総合外国人労働者、日本に見切り 生活支援し門戸を広く
兵庫県伊丹市の特別養護老人ホーム、あそか苑。働きながら日本の介護福祉士資格を取るはずだった30代のフィリピン人女性職員が切り出した。「言葉の心配が要らないイギリスに行きます」
■試験受からない
「日本は人材争奪戦に負けつつある」。理事長の河原至誓(31)は痛感する。2013年度に来日したフィリピン人介護士は87人。経済連携協定(EPA)を結んで門戸を開いた09年度の半分以下だ。いまは米英やカナダに向かい、フェイスブックには彼女らの「日本の試験は受からない」との書き込みがあふれる。
労働力を補う処方箋として外国人への期待は大きい。だが日本は専門職や日系人ら一部を除いて外国人を労働者として受け入れておらず、研修や留学の傍らで働くことを容認しているだけだ。
韓国は10年ほど前にカジを切った。企業が求人を出しても採用できない場合に外国人の雇用を認める制度を導入した。人手不足を解消する労働力として外国人をきちんと位置づけ、最長で10年近い就業を認める。
研修か労働か。日本も姿勢をはっきりさせないと外国人の日本離れが広がりかねない。コンビニや飲食店を支える留学生は3年連続で減った。「就労ビザが取りやすいシンガポールやマレーシアに流れた」(日本学生支援機構)ためだ。
「時給が最低賃金より安い」「パスポートを取り上げられた」。全国の労働基準監督署には、建設や農業などの現場で働く技能実習生からの相談が絶えない。昨年の調査では受け入れ企業の8割で法令違反があった。労働者としての位置づけを明確にすれば、労働環境の改善にもつながる。
「選ぶ立場」から「選ばれる立場」に変わってきた日本。日本総合研究所調査部長の山田久は「日本が突出して賃金が高い時代は終わり、外国人に来てもらうための制度づくりが必要」と話す。
日系ブラジル人を受け入れてから四半世紀になる群馬県大泉町。福祉担当者の悩みは彼らの「老後」をどう支えるかだ。町で生活保護を受ける3人に1人はブラジル人ら外国人。「年金に入っていない人は生活保護に流れ込む」(福祉事務所)
■選ばれる国に
外国人は働くだけでなく、子どもを育て、病気になり、老いる。年金、医療、教育……。日本が「選ばれる国」になるには、少なくとも日本人と同じ生活をおくることができる仕組みが必要だ。
さらに踏み込んだ議論の余地もある。内閣府が2月にまとめた推計では、出生率を2.07まで上げても60年時点の人口は9894万人まで落ち込むが、出生率向上と同時に移民を毎年20万人受け入れると1億1千万人程度を維持できる。
日本で働く外国人は13年に約71万8千人で前年より約3万5千人増えただけだ。外国人を日本に呼び込むにはどうするのか、移民も選択肢の一つとして幅広い国民的な議論が必要だ。
