ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される

総合ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される

日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用とはどういったシステムかを解説していく。今回は、アメリカで採用されているジョブ型雇用の実際の仕組みについて。

ついに日本でも始まる
アメリカの「ジョブ型雇用」とは?

今後の日本を占ううえで、大きな指針となるのが、アメリカの「ジョブ型雇用」です。アメリカでは、日本のように新卒一括採用はありません。通年で、ポストに空きがあれば、一般公募か社内公募によって労働者を採用します。

ジョブ型雇用で重視されるのは、雇用主が請け負ってほしいジョブに見合うだけの「経験、スキル」です。

企業から不要と見なされれば容赦なく解雇されるため、労働者は自分の力でキャリアを形成することが求められます。「転職は当たり前」の世界です。

能力がある人は、転職を繰り返して、給与やスキルをどんどん上げていきます。

「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度、それがジョブ型雇用と言えるかもしれません。

では、アメリカのジョブ型雇用とはどういう制度であるのか、そして、それを支える社会の仕組みはどのようになっているのかを見ていきたいと思います。

今後の「仕事とキャリア」を考えるうえで、大いに参考になるに違いありません。

ジョブ型雇用では
社員は「3つの階級」に分けられる

 アメリカの「ジョブ型雇用」の説明をしていく前に、まず、アメリカの雇用がどのような構造になっているかを見ていきましょう。

アメリカの雇用は、ピラミッド型の3層構造でできています。

一番上は、上級職員です。経営、企画、管理等の職につき、二番目に位置する中級職員に命令を下す人たちです。アメリカでは、上級職員は「エグゼンプト」と呼ばれています。

彼らが行なう仕事は、時間を掛ければ成果が出るというものではないので、労働時間で管理されることはなく、残業代も出ません。彼らの給与は月給制や年俸制で、雇用契約を結ぶ時に、上司と上級職員が交渉して決まることになります。

アメリカでは、事務系ならMBA、技術系なら工学修士の肩書を持った人が応募資格を持つ職位となっています。

この上級職員レベルの人達は、将来の幹部候補生たちです。上昇志向が強く、大変よく働きます。

彼らは、数年おきに多様な職務を経験しながら昇進していきます。財務部門の幹部候補生なら、本社で会計業務をやり、次は税務を学んで、最後に海外法人のCFO(最高財務責任者)もやって、本社に戻ってきてマネジャーやダイレクターのレベルに昇進していくというイメージです。

ある程度分野は限られていますが、後で述べる中級職員や現場労働者のように、会計業務の入力作業だけとかのジョブに縛りつけられているものではありません。いろいろな部署を経験するのですから、ジェネラリストに近いところがあります。

上級職員は、会社から高いパフォーマンスが求められます。彼らはその要求を満たすために昼夜を問わず必死で働き、うまく行かなければ、あるいは、自分の思うように出世できなければ、サッサと転職していくというイメージです。

私もアメリカのコンサルティング会社に勤めていましたが、同僚のアメリカ人は、深夜まで必死に働いていました。早くマネジャーになりたい、早くパートナー(役員)になりたいという強い願望を持っていました。しかし、いくら働いても、エグゼンプトですから、残業代は出ません。

上級職員は、自らの創意工夫で仕事を進めていきますので、会社に対する貢献度に大きな差が出てきます。査定においても、大きな差がついてきます。

中級職員、ブルーカラーは
査定も少なく仕事も定型的

二番目が、中級職員です。アメリカでは、「ノンエグゼンプト」と言われており、事務職員や中級技術者等の実務的な職務を行なう人々を指します。

彼らは、3層目の現場労働者とは違い、肉体労働をすることはないのですが、上級職員から命じられた定型的な職務をこなします。給与は残業代込の月給制が多く、命じられた仕事を済ませて定時に退社するのが普通です。

決まりきった仕事を黙々とこなしているので、査定で大きな差をつけられることはありません。

学歴的には、かつては2年制カレッジや専門学校の卒業生が多かったのですが、近時では4年制大学卒業生が増えてきています。

三番目がブルーカラー労働者です。彼らは、時間制で働き、給与は、その担当するジョブによって決まっている日給や週給をもらいます。アメリカ映画を見ていると、工場労働者がペイデイと言われる給与が支払われる日を楽しみにしているシーンが出てきますが、それがまさにこのことです。

義務教育卒、高校卒の者が多く、中級職員への昇進のチャンスは限られています。時間制で働いていますので、残業をすれば残業代が時間単位で支払われます。しかし、中級職員同様、査定で大きな差をつけられることはありません。

中級職員が同じ社内で
上級職員に上がるのは難しい

アメリカでは、こうした3層構造がハッキリとあるお陰で、各レベルの職務がかなりの程度標準化しています。

たとえば、製薬会社に勤める財務専門の上級職員は、自動車や菓子を製造する会社の財務ポストに転職していけます。中級職員であっても同じで、他社の中級職員の同じようなポストに転職していくことは容易です。

しかし、中級職員が同じ会社の中で上級職員に上がるのは容易ではありません。

私の経験してきたことを振り返ってみると、欧米の企業の人とビジネスをしていると、中級職員の中で夜間MBAコースに通っているという人、大学を出た後に中級職員として2、3年勤務した後に退職して大学院に通い直す人に出くわすことがありました。これは職位の高いポジションを手に入れるために、上級職員へのパスポートである学歴を手に入れるためのものでした。

こうしたピラミッド型の3層構造が、雇用の基本形であり、欧米では、今もそれが残っています。日本のように、上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった世界とは違っています。