女性雇用女性活躍の推進と「キャリア形成への決意」の必要性
2019年4月からの「働き方改革関連法」の施行にあたり、人事の具体的対策を解説する連載「社労士が解説 働き方改革のポイント」。
今回は、働き方改革の中の「女性活躍の推進」について解説します。日本ではいまだに進まない女性活躍の問題に企業や個人はどう向き合うべきなのでしょうか。企業の取り組むべき対策や個人に求められるキャリア形成への考え方についてまとめました。
日本ではなかなか女性の活躍が進まない
女性活躍の必要性はさまざまなところで唱えられています。育児・介護休業法は数回の改正を経て、現在では欧米並みに充実したものになってきたと言われています。1986年に施行された男女雇用機会均等法から、2015年に制定された女性活躍推進法に至るまで、男女の機会平等についてはさまざまに制度化されてきました。
しかし、それでも「女性の活躍が進んでいない」という意見もいまだに多く聞かれます。2018年12月に、内閣府男女共同参画局も参考指標として採り上げている世界経済フォーラム(WEF)の最新指標において、日本のジェンダー・ギャップ指数が144カ国中110位でした。昨年の114位より順位の向上は見られるものの、いまだに大きく改善しておらず、女性の地位の向上ができていないということが示されました。
同調査は女性の地位を経済、教育、政治、健康の4分野で分析し、ランキング化したものです。日本は平均余命や教育については1位である一方で、政治家や経営管理者数・大学教授や専門職数・賃金格差などの項目で100位以下であり、総合順位が大きく下がる結果となりました。また国内を見ても、女性の就業率は高まっていますが、非正規就業者の率が男性よりも高い水準にあります。男女間の賃金格差は主にここから生じており、割合がなかなか変わらないことも大きな問題だと言われています。
結婚・出産後の就業意欲の低さが原因?
このような女性活躍の議論について回るのが「男性は仕事をして、女性は家庭を守る」という、いわゆる「性別役割分業意識」です。この考え方は「サラリーマンと専業主婦からなる核家族」が大半であった戦後日本の家族のあり方を支えてきました。ただ、今後は時代の変化とともに「変えなくてはいけない」と言われ続けています。
では、どう変えればいいのでしょうか?
先に見た「管理職や専門職の比率・非正規就業の多さ」などの指標は、スポットで労働力を提供するような、いわゆる典型的な非正規雇用と聞いてイメージされるような働き方では高めることが難しいものです。専門性を向上させたり、キャリアアップを図ったり、組織のマネジメントを習得したりといった継続的な自助努力が必ず必要になります。
研究機関のデータによると、中国・台湾・日本の女子大学生に行った、就業に関する意識調査で顕著に違いが出たのが「結婚・出産しても仕事を続けたいと思いますか」「金銭的な余裕があっても、仕事を続けたいと思いますか」という2つの項目でした。

参考文献:葉山 彩蘭ほか(2014)「女性の働く意識に関する研究比較:日中台における女子大学生の意識調査に基づく」国際経営・文化研究 18号
日本の女子大学生は、中国・台湾の女子大学生と比較すると、結婚出産後や金銭的な必要がない場合の継続就業欲求が顕著に低くなっています。
なぜこうした意識になるのかについては多くの理由があると思います。しかし、主体的なキャリア構築と就業継続を、女性の方ひとりひとりが決意することが必要だということは間違いないと思います。そして、そうした意識変革を後押しするために、企業や社会全体でこの問題に対応するべき余地が大いにあると思います。
※関連:女性活躍の課題は男性優位の企業風土―「女性活躍推進研究 調査結果 記者発表会」レポート
企業が取り組むべき対策
多様な働き方の実現を進めることが働き方改革の軸で、これは企業にとっても合理的なことであり、また義務でもあります。特に女性活躍に関係があるポイントを紹介します。
これらの中には、積極的に活用した場合の助成措置も色々な形で定められています。メリットを実感するために社会保険労務士などの専門家を、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
育児・介護休業法などによる家庭生活との両立支援
先に触れたように、育児・介護休業法が一層充実し、事業主から制度自体を周知することや、不利益取り扱いをしないことが義務化されています。法的な義務であるため、事態が起こるまで放っておくような対応は大きなリスクになります。社内で事前申請を行うといった運用を決め、早めに対応する体制を作ることが必要です。
また、制度の整備が進んだ企業に対する「くるみん認定」という認定制度があります。
参考:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!!!平成30年10月)
セクシャルハラスメント・マタニティハラスメントの禁止
セクシャルハラスメントは、これまでも男女雇用機会均等法によって禁止されていましたが、多様な働き方の確保のため、一層徹底した措置が求められます。それに加えて育児・介護休業法の改正により、事業主にマタニティハラスメントの防止措置が課されることになりました。妊娠や出産に関する制度を利用しようとした社員に不利益な取り扱いがされることを防止する措置が義務になります。
※関連:セクハラのない職場づくりのために人事が取り組むべきこと
女性活躍推進法による一般事業主行動計画の設定
働き方改革の中で、300人以上の社員を雇用する企業では、女性活躍を推進するための行動計画の策定が義務化されました。人数要件については引き下げが検討されているとの報道もありました。
また、女性の活躍に特に注力している企業に対し「えるぼし認定」という認定制度があります。
同一労働同一賃金の法制度化
これまで日本企業の多くは、採用の時点で一般職と総合職でキャリアを区分し、総合職を中心に経験を積ませて人事管理をしてきました。こうした区分が特に男女の間で行われている場合は、既に男女雇用機会均等法によって差別が禁止されています。
また2020年4月以降は、同一労働同一賃金の法制度化により、有期雇用労働者と無期雇用労働者の区分も禁止され、労働に紐づいた賃金の徹底が一層進むことになります。
以上のような法令や政策を意識し、女性が前向きに活躍できる組織を作っていくことは、どの企業でも必要です。
※関連:社労士が解説 同一労働同一賃金の法改正のポイントと企業がいま行うべきこと
個人に求められるキャリア形成への決意
いかに企業や社会の基盤が整備されたとしても、ひとりひとりが働くことに前向きにならなくては、その基盤も生かせません。会社など組織や他者に依存せずに、自助努力によって前向きなキャリア形成を行う決意が必要です。これは女性だけの問題ではなく、全ての人にとって重要です。
ひとりひとりがキャリア形成への自助努力の決意をし、自立的に働き、結果として生産性が向上し、少子高齢化による構造的な問題を解決することが「働き方改革」が目指す、最終的な成果なのです。これをひとりひとりが日々進めていくことで、はじめて改革の成果が実るのだと思います。