総合グーグルVS.ウーバー 法廷対決の裏に人材獲得競争
米ライドシェア最大手のウーバーテクノロジーズとグーグルが自動運転技術の正当性を巡って法廷で「衝突」している。元技術者が転職先のウーバーに機密情報を漏らしたのではないかというグーグルの訴えが発端だが、ウーバーは全面否定している。まだ事業化すらしていない自動運転分野での係争は、人材の取り合いを含めた水面下での激しい競争を物語る。
■「技術者が機密漏洩」と主張
5日にサンフランシスコの連邦地裁で審理が始まった。発端は16年後半、グーグル系の自動運転開発会社のウェイモが部品メーカーから誤って受け取ったウーバーのセンサーについての電子メールだ。そこに自社技術が使われていることに気づいたウェイモがウーバーの動きを調べ、今回の裁判に発展した。
約2週間続くとみられる裁判の論点は「本当にウーバーがウェイモの技術を盗用したのか」。グーグルはウーバーが16年にウェイモから引き抜いた主要技術者のアンソニー・レバンドウスキー氏が1万4000点のファイルを盗んだと主張。センサー開発に必要な「営業秘密」がウーバーにわたったと主張している。
5日の審理ではウェイモ側の弁護士がウーバーの創業者で前最高経営責任者(CEO)のトラビス・カラニック氏とレバンドウスキー氏の電子メールのやりとりを公表。カラニック氏はゲーム用語の「チート(だます)・コード」という言葉を使っており、「法を犯してでも」(ウェイモ)自動運転で先を行こうとする同社の無節操さを訴えた。
一方のウーバーはグーグルが主張するファイル盗難は「全く重要でない」と反論。グーグルの知財はウーバーのセンサーに「一切使われていない。ゼロだ」と全面的に争う構えを示した。
■過熱する人材獲得合戦
裁判そのものはグーグルとウーバーの争いで、今後は「営業秘密」の有無を証明しあうことになる。ただ、もうひとつ見逃せないのは、両社の応酬を通じて、優れた人材の獲得競争が過熱していることが浮き彫りになったことだろう。
シリコンバレーでは優秀な人材はライバル企業間を渡り歩く傾向が強い。「報酬を上げる最短手法」(グーグルのある技術者)であるほか、「ひとつの会社にずっといると無能と思われる風潮もある」(ベンチャーキャピタル幹部)からだ。
特に人工知能(AI)を中心に人材不足が指摘される自動運転の分野はこれが顕著で、今は巨額の報酬で人を「買収」する動きが活発だ。
フォードは17年2月、5年間で10億ドルをAIベンチャーのアルゴAIに投資すると発表したが、目的はロボティクスで優れたカーネギーメロン大学とグーグルでの幹部経験があるブライアン・サレスキー氏の獲得。現在、フォードの自動運転開発チームには同氏に連なるグーグルからの転職組が複数いる。
トヨタ自動車も16年1月に5年で10億ドルを投じて自動運転のソフト開発をシリコンバレーで始めると発表したが、かなりの費用が米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)のギル・プラット氏の獲得にあてられたとされる。AIの権威とされるプラット氏はグーグルも採用を検討していた。
■メールににじむグーグルの危機感
こうした人の取り合いは今や業界のトレンドの域を超え各社の戦略の要になりつつある。19年には米ゼネラル・モーターズ(GM)が買収したベンチャー企業を通じてハンドルの無い自動運転車を実用化する計画。世界最大手の独フォルクスワーゲン(VW)は元グーグル幹部のクリス・アームソン氏と組み21年の自動運転車の投入を目指している。
この日公開されたメールにはグーグル時代のクリス・アームソン氏が人材獲得でウーバーに先を越されていることへの危機感をラリー・ペイジ氏ら創業者に伝えるくだりがある。「次の革命でヘッドラインになるか脚注になるか。正しい選択をしないといけない」。
最強といわれたグーグルも焦りを隠せない自動運転の開発。二大巨人が演じる法廷劇から垣間見えるのは仁義などない競争の最前線だ。

