総合介護や育児、副業…時短勤務でもキャリアを磨く働き方
育児や親の介護、副業・兼業、学びのためなど、「短時間で働く」ことが必要な人が増えている。一方で、現在の日本では正社員や契約社員の短時間勤務が認められるケースは少なく、逆にパートタイムになると職種が限定され、専門性やスキルを生かしにくいという問題がある。企業が人手不足に悩む中、「専門性を生かして短時間で働く」という選択肢はないのか?
さらに、キャリアアップへの道筋は? リクルートグループが導入した「ZIP WORK(ジップワーク)」という働き方も紹介し、その背景と今後の方向性を考察する。
■専門性を持つ人の働き方と労働時間
あなたにはどんなスキルや専門性がありますか? 資格職や専門職はもちろん、語学や様々な知識を生かして働くことにやりがいを感じている方も多いことと思います。
では、「専門性を生かして働く」といったときに、どんな働き方をイメージするでしょうか? 社内にその専門性の高い業務を代わってもらえる人がおらず、難しい仕事を数多く任せられて、労働時間が長いイメージではないでしょうか。
一方で、親の介護や育児などで時間的な制約ができたとき、専門性を生かし、磨きながら、同じような働き方を続けられるでしょうか? 限られた時間で働く(短時間勤務)という前提で仕事探しをすると、途端に専門性を生かせる仕事が見つからなくなり、仕方なくそれまで培ってきた知識やスキルを封印して働く、という人が多いのが実態です。
つまり、現在は、
(2)専門性を捨てて短時間で働く
という状況です。
第三の選択肢として、
という働き方はないのでしょうか?
■親の介護で待ったなし、自ら「短時間で働く」選択も
「平成29年度版 高齢社会白書」(内閣府)によると、2016年10月1日現在、65歳以上の高齢者は3459万人で総人口の27.3%、つまり4人に1人以上。高齢者のいる世帯数は15年現在2372万世帯で全世帯の47.1%、2世帯に1世帯弱ということです。そのうち高齢者単独世帯は18.0%、高齢者夫婦のみは38.9%、子供と同居は39.0%という構成比になっています。
同居している親の介護も大変ですが、別居している親の介護が起きると、生活が一変したという話もよく聞きます。今まで介護について考えたことがない人にとっても、ある日からフルタイムで働けなくなる可能性がおきます。
また、介護以外にも、育児期間は残業が前提のフルタイムで働くことは厳しいものがあります。あるいは、将来のキャリアアップに向けた学び、副業・兼業、独立準備などのために短時間で働きたい人も増えています。
■短時間労働=パートタイム=限られた職種という現実
次に、働く人の労働時間について、「平成26年 就業形態の多様化に関する総合実態調査」(厚生労働省)から見てみましょう。
週5日の1日7時間労働(残業なし)、つまり週あたり35時間未満で働く人を雇用形態別に比較すると、正社員では3.2%。30人に1人しかいません。契約社員で35時間未満の割合は16.7%と、正社員と比較すると増加しますが、これも6人に1人にすぎません。派遣労働者で19.4%、5人に1人と少し増加します。
一方、パートタイムのうち週35時間未満の割合は70.6%。パートタイム以外の雇用形態では、短時間で働く人がまだまだ少数派であることがわかります。逆の言い方をすれば、時間的な制約ができた人が、転職や再就職する場合、パートタイム以外の選択肢がとても狭いということです。
さらに、パートタイムを選択した場合、どのような職種で働く人たちが多いのかを見ると、トップ3は、「サービスの仕事」29.8%、「事務的な仕事」23.1%、「販売の仕事」17.2%となります。専門的・技術的な仕事は10.3%と10人に1人、管理的な仕事は0.6%と150人に1人以下にすぎず、これらの仕事の過半数はパートタイム以外の雇用形態の人たちが担っていることがわかります。これはみなさんの実感とも合っていると思います。
もしも現在、フルタイムでサービス・事務・販売職以外の職種で働いている人が、何らかの制約で短時間労働を選択した場合、雇用形態に加えて、職種も変更しないと仕事が見つけにくくなる可能性が高いようです。時間の制約が生じただけで、せっかく今まで培ってきた専門性を活用できなくなります。
専門性を生かして働いていたのに、時間的制約ができて離職した人が再び働き始めたとき、その専門性と全くかかわりのない仕事をしているケースは、皆さんの周りにもあるのではないでしょうか。
■時間的制約がある人を生かし始めた企業
これまで見てきたように、現時点の日本の働き方は、実質的に、専門性を生かして長時間働くか、専門性を捨てて短時間で働くかの2つの選択肢が主流です。
しかし、冒頭でお伝えした第三の選択肢、「専門性を生かして短時間で働く」という働き方がもしあれば、時間に制約がある人の転職や再就業の可能性はぐっと広がり、働く人にとっても、人手不足に頭を悩ます企業にとっても貴重な能力を活用できることになります。
とはいえ、現状は上記の2つの選択肢が前提となる働き方しか想定していない企業が大多数です。「専門性を生かして短時間で働く」という働き方が広がるためには、企業側がこのような仕事を作り、求人をして、働く人を受け入れるかどうかがカギとなります。
まだ一部の企業ですが、制約条件のある従業員も働きやすい人事制度や仕事を用意し始めています。サイボウズは、勤務時間を3段階×勤務場所を3段階の9パターンに分類し、選択できる制度を運用しています。ヤフーは週休3日に取り組む準備を始めました。スタートアップ企業では、すべての仕事をリモートワーク(テレワーク)でOKとしているところもあります。
私の職場を含め、雇用形態にかかわらずリモートワークの導入をしている企業も出てきています。私自身も母が実家に一人で暮らしています。先日は実家に戻ってリモート勤務をしました。この原稿も自宅で書いており、リモートワークをとても有効に活用しています。
こうした取り組みは、制約などによりこれまでとは違う働き方を希望する従業員の離職を防ぐとともに、これまでは選択肢が限られていた時間的制約のある人材をも引き付けています。つまり、時間の制約があっても専門性を生かし、磨きながら働き続けることを後押ししているのです。
■「ZIP WORK」という働き方
私が働くリクルートグループでは、各社が協力して、短時間で専門性を生かす「ZIP WORK」という働き方ができる仕事を作り始めています。ファイル圧縮形式のZIPになぞらえ、「高度なスキルや専門知識を圧縮し、持ち運んで働く」ことを目指すものです。
●時間が限定されている(1日5時間、週3日など)
●専門的な知識やスキルを生かせる
●高い専門性に見合う報酬を得られ、昇給などのキャリアアップの機会がある
手始めにグループ会社の各職場で、人事、労務、社会保険、契約書審査、広報、渉外、企画、PR、調査・分析、個人情報管理などの分野で、専門性を生かして短時間で働ける仕事を作りました。その結果、現在、さまざまな職種・雇用形態で「ZIP WORKER」が誕生しています。
一口に「短時間」といっても、週3日以下、週4日、16時以前の終業など、勤務日・時間も多様です。また、バックグラウンドも、育児、ダブルワーク、起業準備、趣味など多岐にわたります。こうした動きはリクルートグループに限らず、数十社の企業で始まっています。
(2)専門性を捨てて短時間で働く
に加えて、第三の選択肢
が広がっていくことを期待します。