女性が管理職になれない、極めてシンプルな理由

女性雇用女性が管理職になれない、極めてシンプルな理由

いわゆる「アベノミクス成長戦略」の柱の一つとして、ここ1~2年盛んに話題に上るのが「企業の女性活用を推進するように」という動きです。内閣府は、「女性の活躍『見える化』サイト」(参照リンク)というページを設けて(ここでは「活用」ではなく、女性の「活躍」となっています)、企業の中で女性がどの程度活躍できているのかを可視化しています。

このページは興味深いデータが満載で、例えば「新卒入社者の定着状況」なる数字ひとつをとっても面白いのですが、今週の話題は、「女性の活躍について」。女性の活躍度合いを示すデータを中心に見ていきましょう。

政府では、「数年後には組織の重要なポジションに3割程度、女性を配置するように」という目標を掲げていますが、実際のところ、どうなのでしょうか。企業の人事担当者などに話を聞くと、以下のような声が聞こえてきます。

「難しいですよ。残念なことに、管理職に配置する人間として、女性の中に適材がいないのです」

シンプルな一言です。もちろん、あくまでケースバイケースであり、世の中には管理職としてバリバリ働いている女性は大勢いますし、逆に管理職になれない男性もたくさんいる。単純に「女性には管理職に配置する適材がいない」という印象論では話が先に進まないなと考えていたところ、労働政策研究・研修機構が「採用・配置・昇進とポジティブ・アクションに関する調査」という面白い調査をしており、その結果の速報版を10月14日に出しているのを見つけました。

女性は管理職になる前提で雇用されていない?

「採用・配置・昇進とポジティブ・アクションに関する調査」<速報版>(参照リンク)には、気になる数字がピックアップされ、紹介されています。例えば、「2014年春卒業の新規学卒採用者の女性の割合」というデータ。

ay_sakata03.jpg2014年春卒業の新規学卒採用者の女性の割合(出典:労働政策研究・研修機構 / 採用・配置・昇進とポジティブ・アクションに関する調査<速報版>)

まず、企業が新卒を採用する割合が、女性は男性を下回っています。さらにこの調査を見ると、管理職以上への登用の途が広く開かれている採用区分、つまり総合職で女性を雇用している企業は、100人以上の企業で4割弱、それ以下だと3割程度しかありません。

そもそも入り口からすでに女性は男性と比較して少なく採用されている。しかも、管理職にするという前提で採用されていない女性が、いまだに一定数いるということです。「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」、通称「男女雇用機会均等法」ができて、約30年という年月が流れました。緩やかには改善されているものの、実態は2014年の新卒採用時点でもなお、これだけの男女「区別」がされているのです。

管理職としての教育をしてこなかった

さらに興味深いデータがあります。係長職以上に相当する役職に女性がついている割合が低い企業に、その理由を質問した結果です。

ay_sakata04.jpg女性の割合が30%未満の役職がある理由(出典:労働政策研究・研修機構 / 採用・配置・昇進とポジティブ・アクションに関する調査<速報版>)

「取引先や顧客が管理職として女性を希望しない」という回答が存在することにも驚きますが(少数ですが)、それ以上に注目したいのは、「管理職世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の配置・育成が同世代の男性と異なっており、必要な知識・経験・判断力を有する女性が育っていない」という回答が上位にあることでしょう。

入り口で男女の比率に差がある採用をしている、さらに入り口の時点で「管理職にしない」という前提で採用されている(もちろん、自ら希望してそれを選んだ女性がいることは承知しています)、さらに実際に管理職になる教育もしていないため、

「残念なことに、管理職に配置する人間として、女性の中に適材がいないのです」

という、この記事の冒頭で紹介した人事担当者の言葉になるのです。当然の結果といえばその通りなのですが、女性には管理職としてふさわしい人材がいない、ということではなく、構造的に「そうなってしまっている」可能性があることを、このデータは示しています。

「ロールモデルがいない」と嘆いている働く女性たちは多い

このコラムの読者である中間管理職の皆さんは「これはまずいことになりそうだ」と、状況を注視するとともに、自分は何をするべきなのか、少し考えておく必要があります。

まず考えるべきは、管理職へ配置するのにふさわしい世代の女性の中に、管理職になるための教育を受けていない人がたくさんいるということ。

だから管理職にしない、という従来の対応策では、これからは済まなくなってきます。「女性管理職を3割に」といった、政府による数値目標が今後設定された場合、能力がなく資質もない女性が、そのポジションへと登用される可能性が出てきます。その結果、与えられた職務をまっとうすることができずに、結果として「やはり女性は使えない」という烙印が押されてしまうケースも想定できます。

事態が進むと「お飾りでポジションを与えておけばいい」という風に、本来の目的を骨抜きにしてしまうことも起こるでしょう。もし、自らの預かる職場でお飾り女性管理職を抱えることになったら? そう考えると、頭が痛くなるはずです。

さらにそういう状態は、別の不幸も生み出しかねません。以前、ある女性から今後のキャリアについて相談を受けた時に、こんなことをこぼしていました。

「自分の会社には、ロールモデルになる女性がいない」

先輩だから敬いたいし、仕事においても参考にしたい。けれども、先輩は出世欲もないし、そもそもそういうポジションについていない(あるいは、つかせてもらえない)ので、あまり自分の参考にはならない。

「そんなこと言っているやつに出世はできない。異性の先輩はたくさんいるのだから、それを見習えばいいじゃないか」という男性の声も聞こえてきそうですが、それができれば苦労はしません。先輩の女性にしても、自分とは違う考えの働き方を志向している後輩女性と接するのは骨が折れるし、そもそも何をアドバイスしていいのか分からないケースも多くなる。

あなたにできること、それは女性部下の「育成」

だからといって、一管理職が何かできるのかというと、確かにできることはそれほど多くない。組織の問題であり、構造的な課題だからです。けれども、一人でもできることはあります。それは「育成」です。

体系立てて教育をすることは難しくても、管理職になるために自らが学んできたこと、そして経験してきたことを、自分の部下に教えることはできるはずです。学ばせなかったから、経験させなかったから、女性は管理職になるために必要な資質を備えていない、と周囲に言わせないためにも、あなたがサポートしてあげて欲しいと、私は考えています。……そう、制度が整うまでは。

ay_sakata02.jpg労働政策研究・研修機構「採用・配置・昇進とポジティブ・アクションに関する調査」<速報版>

今回紹介した調査速報(参照リンク)は、細かく見ていくともっと興味深いことに気づくはずです。関心のある方はぜひご自分でもじっくり読んでみてください。