しているエージェントもあります。宣伝のようで恐縮ですが弊社を例にとると、事前にしっかり面接を受ける企業や募集しているポジションに関する情報を提供し、企業の課題や採用の目的、経営者の人となりなどの情報もお伝えします。また必要であれば面接におけるコミュニケーショントレーニングも行っています。
これだけ手間と時間をかけるのは企業と候補者の双方がしっかりコミュニケーションをとり、お互いを正しく理解してもらうためです。十分な情報を提供すれば内容の充実した面接を行うことができ、ちゃんとコミュニケーションが取れれば正しい判断を下せるようになり、幸せな転職ができる確率が数段上がるからです。
「オファーの数が市場価値」は大いなる勘違い!
転職サイトに登録するだけで大量の求人オファーが来ることは転職希望者にとって一見、よいことのように見えますが、その中には「数撃ちゃ当たる」式のいい加減なオファーが少なくありません。よい情報を提供してくれると感じるエージェントがあれば面談に行くとよいですが、連絡があった先着順で会いにいくような使い方はやめておくべきです。
候補者の方とお話していてよく感じるのは、「求人オファーをたくさんもらえると嬉しい」人が多いことです。いっぱいオファーがあるのが自分の市場価値の証明だと思っているようですが、それは大いなる勘違いです。
結局、一人の人が就職できるのは一つの会社だけで、重要なのは案件の数ではなくその内容です。これは結婚と同じで、必要なのは自分にとってベストな一人の相手であり一つのポジションです。たくさんの異性にキャーキャー騒がれて嬉しい気持ちはわかりますが、それに惑わされてはいけません。
そして自分にとってベストなポジションを探すには大量のオファーの海に一人で溺れるより、自分が属している、あるいは興味のある業界のプロフェッショナルで、かつしっかり相談に乗ってくれる転職コンサルタントやエージェントを見つけるほうが近道です。