新卒1分間動画で自己PR、新しい就活 「人間性伝わる」
就職活動は動画で自己PR――。学生側はインターネットサイトに1分間の動画を投稿し、企業が関心を持てば面接へ。エントリーシート(応募用紙)を大量に出し、リクルートスーツで企業を訪問するという、これまでの就活の姿が変わるかもしれない。
就活の新たな手法として注目されているのは、昨年末に開設された動画就活サイト「レクミー」(https://www.recme.jp/)。運営する人材事業会社「リーディングマーク」(東京都渋谷区)によると、企業約100社、学生約1千人が登録する。仕組みはこうだ。
企業側は「一番チャレンジした経験を教えてください」など、テーマを出す。学生側は、スマートフォンやパソコン内蔵のカメラなどでテーマに沿った動画を自分で撮影し、志望企業に送る。企業が会ってみたいとなれば面接に進む。学生側がどの企業にも見られるように自己PR動画を投稿し、企業側が人材を探す「スカウト方式」もある。動画はいずれも約1分だ。
上智大4年の平野絵美さん(21)はリクルートスーツではなく、お気に入りの紫のワンピースを着て「自分撮り」した。PRのポイントは「英語力」。英語劇に取り組んだことをはきはきと伝えながら、英語検定試験「TOEIC」で910点を取った証明書や、留学生と交流する写真を次々に挿入。自分の分身のキャラクターが登場するパラパラ漫画も使った。「型にはまった就活に疑問を感じていた。素のままの自分を企業に知ってもらいたかった」と平野さん。
早稲田大大学院2年の星野佑介さん(24)は1人でカメラに向かったが、言葉に詰まった。友人に出演してもらい、早大応援団が使う掛け合いを入れ、元気のよさをアピール。星野さんは「動画を撮ることで、言いたいことを短い時間でまとめる力がついた」と分析する。平野さんも星野さんも、動画による就活経験が生きたこともあり、レクミー以外で志望企業から内定をもらった。
企業側の受け止めはどうか。IT企業「サイバーエージェント」(渋谷区)では、レクミーの動画で選んだ学生は6次まである面接を4次からスタートさせる。同社は大手就職サイトを利用していない。多数の会社にエントリーシートを出す学生は、中身をコピペ(引き写し)することが多いからだ。新卒採用責任者の鷲田学さん(36)は「入社の意志が強いかどうか、人間性がストレートに伝わる。動画がよかった学生に直接会うとギャップが少ない。結果として効率的だった」と評価する。
ウェブサービス提供会社「ファランクス」(東京都新宿区)は、スカウト方式を利用して見つけた学生に内定を出した。社長室の中山明久さん(33)は「うちを志望していなくても、欲しいと思った人材を見つけて本気でくどく方が、大手就活サイトに頼るより確実性が高い。短くても良い動画を投稿できる子は要領がよく、新しいものに取り組むチャレンジ精神がある」と話す。
リーディングマークの飯田悠司社長(28)は「動画では大学名より、人物本位で判断できる。地方の学生にとっては面接で東京に行く回数を減らせる。学生と企業を結びつける手助けをして、就活の仕組みを変えたい」と力を込める。(平岡妙子)
■1人平均92社応募
2015年春の大学新卒者の就職活動は景気回復を受け、内定率が高くなっている。就職情報大手のマイナビによると、6月末の内定率は62・1%で昨年7月末の61・5%を上回った。
昨年度は優秀な学生の奪い合いで、採用予定数を確保できなかった企業もあった。不景気で新規採用を抑えた時期が続き人手不足感が広がり、内定数を増やす動きがみられる。同社サイトに求人情報を掲載する企業は約1万3500社(5月末現在)で、昨年同期より3千社増えた。
現在は、学生が大手就職サイトからエントリーシートを出す形が主流。気になる会社にチェックを入れるだけで応募できる「一括エントリー」制度もある。同社の調査では、学生1人が応募した会社数は5月末時点で平均92・4社だった。
■就活に詳しい人材コンサルタントの常見陽平氏の話
動画での自己PRはその学生の魅力が直接的に伝わり、画期的だ。ただ、動画を撮って編集できるのは、ITの技能が比較的高い学生に限られる。ハードルを高くして、ふるいにかけているとも受け取れる。
いまの学生はプレゼンテーションは得意な人が多いが、それをコミュニケーション能力と勘違いしている人もいる。質問を重ねるとしどろもどろになることも多い。面接まで進んだときに真価が問われるだろう。
大手就職サイトから多数の企業に応募するのが主流になり、企業側が大学名で選別する動きは、より著しくなっている。インターンシップでの囲い込みも多い。動画による就活は、現在の枠組みの転換につながるかもしれない。