ドライバーに女性採用、社長が旗振り(働き方改革最前線)

総合ドライバーに女性採用、社長が旗振り(働き方改革最前線)

海上コンテナ輸送を手掛ける桜運輸(愛知県弥富市)は、70人の社員のうち2割が女性だ。その1人、山田真理さんは小学校に通う7歳の息子、幼稚園に通う4歳の娘を育てながら大きなトレーラーを操る。

桜運輸で働く山田さん(左)と細江社長

桜運輸で働く山田さん(左)と細江社長

独身の時もバスやトラックのドライバーとして働いたが、時間が不規則だったので結婚を機に退職した。運輸業界に戻るきっかけは桜運輸が「女性の働きやすい職場作り」に意欲的と知ったからだ。「お子さん優先で働いてください」。採用面接の時に言われた言葉が心に強く響いた。

勤務時間は通常より短い。朝8時に出社し夕方4時半には退社する。「今はパートだが、子どもが大きくなったら正社員として働く時間を長くしたい」と話す。

典型的な「男社会」だった運輸業界で女性を活用できないか。人手不足に悩む細江良枝社長が旗振り役となり「女性に優しい会社」のアピールに動き出した。家族の事情に合わせて勤務時間を短くする制度を採り入れ、女性管理職が悩みを聞く仕組みも作った。

思った以上の反響があり、中途採用の増加につながった。「大きなトレーラーを動かしたいと思っている女性が多いと知った」と細江社長は振り返る。子どもを持つ女性社員も多く、安全意識の向上や職場環境の改善といった効果も生まれたとみている。

「人口減が進む中で、中小企業こそ多様な人材を生かす努力が必要だ」。大橋運輸(愛知県瀬戸市)の鍋嶋洋行社長はこう強調する。約100人の社員のうち20人が女性だ。さらに外国人や障害者、性的少数者(LGBT)などの多様なバックグラウンドを持つ人材の採用にも積極的だ。

家庭と両立できるよう週3日勤務を認めている。性別にとらわれず使える「だれでもトイレ」を社内に設置した。入社希望者のエントリーシートに性別記入もなくし、障害をもつ従業員には社長自らが相談にのった。

こうした背景には会社自身が改革を迫られた面が大きい。人手不足の一方、荷主からの運賃の値引き圧力が強まるなかで、遺品整理や生前整理など新規事業を育成している。これまでの人材だけでは生き残れない。危機感が後押しした。

多様性は新たな商機を生み出している。回収した中古家具などを海外に輸出するリサイクルビジネスが実現したのは外国人社員の奮闘のおかげだ。週3日労働で子育て世代の優秀な女性社員を採用できた。入社希望の問い合わせも県外や海外から来るようになった。

ドライバーなど労働力不足による従業員の長期間労働問題は深刻だ。9月初めには愛知労働局が長時間労働を改善しなかったとして名古屋市の運送会社の社名の公表に踏み切った。多様な人材を活用する職場環境の改善は待ったなしだ。

愛知県トラック協会は今年を「改革元年」と位置づけている。小幡●(かねへんに長)伸会長は「運送は産業の血液。70歳まで長く元気で働ける仕組みをどう作るかが急務だ」と話す。

景気が底堅いゆえに人手不足感が強い中部。とくに深刻な働き手不足に直面する業界の働き方改革を追う。「労働力の課題先進地域」中部の動きは全国の指針にもなりそうだ。

■長時間労働 改善進まず
トラックドライバーやバス・タクシーの運転手は長時間労働が慢性化している。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2016年)によると、残業時間は全職種の平均に比べ2~3倍長い。人手不足のなかでなかなか改善が進まない。
他業種に比べ法令上、長時間労働に対する規制が緩いのも要因だが、長く続いた商慣行も障壁になっている。国土交通省によると、荷待ち時間が長かったり、客先での検品や荷造りの作業に時間がかかったりするケースも多いという。働き方改革には、運送業者だけでなく、荷主側の理解も不可欠だ。