安定志向のクリエイターが増えている? キャリアアップができる人の条件

総合安定志向のクリエイターが増えている? キャリアアップができる人の条件

就職や転職に関する相談を受けたり、マスメディアン登録者の動向を見たりしていると、「安定志向」「生活優先」を求める動きが最近とくに多いことに気が付きました。「アートディレクターのトップランナーになりたい」「世の中を動かすコミュニケーションをつくりたい」という気概や野心を持つ人が少なくなっている気がします。これはクリエイターに限らず、さまざまな分野で同一のことがいえるかもしれません。

20代後半だとデザイナー、プロダクションマネージャー、コピーライター、プロデューサー、アートディレクターの順番で年収が高くなるが、30代前半になるとプロダクションマネージャーがコピーライターを抜く。

一つの理由には、デジタルによる業務効率化によって仕事のスピードが増し、時間が短縮した分、さらに別の業務が増えることなどから、一人当たりの業務総量が増え、業務内容も広がり、複雑化しているからだともいえます。

そういった流れからか、「クライアントと直でやり取りする仕事に取り組みたい」あるいは、「広告主企業側でコンセプトや方向性を定めるところから携わりたい」と制作の上流から関わっていきたいというキャリアアップを考える人が増えています。

しかし、転職したからといって、希望通りに事が進むかというと、必ずしもそうではありません。首尾よく宣伝部に配属されたとしても、営業部が吸い上げてきた情報や、重役が決定した事項を制作会社に伝える“ハブ”としての役割になることだってあります。実際にクリエイティブを担当するのは制作会社です。上流から携わるのは、なかなか難しい。

上流から携わりたいのであれば、自ら考えたアイデアを形にする力を磨いていかなければいけません。デザインの力だけを極めてキャリアアップするデザイナーはほとんどいません。道筋としては、独立するか、会社を立ち上げる。広告会社や制作会社でCDやAD、あるいはプロデューサー的なポジションにつくという選択肢もあります。数は多くありませんが、広告主企業の宣伝部に進む方向もあります。

ただ、デザインだけをするのではなく、クライアントから課題を引き出したり、大きな方向性を定めたりする、コミュニケーション能力が必要とされます。それはCDやAD、さらに企業の宣伝部など、制作の上流に行けば行くほど、求められるスキルです。地域活性化プロジェクトや都市開発、商品開発やネーミングにクリエイターが携われるのも、自ら課題を見つけ、それを解決する能力があるからだと考えられます。力があれば、下請けではなく、対等な仕事を請けることもできます。

基本的に制作の上流に携わる人は、営業やマーケティングで研ぎ澄まされたスキルを身に付けている人であって、デザイナーも同様、その力を持っていない限りはステージを上げることは難しいと思います。突き詰めたことを成し遂げた人だけが唯一到達できる領域。それこそがキャリアアップだと思います。

優れたアートディレクターは優れたマーケターでもある

クリエイターの仕事は感性をつかさどる右脳が強いといわれますが、自ら課題を発見していくには左脳も鍛える必要があると思います。左脳を鍛えて経営感覚を養うことで、ビジネスを理解することができ、課題を引き出すことができるようになります。優れたアートディレクターは優れたマーケターでもあります。

優れたデザインを制作する人は多くいます。しかし、消費者のインサイトはどこに向いていて、いまのマーケットに何が求められているのか、どのくらいの予算で制作すればいいのか、何をつくればクライアントの売り上げに貢献できるのか、そういう指標をつかむ力を持ったデザイナーはほとんどいません。では、どうしたら良いのか?その力をつけるには、積極的にクライアントやCD、ADとコミュニケーションを取ることが必要です。

なぜこのデザインなのか、問題の本質はどこにあるのかを、他人の考えに照らしながら、自分なりに考えてみる。広告とは自分だけの世界だけでつくるものではありませんから、外にも目を向けることが必要だと思います。たとえば、アップルのiPhoneが売れたのは、インターフェイスの使いやすさ、見た目のシンプルさだと思いますが、これは何が一番使いやすいのかを追求した、ユーザーエクスペリエンスの極みであると思います。

今求められるのは、なにごとも突き詰めて進められる人です。文字一つをとってもmm単位で突き詰めて考える人はほとんどいないと思います。そういう人はどこへ行っても重宝されると思います。

キャリアデザインとは働く場所を変えていくことではなく、自分ができることを増やしていくことです。そして自分なりにイメージした将来から何が足りないのかを考え、やるべきことをやる、それにつきるのではないでしょうか。